Don't Leave me 第二章・11



「約束してくれてからだ…」
低くかすれた声で言ったジラルドは、後ろから被さるようにして強引にアシェンの唇を奪った。
ぬめる舌が潜り込み、無理やりアシェンのそれに絡まる。
「ふ…………っ、ん、んんっ…」
なまめかしい音を立てながらの激しい口付けに、言葉は完全にふさがされてしまった。
「ん……っ、んっ、あっ、ふ、はぁ……」
自由なはずの腕にも力が入らない。
頼りなくジラルドの服を掴んだまま、どうしても目の端をちらつく鏡の中の映像を懸命に無視しようと努める。
「……んっ、む……ふあぁ…………」
絡んだ舌がほどけ、引き抜かれた頃にはアシェンの瞳は潤んでいた。
ゆっくりと顔を離したジラルドは、瞳を合わせて優しく微笑んだ後もう一度ちゅっと音を立てて口付けをする。
「いつでもお前が欲しい時に、欲しいだけ気持ちいいことをしてやるから…」
濡れた唇が、鼻先や額にもそっと押し当てられた。
「だから、約束してくれるな……? アシェン。……お前のここに入れていいのはオレだけだと……」
埋められたものがぬるりと蠢く。
「ん……」
かすかに腰を揺らめかせたジラルドの動きに、アシェンは切ない息を吐いた。
「ジラルドさん、僕……?」
彼の言っていることがよく分からない。
そのためにすぐには返答できず、戸惑ったように返したアシェンにジラルドはかすかに瞳を伏せてこう言った。
「いいな……」
そして彼は、体を反転させてベッドに向かった。
「…………んんっ……」
ジラルドの歩みに合わせ、尻に埋まった男根がまた動く。
たちまち息を詰めたアシェンは、ジラルドの真意を理解しないまま再び敷布の上に下ろされた。
四つん這いの姿勢になったその腰を、ベッドのすぐ横に立ったジラルドが抱え直す。
ぬちゃぬちゃと卑猥な音を立てながらの抜き差しがまた始まった。
「んあ……っ、あ、あ……っ!」
羞恥に敏感になった体の奥を、硬い肉棒がえぐる。
「あぁ……! んっ、ああん、そこっ、そこぉ、いいよお……!」
狙いすましてある一点を突き上げられるたび、アシェンの体はびくびくと震えた。
目も眩むような快楽に、理性がどろどろに溶け崩れていく。
「ここが好きだな、アシェン……」
長い指が、上着の中に滑り込んでくる。
硬くとがった乳首をきゅっとつままれ、ひゃっ、とアシェンは上ずった声を上げた。
指の腹で転がされるたび甘いため息が漏れる。
服もとっくにぐしゃぐしゃで、なのにもうそんなことは頭の中はない。
「んぁ、あ、あっ……、ジラルドさっ…、あぁ、もう僕……っ」
全身が熱くて死にそうだ。
息苦しいぐらいの気持ち良さに翻弄され、甘すぎる責め苦から解放されることしか考えられない。
「約束してくれ、アシェン」
乳首、脇腹、性器へと全身をくまなく愛撫しながら、少し前屈みになったジラルドはアシェンの耳元でささやいた。
銀の前髪の下、赤い瞳が燐光を放ち始めている。
「お前を気持ち良くしていいのはオレだけだと…………約束してくれたら、いかせてやる……」
与えられる快楽が強過ぎて、白く混濁した頭の中に深く甘い誘惑が注がれる。
訳が分からず、だけど彼が約束を求めているということだけはどうにか理解出来た。
そしてそれは、アシェンの本当の望みとも一致している。
「……もっ……、自分で、しない……っ」
切れ切れに漏れる息の狭間、アシェンはかろうじて聞き取れるぎりぎりの声でささやいた。
「ジラルドさん、ジラルドさんにしてもらう、して欲しい、ああ、早く、早くぅ……!」
一瞬、ジラルドの動きが止まる。
額にある瞳から漏れる輝きがなくなっていた。


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