Don't Leave me 第二章・13



丹念に丹念に突かれるたび、ジラルドを受け入れた場所がじんじんする。
そのたびに繋がった部分から卑猥な雫が散る音も、アシェンの肌を熱くする。
「ひあ! あっ、あ、んん………好きっ…!」
彼の形に広げられた穴の縁をひくつかせながら、好き、好きと何度も繰り返す。
そのたびきゅうきゅうと引き絞られる内部により、同等の快楽がジラルドにも返っていた。
整った顔立ちが快楽に歪んでいる。
それでもアシェンをもっと気持ち良くしようと、もっとアシェンを味わおうと、規則正しい動きで狭い通路の中を出入りし続けた。
「あんっ……いい、すごいよぉ……」
アシェンも勤勉なその動きに、貫かれる悦びを覚え始めた内壁を絡み付かせて応える。
彼の声は喘ぐと言うよりは、すすり泣くに近いものになり始めていた。
「本当に、好きなんだな……」
素直過ぎる反応を喜ぶように、ジラルドはかすれた声でささやく。
額の瞳の輝きは消えていたが、アシェンを見下ろす赤い瞳には不可思議な光があった。
好きという言葉を発音するたび、魔をも操る力を宿した瞳の奥でその光が頼りなく揺れる。
アシェンに対する彼はいつも、冷静沈着で寡黙な大人の男そのものだ。
あるいは先までのように、珍しい饒舌ぶりを発揮し意地悪をするかのどちらか。
けれど今のジラルドの表情は、まるで独り置き去りにされた子供のそれ。
まだ未発達な体に覆い被さり、ぐちゅぐちゅと音を立て肉棒を出し入れするにはそぐわぬすがりつくような瞳。
だがそんな顔は、尻だけを男に捧げた格好で背後から犯されるアシェンに見えはしない。
「……あっん……好きっ……、本当…………好きぃ…………」
ひくひくと全身を震わせ、アシェンは快楽と胸にうずまく切なさに泣きながらつぶやいた。
快楽に酔い痴れたこの状態でなら何度でも好きと言える。
顔も見えない状態だから余計にごまかすことはたやすい。
だけど面と向かっては、絶対に絶対に言うことは出来ないだろう。
ジラルドはただアシェンを助けてくれただけ。
みんなが誤解しているだけで、彼は本当はとても優しい人なのだ。
その優しさを誤解してはいけない。
「ああ…………、ジラルドさん、もっとぉ……」
舌足らずな声で、わざと甘えるように彼を呼んでみる。
ジラルドはどうやら、アシェンが自分で自分を慰めたことが気に食わないようなのだ。
一度は彼の手を借りると言った癖にそんなことをしたから、かちんと来てしまったのかもしれない。
考えてみればカルアンなどもそうだ。
何かと年上風を吹かせたがる兄は、年の離れた弟を子供扱いしがちである。
しかし素直に頼られれば悪い気分ではないようで、しょうがないなと言いながら面倒を見てくれる。
媚びるとまではいかないが、アシェンは相手のそういう気持ちをある程度読み取ることが出来た。
ならばいっそ、甘えてしまおう。
アシェンだって本当はジラルドにして欲しいのだから。
彼に、彼だけに気持ち良くしてもらいたいのだから。
「もっと……好き、そこ好きッ、もっとしてぇ…………」
はしたなくも腰を揺らめかせ、アシェンは自分を犯す男に快楽をせがむ。
そんなしぐさがどれだけジラルドの心を惑わせるか、全く何一つ気付かないままで。
「……ああ。もっと、もっとしてやる」
興奮を隠せない調子で低くつぶやいたジラルドは、薄い唇をぺろりと舐めた。
細い腰を掴む指先に力がこもる。
小さな尻を強く引き寄せ、彼は更に激しい動きでアシェンの体を突きまくった。
「はん、あぁん、あっ、来るよぉ…………!」
ぎゅっと敷布を握り締め、アシェンはせり上がる悦楽に身を任せる。
白い光が固く閉じた瞼の裏で弾け飛び、めくるめく火花が飛び散った。
「あーっ……!」
甲高い声を上げ、背を反らせた彼は次の瞬間がっくりと敷布の上に崩れ落ちた。
ジラルドも汗に濡れたその背に身を預け、獣のような荒い息を吐いている。
「はぁっ……、あ、あ…………」
硬くなりきっていたアシェンの性器の先から、とめどもなく精液が吐き出される。
「あ、あ、んっ…………、入って来る…………」
一拍置いて注ぎ込まれたジラルドの白濁を身の内に感じ、熱に浮かされたような声でアシェンはつぶやいた。


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