Don't Leave me 第三章・1
窓の外に広がる空の青さが、余計に羞恥を煽る。
「んっ…………、ん、んっ……」
全裸でベッドに寝そべり、両足を開いた少年アシェンの下肢には銀髪の男の顔が埋められていた。
「んぁっ……、あ、あっ…………ジラルドぉ……」
片手で口元を覆い、片手でジラルドの銀の髪を掴んではアシェンは押し殺した甘い声を漏らす。
数日に一度、ジラルドの暮らす小屋を訪れたアシェンはこうして彼に抱いてもらう。
犯される悦びを覚えてしまった淫らな体を、彼に鎮めてもらうために。
無垢な肉体を最初に汚した悪魔の正体に、いまだ気付かないままで。
「あっ! ん、も、だめ、僕っ、僕、またいっちゃう…………!」
性器の先を舌でくじりながら、奥の穴を指でかき回される。
執拗と言っていいほど、今日のジラルドはその愛撫を繰り返していた。
「いっ、ちゃ、だめ、もう、もう僕っ……」
爪先がぎゅっと敷布を握り締める。
どんどん強くなっていく絶頂の予感に、追い詰められていくような気さえした。
怖くなってすがるように彼を見つめても、美しい青年は黙々と己の作業を続けるばかり。
それどころか形良い唇がぴちゃぴちゃと音を立てながら自分の性器を舐めしゃぶる、卑猥な光景を目の当たりにしたことが余計にアシェンを敏感にしてしまった。
「ん、んっ……!」
瞬間きゅっと締まった後ろの穴の反応に、ジラルドは低い笑い声を漏らす。
愛撫はやめないまま、そっと顔を上げた彼の赤い瞳と目が合った。
目元だけで笑んだジラルドは、見せつけるようにゆっくりとアシェンの性器を舐め上げる。
血の気が上がったのが下がったのか、よく分からないがとにかくアシェンは思わず両手で顔を覆った。
「やっ…………ジラルドさんっ、そんな、そんなとこ、あーっ……!」
いきなり先端をきつく吸われると、快楽を制御出来ない。
平たい腹を波打たせて達してしまったアシェンの吐き出す精液を、ジラルドは先までと同じようにきれいに舐め取ってしまう。
「あっ……、あっ…………」
そのことにも感じてしまい、アシェンはいつまでも続くような快楽の余韻にぼうっと浸っていた。
木の板が張られた天井を見上げていた視界の端で銀色のものが動く。
「可愛いな、アシェンは…」
ひとしきり後始末を終えてから、ジラルドが体を上にずらして来た。
はっとしたアシェンの顔を覗き込む彼の表情は、どこかぞくりとするような艶を含んでいる。
冷たく整った顔立ちに加え、元が非常に寡黙な男である。
普段との差異のせいか、そういう顔付きになるとひどくいやらしく見えるから不思議だ。
「いく瞬間の顔が、特に可愛い」
こういう台詞も、普段の彼からは信じられない。
途端にアシェンは真っ赤になり、すねたように顔を横に向ける。
…………けれど本当は、恥ずかしいけれどジラルドのこんな顔もこんな台詞も段々嫌ではなくなり始めていた。
「馬鹿……」
つぶやく声も本心からのものではなく、どこか甘えが混じっている。
それはジラルドにも伝わったようだ。
微笑んだ彼はまた、ゆっくりとアシェンの下肢へと下がっていく。
「…………あ」
小さな声を上げたアシェンの両足を、ジラルドは大きく開いて持ち上げる。
奥で息衝く小さな穴に、彼はいとおしむように口付けた。
とがらせた舌先が、また中に潜って来ようとする。
「んっ、ぁ……ジ、ジラルド、さんっ……」
すぐにも挿入されると思ったのに、ジラルドはまた下肢への愛撫を始めるつもりのようだ。
気持ちいいけれど、じれったい。
「もっ……う、お願い、僕、もう……」
自分からねだるのは恥ずかしいけれど、思わずアシェンは小さな声でせがんだ。
すると顔を上げたジラルドは、くすりと笑ってからこうささやく。
「もう、どうして欲しいんだ…?」
少し意地悪につぶやいてから、舌先できゅっとすぼまった穴を突付く。
「ん、んっ……あっ…………、ジラルド、さんのっ……」
それ以上言うのはやはりためらいが先に立つ。
だがジラルドは刺激を求める穴の縁を、ゆるゆるとなぞるばかり。
舌さえ入れてもらえないことに焦れたアシェンは、切羽詰った声で言った。
「い、意地悪しないで、入れてぇ…………っ……」
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