Don't Leave me 第三章・15



そこまで言われてようやくアシェンは、ジラルドが誤解していることに気付いた。
なぜこんなに彼が怒っているのかよく分からないが、そんな誤解をされていること自体にアシェンはぶるっと体を震わせる。
こんなに恥ずかしくていやらしいことをされても、こんなに感じてしまうのはジラルドだからなのに。
「され、されてなっ…………僕……っ、あの、さっきの、ぶよぶよしたのだけっ……、ああっ!」
「嘘を吐くな……!」
けなげなアシェンの訴えを、ジラルドは即座に否定する。
強靭な力を秘めた腰が強く突き出されるたび、二人が繋がった部分から卑猥な水音が上がった。
「こんなに濡らして、これは本当にスライムの体液だけか……? いやらしい、悪い子だ、アシェン……!」
怒りに任せて動いた彼の腕が、再びアシェンをうつ伏せにする。
「ひぅっ…………!」
尻たぶを掴まれ、割り開かれて、根元までずっぷりと太いものを埋め込まれた。
それでも飽き足らないかのように、ジラルドはアシェンの背の上に覆い被さってくる。
端正な唇が大きく開いた。
「…! いッ…………!」
突然の鋭い痛みに、アシェンは強く上から押さえ付けられたまま顔を歪める。
なめらかな白い肩口に浅く食い込んだ牙から血が滴った。
「…………甘い、な……お前は…………血でさえ、甘い……」
うっとりとジラルドがつぶやくのが聞こえる。
噛み傷の跡から流れ出した血を、彼はいとおしむように舐め取った。
「な、やっ……、ジラルドぉ…………何……やめて、やだ……」
獲物の血をすする獣そのもののしぐさ。
先程見た燃えるような赤い瞳がまぶたの裏に蘇る。
恐ろしさに震えるアシェンの声も、もう届いていないのだろうか。
ぴちゃぴちゃと音を立てて傷口を舐めながら、ジラルドはまた動き始めた。
「ふぁっ……! あ、あ、やぁっ……!」
混乱の極みにある心と体を、逞しい男根が更にかき乱していく。
「いや、いやっ……、こんなのいや…………!」
助けを求めるように伸ばした腕ごと体を引き上げられ、あぐらをかいたジラルドの膝に落とされた。
「んんっ……!」
自重により深くに入り込んだ彼のものに、今度は下からずんずんと突き上げられる。
「あぁぁ! ああ、あん、やっ、み、見えちゃうっ…………!」
両足を抱え上げられた状態で下から突かれると、彼を受け入れた部分は丸見えだ。
より羞恥を煽る体位に悲鳴を上げても、ジラルドに行為をやめる気配はない。
抱え込んだ少年の背に、彼はその身を貫きながら何度も浅く歯を立てた。
「い、いたっ……、んん、あっ、もぉ、僕っ……」
快楽の中に思い出したように襲ってくる鋭い痛みに、だがアシェンの体は熱く燃えた。
嫌なのに、こんなひどいことされたくないのに、一方的な愛撫に追い詰められていく。
この感覚には覚えがあった。
一番最初。
ジラルドの家からの帰り道、いまだ正体不明の魔物に犯されたあの時の…
「………………嫌っ……やだ、やめて、やめて…………!」
背筋を駆け抜けた戦慄に、アシェンは大きな叫び声を上げた。
それこそ聞き付ける者がいたら飛び上がりそうな大声に、さすがのジラルドもはっとしたように動きを止める。
「……アシェン……?」
腕の中、ぐったりと弛緩したアシェンの顔をジラルドはこわごわと覗き込んだ。
潤んだ青い目と、幾分理性を取り戻した赤い瞳が合う。
ぽろぽろと涙を流しながら、アシェンは彼にこう訴えた。
「バベル、って人は……」
バベルの名前にぴくりと反応するジラルドだが、続くアシェンの言葉はこうだった。
「僕っ…………最初に、……したっ、あの、魔物っ…、かもっ………」
先程より大きく、ジラルドが身じろぐ。
しかしアシェンにとって、彼の驚きは単純に自分の告げた事実に対する驚きだと思えた。
だからそのまま、泣きながら彼に訴え続けた。
「この間、あ、会った時は……、スライム、入れられ、だけ………………けどっ、僕、さいしょ、したの、あの人、かも……」


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