Don't Leave me 第三章・12
「ああーっ…!」
ぐちゅりと卑猥な音を立て、ぶよぶよとした魔物の体をかき分けるようにして彼の指が二本も入って来る。
「かき出してやる…」
低く吐いたジラルドの指が内壁を掻いた。
濡れた内部に緩く爪を立てられると背筋がぞくぞくする。
しかしアシェンの中を満たしたスライムは、彼の指を避けるようにますます奥へと潜り込んでしまった。
「ひっ……!」
ずるん、といやらしい音を立てながら、中へ中へと入り込んで来るおぞましい感覚にアシェンは全身総毛立つ。
性器をなぶっていたものまでジラルドの指をすり抜け、全てが尻の中へと収まってしまった。
そしてその状態で、スライムは体をくねらせる。
「はぁっ、あっ、ああっ!」
今が昼間で、ここが自分の部屋で、おまけに目の前には愛しいジラルドがいる。
それが分かっていても殺せない、甲高い声が室内に響いた。
「んぅ、ん、ん、んっ……!」
両手で自分の口を塞ぎ、懸命に喘ぎを押さえ込んでも発散されない性感はどんどん高まっていく。
広げられた足と、丸見えの尻と性器を震わせながら涙を流すアシェンを見てジラルドはうなった。
「くそっ……、出て来い!」
銀の前髪では隠し切れない赤い光が、アシェンの体を通して内部のスライムに注がれる。
雷にでも打たれたように、不定形の魔物は一瞬身を強張らせた。
だがまだ、バベルの命令も継続状態である。
二人の支配者の正反対の指令に、この魔物なりに苦しんでもいるのだろう。
どっち付かずな不安定な動きは、しかし全てアシェンに反映されてしまう。
濡れた表面で執拗に内部を舐めしゃぶられたかと思えば、出ていくような動きを見せる。
しかしまたすぐに元の位置まで戻って来て、今度は奥を突くような動作を始める。
そのたびアシェンはくぐもった声を上げ、屹立した性器の先から蜜を溢れさせた。
「んぁ………………、あぁ……、もう、やめ……やめて……」
口を覆う手にさえ力が入らなくなり、喘ぐ声もかすれて消えていく。
いっそこのままおかしくなってしまいたいぐらいなのに、哀しいことにジラルドに見られているという意識だけが消えない。
ジラルドも、このままでは埒が明かないと悟ったのだろう。
「…………アシェン、少しだけ我慢しろ……」
何かを決意した顔で言うと、ジラルドはアシェンの中に差し込んでいた指を引き抜いた。
粘液の糸を引き、離れた指に切ない息を吐いたその足も元通りに横たえてしまう。
「……ジラルドさん……?」
不安そうに名前を呼び、見上げて来た目をジラルドは大きな手でそっと覆った。
「目を閉じていてくれ…」
命令するというよりは、お願いするというような言い方だった。
元より彼に視界を覆われた状態なのだが、アシェンは素直に目を閉じる。
完全に彼の視界が利かなくなったことを確認し、ジラルドはおもむろに片手で前髪をかき分けた。
露になった第三の目が、かっと見開かれる。
元の倍ほどの大きさに広がったその目から、燃えるような光が放たれアシェンの体を貫いた。
「汚らしい下等魔物風情が、魔奏者ジラルドに逆らえると思うな!」
何か大きな力が通り抜けていく、得も言われぬ感触。
聞いたことのない大きな、圧倒的な威圧を伴ったジラルドの叫び。
そして体内で泡立ちふくらむ何か。
三つの衝撃がアシェンの心と体を大きく揺さぶる。
「あ、ああぁーっ……!?」
びくんと跳ね上がった体を、ジラルドは両目を塞いだ手で押さえ付けた。
荒い息を吐くその口の中で、ちらちらと尖った歯の先が踊っている。
牙という方が相応しいそれを見ての台詞ではないが、状況が掴めない恐怖にアシェンは悲鳴を上げた。
「何っ、怖いっ……、あ、ああっ!」
びちゅっ、というような水っぽい破裂音がアシェンの中でした。
体内でうねり続けていたスライムはいつしか動きを止めている。
「…………あ……、ぁ…………?」
戸惑ったような声を上げたアシェンの中に、ジラルドは無言でまた指を差し入れてきた。
「んんっ……!」
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