要姫・7
だが助けを乞うたところで、一体誰にその声が届くと言うのか。
哀れな巫女の叫びに応えるのは、理術師の冷ややかな笑い声だけ。
「そのように嫌わずともよろしいでしょう。アレクシ殿はただあなたを想い、あなたが欲しくて、私の助力を求められたのですから」
小馬鹿にしたように肩をすくめ、クラウディオはうそぶいた。
「大丈夫、痛いのは最初だけですよ。彼はランクーガ一の美男であり、女性の扱いにも慣れていらっしゃる。まして相手は長く想い続けていた愛しい要の姫。全ての力を使って、あなたを悦楽の虜にして下さるでしょう」
それに、と彼はにやりと瞳を細めて薄笑う。
「それにナイア様。あなたもそのように、はしたなく濡らしているではないですか。犯して欲しくて仕方がないのでしょう?」
そう言うと、クラウディオはわざとらしく視線をナイアの裸身に添って這わせた。
アレクシに攻められ、とろとろに蕩けた秘部を目で犯される恥辱にナイアは顔から火が出そうだ。
しかしそうしている内にも、息を荒げたアレクシがぐっと身を乗り出してくる。
濡れた男根が濡れた裂け目に押し当てられる、その卑猥な感触にナイアは息を呑んだ。
「だめッ、やめてぇ…………!」
泣き叫ぶナイアをなだめるようにアレクシは華奢な体を抱き締める。
鎧越しの抱擁なのに、その腕の温かさはナイアの肌に染みた。
「ナイア様……愚かな私の行為をお許し下さい。ですがこれ以上あなたを前にして、私は欲望を抑え切れない」
整った顔立ちに間近く見つめられ、真摯にささやかれると鼓動が一気に早くなった。
アレクシはナイアの髪をそれをいとおしそうに撫でてから、その唇をそっと己のそれでふさぐ。
「んっ……」
ひどいことをされていると分かっている。
けれど抱き締める腕からも合わされた唇からも、伝わってくるのは狂気にも似た純粋な想い。
嬉しいと、そう思ってしまう自分が確実に自分の中にいる。
だがそうやって、要の巫女としてあるまじき考えをしてしまう自分を責め立てる自分もいるのだ。
「……うっ…………」
混乱したナイアの瞳から、何が理由なのか自身にも分からぬ涙があふれる。
外界と隔てられ、ナイア自身もまた努めて余計なことを考えまいとして過ごして来た。
ランクーガのため。
自分を捨てた両親と、あのけだもののような王のために国を守る力を維持し続けて来た。
なのに要の巫女としての単調で平和な日々は、あまりにも簡単に瓦解した。
残されたのはただの世間知らずで無知で無力な、男でも女でもない醜い生き物が一人。
突然降りかかってきた幾つもの難問に対し、どう対応するべきなのか分からない。
けれどいかにナイアが葛藤しようが、すでにこの先の運命は哀れな巫女姫の手から離れていた。
「ナイア様……泣かないで下さい」
切なそうにつぶやいたアレクシは、優しく唇をナイアの目元に当てた。
そこから流れ出る涙を舐め取ってやりながら、彼はナイアの下肢へと手をやる。
くちゅりと音を立て、十二分に潤った割れ目を広げられた。
アレクシのものの先が、ナイアの未通の縦穴に押し当てられる。
「出来るだけ、あなたがつらくないようにしたい…………体の力を抜いて、どうか私を受け入れて下さい……」
愛しい男の懇願するような声が耳たぶをくすぐった。
それと同時に、強い痛みがナイアを襲う。
「ああッ………!」
アレクシの肩の上、持ち上げられていたナイアの足の爪先が反り返った。
「いたッ…………、いや、いやあ、アレクシ様だめです……!」
全身が強張り、瞳からは涙があふれる。
けれどアレクシも我慢の限界だったのだろう。
強い腕で力いっぱいナイアを抱き締め、嫌がるその体を押さえつけて挿入を進めていく。
「ヒアッ……! い、痛いぃっ……!」
指とは比べ物にならない質量が、強烈な異物感を伴って押し入ってくる。
入り口を広げられる痛みも強かったが、それより大きいのはある一定の深さから先に進まれようとする時に生じた痛みだった。
処女膜が破られようとしていることを悟り、ナイアはぷるぷると四肢を震わせる。
「アレクシ、様………、私、私、だめです…………お願い……お願い、アレクシ様……」
濡れた青い瞳の訴えに、アレクシはだが静かに首を振った。
「申し訳ない……ですがこれで、あなたは私のものだ…………!」
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