要姫・5
唾液を絡ませ、裏筋を丁寧になぞられると背筋の震えが止まらない。
高まっていく体の中で、疑問も大きくふくれ上がっていくばかり。
なぜ、どうして。
「あ、ああ……っ…………! だめッ、アレクシ様そこはだめッ……!」
男性器への愛撫を必死に耐えていたナイアの唇から再び悲鳴が上がった。
アレクシの指が、男性器の下でひくつき始めていた女性器の方に触れて来たのだ。
「いや、だめですアレクシ様お願い…………! だめっ、私、私は巫女ではなくなってしまう……!」
「…………よろしいではないですか」
巫女姫の切羽詰った叫びに応じ、騎士はゆらりと顔を上げる。
目を潰される以前にだって、いいやこれ以降だってアレクシ以上に美しい青年を見ることはないだろう。
生涯口にすることはないと分かっていて、だからこそ時に御し難いほどに胸の奥で育っていた彼への想い。
想像していた以上に美しいアレクシの再生した顔を見ると、胸は自然に熱くなった。
だがその一方で、胸の中の別の部分がすうと冷えていく。
違う。
こんなことを望んでいたのではない。
巫女とその守護騎士として出会ったが、ナイアに自分が崇められるべき存在という気持ちはないに等しい。
そのためアレクシと出会ってからずっと、互いに敬語での会話を続けてきた。
ぎこちなく、けれど限りない優しさと気遣いに満ちた関係。
…………要姫などといった麗しい呼称が、自分に相応しくないことなどよく分かっている。
だからこそアレクシとは、この清い関係を維持する以上のことを望まなかった……それなのに。
そのアレクシの指が、足を開かれるに合わせかすかに口を開けたナイアの割れ目を撫でている。
「あなたの力はランクーガを守る力…………この国を、あの愚かな王を守るためだけの」
「あぁッ!?」
躊躇のない指先が、いきなりつぷりと紅色の裂け目に潜り込む。
侵入した指がある一定の深さまで入った時、痛みにナイアは悲鳴を上げた。
「い、いた、痛いっ…………だめ、だめですアレクシ様それ以上はだめ…………!」
幾ばくかは濡れていたとはいえ、あまりにも急すぎる行為。
男を知らない無垢な肉は、武骨な指に痛みを訴える。
しかしアレクシの方は、ナイアのこの反応こそを確かめたかったようだった。
「良かった…………ナイア様は、王に汚されてなどいなかったのですね……」
安堵の息とともに吐き出された言葉に、ナイアは表情を強張らせた。
「あなたは要の巫女、無論いかな愚王と言えどあなたが処女でなければならないと知ってはおりましょうが…………王宮中の女性に手を付けたあの浅ましい男が、ナイア様のような美しい方を前に欲望を抑えていられるのか、はなはだ心もとなく思っておりました」
そういった噂はずっと、ランクーガ王宮内でひそかに流れていた。
赤ん坊の頃から王宮で育った両性体は、日を追うごとに輝くばかりの美しさを増していく。
要の巫女、神聖にして忌まわしき触れてはならない存在であるとは皆知ってはいる。
だがそうと分かっていても、いやだからこそ、ナイアは男たちの肉欲を駆り立ててしまうのだ。
まして日頃から女漁りに忙しいランクーガ王なら、なおさら。
目先の欲に目がくらみ、ナイアの肉体を汚したのではないか。
その手の話はナイアが要の神殿に収められるまで絶えることがなかった。
「ですがこれで安心しました。これで私が…………あなたの、初めての男になれる」
湿った指先で再びナイアの肉の割れ目に触れながら、アレクシはうっとりとした声で言った。
その言葉にナイアは慄然とし、クラウディオに封じられた四肢を必死にばたつかせる。
「私が処女を失ったら、ランクーガは……!」
「それこそが私と、クラウディオ殿の目的です」
冷気と熱気を同時に感じさせるアレクシの声。
息を飲み、ナイアが思わず彼を見つめると美貌の騎士は低い声でこうつぶやいた。
「要の姫の目を潰し、忠義を尽くしてきた部下の顔を焼いて全てを奪った男の国など……滅びてしまえばいい」
「ア、アレクシ様……」
真っ青になったナイアに、アレクシはこれは変わらぬ形良い唇に奇妙に優しい笑みを浮かべた。
「そしてナイア様。処女を失い、巫女でなくなったあなたは私の妻となるのです」
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