Don't Leave me 第三章・4



「あ、あっ、ジラルドさんっ、ジラルドさんもっ…………!」
うわごとのように彼の名を呼びながら、せめてと握った肉棒に指を這わせる。
口に入れるときっと噛んでしまうだろうから、横から舌を出してぬめる側面を舐めてみた。
「んっ、んっ…………、ふッ……」
下肢から這い登ってくる快感に震えながら奉仕をすれば、手の中の物は恐ろしいほどに硬くたくましくなっていく。
互いに互いを愛撫するたび、粘着質なぴちゃぴちゃという音が上がった。
けれどやがて、アシェンの方が与えられる快楽に屈してしまう。
「あ…………ッ、ぅん、ん、恥ずかしいよぉ…………」
先走りを垂らす男のものを握り締めたまま、舌で犯される快楽にアシェンはびくびくと体を痙攣させた。
「ああ…………、ジラルドさん、だめ、僕がッ、あっあぁっ」
かたくなに首を振り、ジラルドに快楽を返そうとしても震える指先には力が入らない。
緩く掴んだ肉棒にすがり付いた格好のまま、腰から下を更に引き寄せられる。
限界まで突き入れられた舌が内壁を舐めるたび、過敏になった内部は更なる刺激を求めてわなないた。
「あふ、うんッ…………、ジラルドお………、も、許しっ……、も、もう、だめぇ……」
恥ずかしくてたまらないのに気持ち良くて、でもこれじゃもう満足出来ない。
彼が欲しい。
手に余るほどの太さで脈打つ、この卑猥な肉棒に刺し貫かれて犯されたい。
理性で抑え切れないほどに育った卑しい欲求を、想い人に感じてしまっているということ自体もアシェンの健全な精神には多大な負荷になっているのだ。
幾つもの意味において、もうこれ以上耐えられない。
涙を浮かべて振り向いたアシェンを、魔性の赤い瞳でジラルドは見やる。
「…………はぁ……」
唾液の糸を引きながら、散々アシェンの中をなぶった舌が抜かれた。
安堵も束の間、たちまち感じてしまった物足りなさを恥ずかしく思う暇もない。
無言のままアシェンを抱え直したジラルドは、まだ呼吸も満足に整えていない体にいきなり侵入してきた。
「ヒイっ………………!」
待ち侘びていたはずの熱を前触れなしに与えられ、悲鳴を上げてしまう。
舌とは比べ物にならない質量に入り口を押し広げられた瞬間は、確かに痛みを感じた。
だがすぐに、その何十倍もの歓喜がアシェンの心と体を支配していく。
「……悦いんだな、アシェン…………」
何度もゆっくりと、引き抜いては根元まで埋め込むを繰り返しながらジラルドは低い声で言った。
自分の形を覚え込ませるような緩慢な動作に、四つん這いの状態のアシェンはふるふると背を震わせる。
「ん、んっ…………、おっきい……」
心なしか、ジラルドのものはいつもよりも一層太く長く感じられた。
「お前が上手にしてくれたからな……」
初めてのアシェンの口淫の感触を思い出したか、静かなジラルドの表情に一瞬ぞくりとするような欲望が浮かぶ。
興奮が動作に出たのだろう。
いきなり気持ちのいいところをぐりっと擦られて、アシェンはあごを仰け反らせた。
「あうっ……、う、うれし……です、喜んで、くれて……」
ジラルドに喜んでもらえて嬉しい。
素直なその言葉を聞くと、その身を貫く男の切れ長の瞳はそっと伏せられた。
欲望に取って代わった重苦しい何かが、ジラルドの表情を悲しげに曇らせる。
後悔を振り切るように、彼は濃い銀の髪に包まれた頭を一つ振った。
「…………では、ここからは、お前を悦ばせてやろう」
誓いを立てるようにつぶやいて、ジラルドは今度は激しく腰を動かし始める。
先程までとは打って変わった乱暴なしぐさに、アシェンは敷布を必死に握り締めなければならなくなった。
「ふぁっ……! あ、あん、すごいッ……!」
蕩けたようなよがり声がひっきりなしにその唇から漏れる。
窓から射し込む太陽の日が茜色を帯び始めるまで、ジラルドは飽きる様子なくまるで奉仕をするようにアシェンを犯し続けていた。



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