Don't Leave me 第四章・2



彼が危ない目に遭うかもしれないということはもちろん、ジラルドだって魔奏者なのだ。
今はまだ、行商人たちの間だけで広がった噂話に過ぎない。
けれどいずれ噂は更に広がり、人々は元々警戒していた人外の青年へとその目を向けるだろう。
「どうした? そんな顔をして」
我知らず悲愴な顔をしてしまっていたのだろう。
先にアシェンを中に入れた後、小屋の中に入ってきたジラルドはじっとアシェンを見つめてそう言った。
「……あ、ううん…………あの………ひ、久しぶりに会ったから、緊張して……」
どこに行っていたのか。
何をしていたのか。
聞きたくて、でも聞く資格は自分にないことは分かっている。
かといってうまく知らないふりも出来ない、自分の幼さが嫌になってアシェンは顔をうつむけてしまった。
そこへついとジラルドが指を伸ばして来て、はっとした瞬間あごを取られて上を向かされる。
「オレに、会いたくて来てくれたんだよな」
奇妙に優しい表情を浮かべた、恐ろしいほどの美貌が自分を見つめている。
至近距離で合わされた瞳にある、明らかな欲情の火を見てアシェンは固まってしまった。
「あ、僕…………」
「オレもお前に会いたかった。会いたくてたまらなかった…………」
答えを待ちきれない様子で、ジラルドは熱っぽい吐息に乗せてそうささやいた。
そのまま深く、口付けられる。
「ん、ん……」
彼と会えない夜を重ねる内に、蓄積していた微熱が一気に高まっていく。
唐突な口付けにも従順に口を開けてしまう、自分の浅ましさを恥ずかしく思ったのも一瞬のこと。
「ふ、ん…………んッ…………む……」
口腔を巧みな舌で犯される快楽に、早くも膝が笑い始めていた。
「んん、ん……は…………ッ」
ジラルドにもたれるようにして必死に体を支えているアシェンの胸元に、彼はひどく優しい手つきで触れてくる。
手の平全体でわずかなふくらみを撫でられると、すぐにつんと布の下で張り詰めたとがりを見付けられてしまった。
「ふ……あ、ああ……」
敏感な反応が恥ずかしくて、そのせいで余計に感じてしまう。
あっという間に固くしこり立ってしまった乳首を、ジラルドは指の腹でこするようにして愛撫を始めた。
「あ、あああっ……!」
思わず首を振った瞬間、解放された唇から大声が飛び出してしまう。
静かな小屋の中に響き渡った大声に、アシェンは真っ赤になった。
それを見て、ジラルドはそれは愛しそうに笑ってこう言った。
「感じやすいな、アシェンは。可愛い…………」
以前から時々ジラルドは、アシェンに対してこういうことを言う。
けれど今日の言い方は、アシェンを今まで以上に落ち着かない気分にさせるものだった。
多分これは、僕の願望も入っているんだろうとはアシェンも思っている。
けれど、それにしてもジラルドの言い方は甘すぎた。
まるで長いこと会えなかった最愛の恋人との逢瀬の最中のような、そんな言い方。
そんな風に言われたら、余計に顔が赤くなってしまうではないか。
「か、可愛い、なんて…………」
あまりにも恥ずかしくて、つい反論してしまった。
けれど今日のジラルドは、それさえも愛しむようになおも言う。
「真っ赤だな…………きっと、ここも赤い」
忍び笑いと同時に体が浮く。
びっくりした次の瞬間にはもうジラルドの寝台の上だった。
家主の長期不在のために、冷たく冷えていた布団の感触が火照った肌に心地よい。
だけどのし掛かってきたジラルドの手が上着をめくった途端、全身を包む熱さは一層強くなる。
「ああ、やはりもう赤いな………肌が白いから、よく目立つ」
薄い胸板の左右、ぷくりとふくれた乳首を見ての言葉にアシェンはたまらず顔を横に背けた。
「や、恥ずかし…………あっ、ひゃあ!」
ぴちゃっという濡れた音とともに、ぬめる感触が乳首に触れる。
見なくても分かる。
胸元に顔を伏せてきたジラルドの舌が、赤く色づいた乳首を舐めているのだ。


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