付ける薬もないぐらい・8



初めて見るクルーガーの、男の色香が含まれた艶めいた表情。
その表情でまっすぐに見つめられて、ルーンは思わずどきっとしてしまった。
同時に、射精される衝撃に一時的に治まっていた絶頂感が蘇ってくる。
「あ、ぁ、あっ……!」
天井を向いてとがった乳首の先を揺らし、ルーンの体が波打った。
師匠の視線によって緩やかに頂点を極めた彼は、力が抜けてぐったりとベッドに横たわる。
「……あっ、ん…………」
まだ深く飲み込んだままのクルーガーのものが、粘液の糸を引きながら引き抜かれていく。
幾分萎えたものがずるずると抜かれていく感触に、ルーンはふるりと身を震わせた。
クルーガーが完全に抜け出ても、広げられていた裂け目は閉じきらない。
半分口を開いた淫らな縦穴から、白濁と愛液の入り混じったものがとろとろと零れ出した。
「ふぇ…………」
中に出されてしまったことを再度自覚し、ルーンは半泣きになる。
だが妙に冷静な目になったクルーガーが見つめる中、彼の体はまた熱くなり始めていた。
「……? っな、に…………あつ…………おなかが…………」
まだ広げられた足の奥、精液を吐き出されたばかりのところがじんじんする。
「早いな。もうか」
部屋に入ってきた時に抱えていた書物、今はルーンの机の上に無造作に投げ出されたものにちらりと視線をやってからクルーガーが言った。
何か知っている風な師匠の言葉に、思わずルーンは取りすがる。
「ししょっ……オレ、なにっ、オレやだっ、怖い師匠…………!」
起き上がったルーンは、大きな胸をクルーガーに押し付けながらその体に抱きついた。
けれどクルーガーは、意地の悪い目で出来の悪い弟子を見やってつぶやく。
「なんだ、ひどい師匠に今更すがっても遅いぞ」
どうやら先程の「師匠の馬鹿」発言を根に持っているらしい。
冷たいクルーガーの態度に、ルーンは大きな瞳をますます潤ませた。
「だっ……て、ししょ、オレ、師匠の赤ちゃんなんて……!」
「なんだ、オレの子孕むなんてごめんだとでも言うのか?」
「そうじゃなっ……、師匠……!」
よほど今までルーンについて溜め込んでいたことがあるようだ。
窮地においての突き放すような彼の言葉に、ルーンはおろおろするしかない。
だがそうしている間にも、下腹の熱は高まっていく。
その辺りを指で触ると、かすかにふくらんでいる気がした。
ぎょっとして触り直すと、やはり確かにふくらんでいる。
しかもそのふくらみは、刻一刻と大きくなって来ている。
「師匠、オレ、オレのおなかが大きくなって来てます……!」
恐慌状態に陥りながらの報告に、クルーガーはにやっと笑った。
「そうだろう。オレの子種をたっぷりくれてやったからな」
思わせぶりな言葉にルーンの目の前が真っ暗になる。
「……うそ、そんな、だって、さっきしたばっかり……あっ…………!」
腹の奥で、何かが蠢いた。
気のせいじゃない。
確かにこの身の奥に、何かがいる。
気付けばクルーガーを受け入れた後から半開きだった割れ目が、広がってきつつあるようだ。
まるで内側から、押し広げられているように。
「師匠……」
どうしようもなく、ルーンはクルーガーにすがり付く。
「師匠、師匠、ごめんなさい、もうっ、もう師匠に迷惑かけないから……!」
妊娠したとしても、いくらなんでも早すぎる。
さっき中に出されたばかりなのにもう受胎したと言うのか。
その上これではまるで、出産が近いようではないか。
心も体も全く準備など出来ていないのに、あまりにも展開が急すぎる。
「師匠…………!」
許しを乞うように、ルーンはますます強くクルーガーにしがみ付いた。
「師匠、お願いっ、ど、どうにかしてっ……! オレだめです、赤ちゃんなんか産めない……!」
だが頼みの綱のクルーガーは、知らん顔をしてこんなことを言った。
「お前はいつもそう言って来たじゃないか。今度こそちゃんとする、オレに迷惑をかけないと。それが女の体になったって、一体どういうことだ。泣きたいのはこっちの方だぞ」
クルーガーの言うことは一々もっともである。
反論出来ないルーンに、彼はとどめを刺すように言った。
「お前みたいな馬鹿は、一度相当痛い目を見ないと分からないだろう。オレは手を貸してやらん。…………産むんだ」


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