Don't Leave me 第二章・5



「よう……?」
「手近で処理する方法を見付けたのか」
冷たい声でそう言われて、アシェンははっとした。
隠しようがないぐらいに顔が赤くなっていくのが分かる。
ジラルドは知っているのだ。
来なかった間、火照る体をアシェンがどうやって鎮めていたか。
「僕、…………僕っ」
うろたえ、混乱したアシェンは手首を掴むジラルドの指を振りほどこうとした。
だが彼の指がますますきつく肌に食い込み、振りほどくどころか逆にお互いの距離は縮まっている。
にらみ付けるに近い視線に束縛され、身動き出来ない。
硬直したアシェンにジラルドが顔を近付けて来る。
少しだけ顔を傾けたのが見えたと思ったら、もう唇をふさがれていた。
「んっ…………!?」
半開きの唇の隙間から、たやすく舌が侵入してくる。
ぬるぬるとする感触に中を舐められると、背筋がぞくっとした。
逃げようとしても片手は掴まれているし、もう片方の手が後頭部を押さえ付けている。
身動きままならないまま、アシェンは呆然と口腔を犯され続けていた。
見開いた眼に、ジラルドの瞳が間近に映る。
怖くなって思わず眼を閉じると、舌が更に深くに入って来た。
「ん、んん」
頭の芯が痺れてくる。
膝が笑い始め、立っているのが困難になって来た。
それを悟ったように、ジラルドは軽々と少年を抱き上げる。
細く見えるその体のどこから出るのか、という力を発揮した彼は、口付けをしたままアシェンをベッドに下ろした。
「ん、んーっ……! はっ、はぁっ」
ようやく少し唇がずらされたため、アシェンは必死に息を吸う。
だがジラルドは行為を中断したわけではない。
真っ赤に染まった顔からいったん離れた唇は、薄い皮膚に守られた首筋へと滑っていく。
「やだ!」
ちゅ、ちゅっと音を立ててその辺りを吸われると、そのたびにアシェンは大きく体を震わせた。
「ちがっ僕、僕、今日はこんなことしに来たんじゃ……!」
「そうだろうな」
首筋を攻める狭間にジラルドは暗い声で言う。
彼の指が上着をまくり上げ始めたのを感じ、アシェンはますます慌てた。
「だめ、やだ、ジラルドさん待って、……あっ……!」
服の中に入って来た指が、いきなり乳首をつまみ上げる。
痛い寸前の力できゅっとつままれると、我知らず声が上ずった。
ジラルドが唇だけで小さく笑う。
「前よりも感じやすくなっているじゃないか」
いびつな笑みを浮かべた唇も胸元に移動する。
右胸を指先で転がしながら、左胸を飴玉でも口にしたようにしゃぶり始めた。
「あ、ああっ!」
一度に来た快楽に声を殺せない。
ジラルドに圧し掛かられたまま、アシェンは抵抗することも出来ず乳首を愛撫されてあえぐ。
「やめて、だめだよっ、ジラルドさ、ん、あっ…」
直接性器を触られているわけでもないのに、自慰より何倍も刺激が強い。
あえぎながら見下ろせば、胸元にジラルドの整った顔が伏せられている。
唇から這い出た舌と、長い指が自分の乳首をいじっているこの光景が信じられない。
まだ衣服に守られている下半身が反応し出してしまっている。
このままでは確実に服を汚してしまうだろう。
そう思った瞬間、アシェンはさあっと青ざめた。
「だめ、やめてよ、兄さんに、みんなに分かっちゃうよ……!」
前の時は引き裂かれた服の代わりをジラルドが用意してくれた。
だけど、あの時だって後でごまかすのが大変だったのだ。
ただでさえジラルドのところに行っていることは家族にないしょなのである。
実際は兄などの様子を見る限り筒抜けのようなのだが、それでも大っぴらに話せることではない。
無論ここへ来るのはアシェンの勝手だ。
けれど、ジラルドがもしも少しでも自分の存在を好ましく思ってくれるなら……二度と会うことが出来ないような状況を作るのは避けてくれてもいいはずだ。
しかしアシェンの切なる願いは、今日の彼には通じないようだった。
「…………オレは別に、知られてもいいんだ」
熱い愛撫とは裏腹の、冷え切った声でジラルドが言うのが聞こえる。


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