Don't Leave me 第二章・9



「いたっ!」
びっくりして大声を出したアシェンは、また乱暴にジラルドが腰を揺すり始めたために舌を噛みそうになってしまった。
「いた、痛い、やめて放してッ、嫌、ああぁ……!」
今にも放ってしまいそうな快楽が根元でせき止められている。
この状態で感じやすい場所だけを集中的に攻められると、感じる分だけ痛みも増していく。
「やめて、やめてよぉ、お願い、お願いぃぃ」
絡み合うようにして加速していく熱と痛みに、アシェンはぽろぽろと涙を零した。
赤く腫れ上がった性器の先からも同じように雫が零れ、敷布を濡らす。
「……ね、が…………、もぉ……僕、や……死んじゃうよっ……」
かすれた喘ぎを吐きながら、アシェンはぐったりと体から力を抜いた。
するとジラルドは、きつくアシェン自身を握り締めていた指からゆるりと力を抜いていく。
思うが侭になぶったはずの少年を見つめるその瞳には、複雑な感情が揺れていた。
アシェンをいたぶり、苦しめながら、そのことに彼自身も傷付いているように見える。
「……気持ち良くして欲しいか?」
一度動きを止めたジラルドは、平坦な声でささやきかけた。
「オレに、気持ち良くして欲しいか」
どこか悲しげな響きを持つ声音に、細かく体を震わせているアシェンはぴくりと反応した。
相変わらず、今日のジラルドがなんでこんな風な態度を取るのかは分からない。
だがここまでされては、今更淫らな欲望を遂げずにはいられない。
それに本当は自分でも分かっている。
拙い自慰で一時凌ぎの快楽を得ながらも、頭の中でなぞっていたのは妖しくも美しい青年の情熱的な愛撫。
ジラルドに抱かれたい。
いっそ犯して欲しいと、この六日の間ずっと思っていた。
「……ほ、しい………」
潤んだ青い瞳で、アシェンは背後の男を振り返る。
「ジラルドさん、お願い……」
赤く染まった小さな唇から切羽詰った懇願が漏れ出た。
もうどう思われてもいい。
早く、早くと体が泣いている。
「して…………ジラルドさん、してよぉ……」
快楽をせがみながら、そのしぐさには一抹の恥じらいが見え隠れしている。
途方もなく愛らしいしぐさに、ジラルドは小さく喉を鳴らした。
文字通りの人間離れした美貌を備えた彼と比べれば、アシェンはただの子供でしかない。
もちろん可愛いことは可愛いが、非常な美少年というわけではない。
顔立ちの良さというよりは、雰囲気や表情全体にあふれる愛嬌がアシェンの魅力なのである。
だがこうして背後から貫かれ、髪を振り乱し喘ぐ様はなまじ普段がいかにも健康的な少年だからだろうか。
切なげに寄せられた眉根や、しっとりと汗ばんだ肌に漂う未成熟な色香が男を駆り立てる。
「……分かった」
重々しい声で答えた彼の手が、再びアシェンの腰を掴んだ。
先ほどまでのがつがつとした乱暴な動きではない。
一回一回奥まで打ち込み、じっくりと内部を味わうような抜き差しを始める。
「あぁ…」
打って変わった濃厚な愛撫に、アシェンもたちまち甘い声を上げ始めた。
「あん、いい、気持ちいい………ッ、ジラルドぉ……」
自由になった性器の先からとろとろと先走りが滴り落ちる。
夢見心地で喘ぐアシェンの体を、ジラルドはいきなり抱え上げた。
「……あ…………っ」
体が浮き上がったかと思うと、すとんと彼のあぐらをかいた膝の上に落とされる。
「あ、あっ……!」
座位の状態でジラルドをくわえ込まされ、今までにない深さにアシェンは驚いたような声を上げた。
「……気持ち良くしてやる」
耳元に、ジラルドの熱い声が響く。
細い腰を掴んだ指が、見た目からは予想外の力強さで動き始めた。
「ひぁ、あ、ああっ……!」
ジラルドの足の上、アシェンの体が上下に揺さぶられる。
「あん、ああ、いい、すごい、すごいよぉ……!」


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