Don't Leave me 第四章・5
「ふあ…………、ジラルドさんがっ………、僕、中ぁ、いっぱいっ……」
「ああ……そうだ。今お前の中は、オレでいっぱいだ……」
かすかに乱れた声でささやきを返されると、ぶるっと体が震えてしまう。
あまりの快感に目尻に涙がにじんできた。
しかもすぐにジラルドは動き出し、アシェンに更なる歓喜の涙を流させる。
「あっ、あっ、あっ……! あぁん……ッ、あっ、擦れてるゥ、ごりごりって言ってるよぉ……!」
ジラルドの臆面のない甘い言葉に触発されたせいだろうか。
それとも長い間、独り不安な気持ちを抱えていたせいか。
久しぶりに味わう貫かれる快感を、アシェンは素直すぎるほど素直に口から出した。
「可愛いアシェン…………気持ちいいのか……?……」
うっとりとした声音でつぶやいたジラルドは、少年の胸元に手を差し入れ乳首を探った。
なめらかな先を指先で揉まれ、アシェンのあえぎは一層激しくなる。
「ああ、ンッ…………あん、そんなに、しちゃ、あっ、ああっ……!」
「本当に可愛いな……好きだろう、ここをこういう風にされるの…………」
くりくりと円を描くように撫でられるのが気持ち良すぎる。
そうしながらもジラルドは、丹念な動きでアシェンの敏感な部分を繰り返し突いてきた。
「はひ、は…………っ、あっ、当たってる、当たってるよお…………気持ちい、気持ちいいよお………!」
ぽろぽろと涙を流しながらあえぐアシェンの声はひどくあけすけだ。
与えられる快感に溺れているのを隠そうともしない様は、普段の素朴な少年の像とはかけ離れたものだった。
だって今日のジラルドが与えてくれるのは、ちっとも乱暴なところのない砂糖菓子で出来ているような愛撫ばかりなのだ。
しばしば交合の際に覗かせる意地の悪さやからかいを、本日の彼はあまり見せない。
まるで何かの罪滅ぼしでもしているかのように、ひたすらに甘くアシェンの快楽に奉仕してくれる。
感じるな、乱れるなという方が無理な話だった。
「可愛いアシェン………」
今まで以上によがり狂うアシェンを背中越しに抱き、ジラルドは目を閉じた。
「お前だけは、オレが…………オレガ、守ル…………」
その口元に覗いた牙を、蕩けるような快感の中にいるアシェンが見ることは最後までなかった。
少し足下をふらつかせながら、アシェンは丘を下っていく。
結局三度ジラルドに抱かれ、三度目には完全に意識を失ってしまった。
さすがにやり過ぎたと思ったのだろう。
送ろうかとジラルドは申し出てくれたが、アシェンは大丈夫だと断った。
十日間の間、どこで何をしていたかは聞けなかった。
ただ悪い噂が広まっている可能性がある町に、下手に彼を近付けるわけにはいかないと思った。
大好きな彼のことを、少しでもいいから守りたい。
そう思いアシェンは、せめてと見送りに出て来てくれたジラルドに心配をかけないように元気よく手を振って去っていった。
「けなげだな」
アシェンの姿が見えなくなった途端、丘の上に二つの人影が生じる。
魔奏者バベル、その使い魔的存在であるエルゼ。
二人の姿を認めた途端、ジラルドの表情はアシェンを抱いていた時とは別人のように険しくなった。
とはいえ彼の敵意むき出しの視線にも、二人が動じる様子は特にない。
アシェンの去っていった方を赤い目で見つめながら、バベルは端正な顔立ちに不思議そうな表情を浮かべてつぶやいた。
「しかし、そんなにアレがいいか。確かに感度は良かったし、素直によがる様は可愛いと言えば可愛かったが」
覗き見を堂々と宣言する言葉に、ジラルドは彼と同族たる証である同じ赤の瞳を剥く。
エルゼもエルゼで、ジラルドとは違う理由でバベルに食ってかかった。
「バベル様! 何をおっしゃるんです、あんなただの人間のガキに!」
「確かにただの人間のガキだが、魔奏者ジラルドにあそこまで尽くさせるようなガキだぞ。お前だってそろそろこいつの実力は分かってきているはずだろう?」
思わせぶりな視線を投げかけられ、エルゼは一瞬黙った。
その紫の瞳は、まるで主人に倣ったかのように奇妙な感情をたたえてジラルドへと向けられる。
「……ふうん、まあ、ね。こんなど田舎に引っ込んで、平和主義者を気取るぐらいだ。ただの腑抜けだとしか思っていなかったけど、確かに、強いことは認めますよ」
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