Don't Leave me 第三章・11
驚くアシェンだが、次の瞬間全く身動きが取れなくなったことに更に驚いてしまった。
出来るのはただ、ジラルドの凍るように美しい顔を見つめるだけ。
あの日バベルにされたのと同じように、赤々と輝く瞳に囚われ体だけでなく心まで思い通りにならない。
「言うんだ」
今やアシェンの支配者と化した男の声が、耳元で響いた。
「お前にこの嫌な匂いを付けたのは、誰だ?」
バベルに名前を聞かれた時と同じく、アシェンの唇は意志とは無関係に動いた。
「バベル…」
ジラルドの顔が強張った。
同時にアシェンを支配していた力が消える。
自分を取り戻したアシェンがはっとして見つめたジラルドは、アシェンの肩に手を置き唇を噛み締めていた。
魔性の赤い瞳の輝きはすでにない。
だが先程までとは逆に、その目の光はひどく弱まっているように思えた。
「ジラル……、んっ!」
心配になって彼の名を呼んだ瞬間、体の奥でスライムが跳ねる。
ぶるっと震えたアシェンを、今度はジラルドがはっとしたように見た。
「…………くそ」
苛立ったように舌打ちした彼は、アシェンをいきなり敷布の上に押し倒した。
「あ、ジラルドさ、やっ…………、あ、んんんッ!」
慌てたアシェンだが、激しい動きに中のスライムも驚いたのだろうか。
全身をぶるぶるとぜん動させたからたまらない。
「ん、ンッ…………」
知られたくなくて声を殺そうとするが、もう遅い。
またぎりぎりと奥歯を噛み締めたジラルドは、強引にアシェンの寝巻きをたくし上げた。
反応を示している体がばれないように、頭からすっぽり被るゆったりとした寝巻きを着ていたのが逆にまずかった。
膝下辺りまである裾から胸元までめくり上げられれば、アシェンの体は簡単に露になってしまう。
「い、嫌、見ちゃっ……、ひっ……!」
不定形の魔物は、そのほとんどが体の中。
だが性器に絡んだその一部は、外に露出されている。
そそり立ち、震える可愛らしいそれを卑猥に包み込んだスライムの存在にジラルドはすぐに気付いた。
おまけにスライムは、まるでジラルドを挑発するようにアシェンの尿道の中にずぶずぶと入り込んで来る。
中に入っている本体の方も、狭い通路を押し広げるようにしながら出入りを始めた。
「やぁ、広がっちゃうッ…………、んぁ、嫌っ、やっ…………!」
ジラルドが見ている前で、こんな魔物に犯されている。
恥ずかしくて、悔しくて、アシェンはぽろぽろと涙を流した。
彼は幼い外見ながらも意外に芯がしっかりした、気丈な性質である。
だがジラルドへの想いを自覚したあの時から、その心には誰にも言えない悩みを抱え込んでしまっていた。
更にはバベルに出会って以降は、一切の状況が掴めないまま独り耐えるだけの状況。
いかにしっかりしているとは言っても、まだまだ子供の年齢なのだ。
感情が一度堰を切ってしまうと、涙があふれて止まらない。
「うっ……、うぇっ………………、見ないで、見ないでっ…………」
泣きじゃくるアシェンを見下ろし、しばし呆然としていたジラルドは凶悪な形相になった。
「……バベルッ……!」
憎々しげにあの魔奏者の名前をつぶやくと、彼は三つの赤い瞳に再び力を込める。
「アシェンから離れろ!」
力を持つ叫びが、咆哮のように端正な唇から漏れた。
魔を操るその瞳から赤い光が放たれ、アシェンをなぶるスライムを射抜く。
魔物は恐れをなしたように戦慄したが、だが、もう一人の魔奏者からの厳命がある。
その子供を犯し、辱め、よがり狂わせろ。
「あぅ、ん、んんッ!」
二つの命令の狭間で身悶えるスライムの動きは、それを中に抱えたアシェンにも伝わってしまった。
「い、嫌ァ、動いてるッ…………」
上ずった声を上げるアシェンの足を、ジラルドは険しい顔のまま掴んだ。
胸を突くような格好にその足を折り曲げられ、魔物を含んだ箇所を覗き込まれてかあっと頭に血が昇る。
「やっ、こんな格好やっ……! ん、んっ!?」
恥ずかしさに暴れる足を押さえつけ、ジラルドはスライムを含んだ穴に長い指を当てた。
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