Don't Leave me 第三章・8



仰向けになった瞬間、魔物の残りの部分が一気に中に押し入ってきた。
「アーッ…………!」
強烈な快感に、スライムに満たされた体を逸らしアシェンは悲鳴を上げる。
その性器から零れ出した精液は、一部内股に残っていた魔物が先の穴をくじるようにしながら飲み干してしまった。
おかげでズボンはそれ程汚れずに済んだが、見えない場所での陵辱は続いている。
「あ、ぁっ…………、う……」
知らずに見れば熱にうなされているように見えるかもしれない。
頬を紅潮させたアシェンは、体内で気まぐれに動く魔物の動きに切なく全身を震わせていた。
恥辱と快楽に潤んだその目を、バベルとエルゼが覗き込む。
赤い瞳を細め、意地の悪い笑みを作ったバベルはくつくつと低く喉を鳴らしながらこう言った。
「なるほど、普段はただのガキだがこうやっているとそれなりのものだ。子供っぽい見た目の割に随分な淫乱だな」
嘲るように揶揄されて、アシェンは更に頭に血が昇るのを感じた。
違うと言えない。
化け物に犯され、心と体にひどい傷を負ったはずなのに、スライムなんかに中を舐め回されて感じてしまっているなんて。
しかもこのバベルが、自分を最初に犯した魔物をけしかけた男かもしれないのに。
あの時のことを思い出した瞬間、直腸を満たしたぬるつきがぜん動を始めた。
「あああああっ!」
ぶるぶると中で震える動きは、今まで味わったことのないものだ。
脳天までを一気に貫いた快楽に、アシェンは周りの草を千切れるほどに掴んだ。
それでも、快感は止まらない。
「……はっ、は……、あぅ…………」
犬のように小さな舌を出し、よがるアシェンからバベルはゆっくりと踵を返した。
「辛いなら、さっさとジラルドに頼むことだ。うまくあいつを引き込めたなら、そうだな、お前とお前の家族ぐらいなら多少は優遇してやってもいいぞ」
相変わらずバベルに詳しい状況を説明するつもりはなさそうだ。
しかし家族、優遇といった不安を煽る言葉はアシェンの胸に残った。
一体彼は、ジラルドに言うことを聞かせて何をするつもりなのだろう。
「……ふっ……、ん、ぅ……」
けれど今は、それを聞き返す余裕などない。
一時はおとなしくなったスライムたちだが、身の内に潜んだそれは一向に出て行く気配がない。
内部で息衝くものが断続的に身をくねらせるたび、アシェンは闇の中で四肢を震わせた。
「ねえバベル様ぁ、僕も何だか欲しくなっちゃった……」
甘えるようなエルゼの声が遠ざかっていく。
独り置き去りにされたアシェンの、見開いた瞳から涙が零れ落ちた。



***

布団の中で縮こまった腕が、足が、ぶるぶると震える。
熱っぽい息を吐きながら、自室の寝台の上でアシェンは内側でくすぶる淫らな熱にひたすら耐えていた。
ジラルドの家からの帰り際、バベルに襲われてから三日。
街に戻るだけで大変な苦労をした上に、戻ったところに父と兄のカルアンが怒りの形相で待ち構えていた。
夜遊びを叱り付けようとした二人だが、家族の顔を見たことによりアシェンの緊張の糸は途切れた。
崩れるように気を失い、気付けばこうして布団の中。
以来こうやって、今も体の中に入ったままの魔物の陵辱に耐えている。
全ては分からないまでも、息子が尋常ならざる状態であることは当然すぐに両親も悟ったのだろう。
顔色を変えた母は、アシェンの様子がおかしいと分かった時からすぐに医者を呼ぼうとした。
それを聞いたアシェンは、お願いだからやめてくれと必死になって言ったのだ。
両親はますます心配そうにしたが、アシェンとしてはこれは病気などではないことは分かっている。
医者など呼んでも無駄だ。
浅ましい姿を家族にさらすだけで、何の解決にもなりはしないだろう。
だが、このままでは事態が好転しないことは分かり切っている。
思い付く方法は一つしかない。


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