Don't Leave me 第三章・2



男を欲しがる浅ましい言葉を口にした、その顔は真っ赤で今にも泣き出しそうだ。
けれどジラルドは、愛らしい反応にくすくすと笑うばかりでアシェンの求めにはまだ応えようとしない。
「なら、お前にも少し協力してもらおうか」
思わぬ一言に、アシェンは当惑して彼を見つめる。
するとジラルドは体を起こし、戸惑う少年を簡単に抱き抱えてしまった。
「ジラルドさん……!? あっ……」
一瞬体が宙に浮き、あれよあれよという間に体勢を変えられてしまう。
寝台に寝そべったジラルドの上に四つん這いになったような状態だ。
けれど顔は彼の足へ、尻は彼の顔へと向いている。
「ジ、ジラルド、なにっ……、あ、んんっ!」
恥ずかしい格好に顔を赤らめ、そのまま振り向こうとしたアシェンの尻肉を大きな手が割り開く。
「早く欲しくて、ひくひくしている」
あけすけな感想を述べられ、アシェンはこれ以上ないぐらい真っ赤になった。
「ジラルドさん! やっ、あ、ああっ…………!」
お預け状態だった肉穴に、いきなり一本の指が埋められる。
たちまちきゅうっと吸い付いてくる感触を楽しみながら、ジラルドはアシェンにこう言った。
「お前もオレのものを、悦くしてくれ。上手に出来たら入れてやろう…」
言われて、アシェンは思わず顔の下に来ているジラルドの長い足の間に眼をやった。
裾の長い衣服は幾分ゆったりとした作りだが、確かにそこには不自然なふくらみがある。
一瞬後ろに与えられる快楽を忘れ、アシェンはこくんと喉を鳴らした。
口で、指で、ジラルドは何度もアシェンの体中を愛撫し絶頂に導いてくれた。
元はと言えば人外の存在に与えられた快楽を、彼は発散させる手伝いをしてくれているだけのこと。
内心いつもアシェンは不安だった。
体の芯にくすぶる熱を持て余し、数日と待たずにここに来てしまう。
以前自分で処理をして彼の機嫌を損ねてしまった経緯もあるし、ジラルドも繰り返し「来てくれて嬉しい」と言ってくれる。
だけど自分たちの関係が、ただ会いたくて会いに来ていた純粋なものではなくなってしまったという気持ちは拭いきれない。
……ジラルドへのひそかな想いに、気付いてしまったからなおさら。
己の淫らな欲望を遂げるために、好きな人に迷惑をかけているのだと思うとアシェンの胸はそのたびに締め付けられた。
だからこんな風に、ジラルドから要求されるとむしろありがたいような気がする。
アシェンも一応男なのだから、性器への直接的な刺激の快さは分かる。
彼も自分のようなただの子供の尻を犯すより、こっちの方がいいのではないかと思えた。
「…………うん。やって、みます」
とはいえ、実際にこの行為に及ぶのは初めてだ。
おずおずと手を伸ばしたアシェンは、布越しに伝わる熱さと硬さに一瞬びくっとして手を引っ込めた。
だがやめるわけにもいかず、決意してジラルドの腰帯を解く。
黄土色の衣を覚束ない手付きで剥いでいくと、彼のいきり立った男根がすぐに眼に飛び込んできた。
「あっ……」
初めて間近く見るものに、背筋がぶるっと震える。
細く見えて案外逞しい肉体を持つジラルドは、その一物も見事なものだ。
長さも太さもアシェンのものとは比べ物にならない。
直に触るのには勇気が要ったが、ジラルドも愛撫の手を休め自分のすることを見守っているようだった。
決意したアシェンは、両手でそろそろと赤黒い肉塊を握り込む。
途端に更に体積と硬度を増したものにおののきながら、ゆっくりと、さすってみた。
「……く」
背後でジラルドの短いうめきが聞こえる。
痛かったのかと思い慌てて振り向いてみると、彼は赤い瞳で優しく微笑んでくれた。
「いいから…………アシェンの思うように、続けてみてくれ」
思うようにと言われても、脳裏に浮かぶのはここ最近彼より受けた愛撫のこと。
骨張った長い指に握り込まれ、形良い唇に包み込まれ、舌先で先端の穴をくじられてよがり狂ったこと。
「……んっ…………」
思い出すと、今更のように変な気分になって来た。
悩ましく眉を寄せたまま、アシェンは握ったものを再び上下に扱き出す。
「……うまいな、アシェン……」


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