付ける薬もないぐらい・10



「その後自分で種付けをし、自分の子入りの卵を生ませる。つまり今お前の腹の中には、あいつらの卵の元が入っているのさ。出産にかかる栄養分と、後出産後の餌をまかなうためにそういうことをするらしい」
ふくらんだ腹部を指して言われ、遅ればせながらルーンもおぞましい事態を理解していく。
「オ、オレっ……ここ、あっあの魔物の、卵……?……、あっ」
おっかなびっくり腹へと視線を落とした途端、ルーンの中でまた何かがもぞっと動いた。
もう誰の目にも分かるぐらい、今までぺったりと平たかった腹はふくらんでいる。
怖気が立つべき場面であるはずなのに、ルーンはかすかに甘い息を吐いてしまった。
師匠の精子を中で受け止め、絶頂を迎えたはずなのにまだ体が熱い。
思えば件の魔物に襲われて以来、原因不明の微熱はゆるゆるとこの体に留まったままだ。
「卵を取り出すには、腹を裂かないといけない」
微熱を冷ますようなクルーガーの一言に、ルーンはたちまちびくっとした。
その師は彼の腹部へと手を伸ばし、ふくらみを確かめるように乾いた手の平で撫でる。
「し、師匠……」
腹を裂く、などといった恐ろしい言葉を聞いたばかりだ。
恐ろしさに身が震える一方で、人肌の温もりにルーンの体は勝手に反応し出してしまう。
そうっと下腹に目をやると、そこにはいまだ精液を蓄え頭をもたげた状態の男性器があった。
男と女、二度絶頂があると言われたことをぼんやり思い出す。
さっきクルーガーに男根を挿入されて果てたのは、どうやら女の分だったようだ。
「ししょ…………、さ、触らない、で……」
あまりその辺りを触られると、何だかまた変な気分になってしまう。
どちらかというとそちらの方の恐れと恥ずかしさが強く、ルーンはおずおずと師匠の手を止めようとした。
だがクルーガーは、ルーンの心中などお見通しらしい。
「あ、んっ……!」
卵にふくらんだ腹をさすっていた指先が、いきなりルーンの男性器を掴み取る。
そのまま上下に扱かれると、思わず声が出てしまった。
「ししょっ、やっ、あっ…………!」
与えられる愛撫に驚き、突き放そうとしたルーンの胸に大きな手が伸びる。
「やっ、あっ、やぁんッ」
豊かにふくらんだ胸を掴まれ、揉みしだかれながら男性器を刺激されるとたまらない。
ぎゅっとクルーガーの腕を掴んだまま、快感に身悶えるルーンに師はすました顔で説明を続けた。
「だがもっと簡単な方法がある。オスの排出した精子を受けると、卵は自動的に体外に排出される。ここで肝心なのが、この時受ける精子は別に元の化け物じゃなくてもいいってことだな」
「ふぁ、あっ……」
クルーガーの右手はルーンの性器の先の穴をくじり、左手は胸元で硬くなった乳首を転がす。
ぴくんぴくんと身を震わせるルーンの足の狭間、濡れた裂け目は愛撫に呼応するように広がりつつあった。
腹部の奥で何かが蠢く感触も、次第に強くなりつつある。
はっきりと意識されるようになった身の内の塊が、外に向かって移動していく。
「あ、あ、赤ちゃん、卵、出ちゃうッ…………」
また恐ろしさの方が強くなって、ルーンは無意識に下腹と太腿に力を込めた。
内側から押し開かれようとしていた通路が、それにより幾分閉じ合わされる。
けれどクルーガーは、ルーンの男性器をいじっていた指先を排出を促がすようにその女性器へとやった。
「あ、やっ……、だめっ、広げちゃっ…………!」
くちゃっ、という淫らな音を立て、充血しふくらんでいた割れ目が開かれる。
恥ずかしくて、何より化け物の卵を産まされようとしていることが怖くて、ルーンはますます体に力を入れた。
「こら、だめだ。出さないと一生、精子を欲しがる淫乱状態のままだぞ」
咎めるようにクルーガーは言うが、ルーンは完全に怯えた顔で首を振るばかり。
「そ、そんなのッ、だって、オレの中に、あの魔物の卵っ……! 産んだらオレも師匠も危ないよ……!」
産卵を怖がる彼に、クルーガーは辛抱強く言い聞かせる。
「いいか、ルーン。元の化け物のものじゃない精子を受けると、卵は実際には孵らない状態で生み落とされる。要するに今お前の腹の中には、オレの精子を受けて排出待ち状態になっただけの卵が入っているんだ。当然、化け物は産まれて来ない」


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