付ける薬もないぐらい・15



「や……、見ないで、ししょ……、あんっ……!」
卵が出て来るたび、とろとろと愛液を吹きながら広がる裂け目を見られるのが恥ずかしい。
嫌がって座り直そうとしたルーンの腰を、気だるげな顔をしながらクルーガーは捕まえて固定してしまった。
「だめだ。ここまで苦労したんだぞ、ちゃんと出し切ったか確認しないとな」
そう言うと、彼はにやりと人の悪い笑みを見せた。
「……しかし、すごい眺めだ。こっちの穴からも、ほら、オレが出したのが漏れて来ているぞ…」
犯されたばかりの穴を覗き込まれてそんなことを言われ、ルーンは羞恥にぶるっと身を震わせた。
「ま、またそんなこと、馬鹿ッ……、あ、やっ、指入れちゃ……!」
「手伝ってやろうとしているんだ、大人しくしろ」
ぬけぬけとつぶやいたクルーガーは、太い指をルーンの赤らんだ割れ目に差し込み中に残っている卵をかき出していく。
そのたびにルーンは感じてしまい、結局全ての卵を出し切るまでに何度も軽い絶頂を迎えさせられてしまった。



***

ぐちゃぐちゃになった敷布を洗い桶に突っ込んで戻って来たクルーガーは、ルーンの部屋に入るなりこう言った。
「後はしばらく待てば、体は元に戻るだろう。ま、とりあえず、今夜はこのまま寝るんだな」
「はい、師匠……」
クルーガーが出て行っている間に替えの敷布を自分で敷き、その上で布団を被っているルーンは彼の言葉に恥ずかしそうにうなずいた。
「…………ごめんなさい、ししょ、オレ、最後まで、迷惑……」
体内に埋め込まれた卵を全部出した後、体力を使い切ったルーンは消耗し切って動けなくなってしまった。
そのルーンの体を拭き、寝巻きを着せ付け、汚れた敷布を引っぺがしてくれたのは同じく疲れ切っているはずのクルーガーである。
生み落とされた卵だって、空の桶に移し念のため全部割ってから捨てて来てくれたのだ。
「お前の手間がかかるのなんざ、いつものことだろう。今更謝っても遅いんだよ」
冷たく言い捨てられ、ルーンはしゅんと肩を落す。
「……本当に、ごめんなさい…………」
しょんぼりとしながら、彼は戸口のところに黙って立っているクルーガーをあまり見ないで続けた。
「ししょ、あのね、オレね、知ってるんです…………師匠は、オレの父さんと母さんを助けられなくて、責任、感じてるんだって……」
はやり病でルーンの両親は死んだ。
他の大半の村人たちはどうにか一命は取り留めたのに、ルーンの両親だけは二人揃って不出来な息子を残して死んでしまったのだ。
だからクルーガーは、ルーンに対して義務感を感じているのだろう。
もしくは自尊心を傷付けられたと感じているのかもしれない。
腕利きの薬師として、一番近い村のみならず時にははるか遠方から彼を頼り人がやって来るほどなのだ。
あなたの手をわずらわせることはない、あの子の面倒は孤児院で見てくれますよと多くの大人たちが言ったことをルーンは知っている。
「だからオレ…………」
うなだれた亜麻色の髪に暖かな感触が触れる。
いつしか側に近付いて来ていたクルーガーの手が、ルーンの小さな頭に乗せられていた。
「まあお前も、女になるわ犯されるわ妊娠するわ卵産むわで大変だったよな」
ため息混じりにつぶやかれた言葉は労わりを帯び、その手と同じく暖かかった。
優しい言葉におずおずと顔を上げたルーンだが、大きな瞳にはあまり元気がない。
同情的な台詞を受けたことにより、むしろクルーガーにすまないと思う気持ちが強くなってしまったらしい。
「……本当に、ごめんなさい。あのね、師匠。オレね、ちょっとだけは薬も作れるようになったし、家事もちょっとだけ出来るようになったから、……一人でも、何とか……」
大きなため息がクルーガーの唇から吐き出される。
彼はやけになったように、ルーンの柔らかな髪をぐしゃぐしゃとかき乱しながらこう言った。
「あのなぁ、ルーン。いきなりお前みたいなガキの育て親になるなんざ、オレにとっちゃ子供を産むのと同じぐらい勇気が要ることだったんだぜ」


←14へ   16へ→
←topへ