要姫・12


「……おやおや。濡らしてもいない指が、こんなに入ってしまいましたよ?」
たやすく第二関節まで埋まった指で尻の穴をこね回しながら、クラウディオは大袈裟にため息をついてみせた。
「これは驚いた。要の姫、あなたはどうやらこちらは処女ではないらしい……いや」
わざとらしく間合いを置いて、彼は視線を下げる。
強張ったアレクシに今にも突き入れられそうになっているナイアの、女の部分はだらだらと涎を零していた。
「たったこれだけで、こんなに濡らしてしまうとは。……巫女とは名ばかりの、尻をえぐられるのが大好きな淫乱のようですね」
瞳を細め、嘲るように言われてもナイアは何も言い返せない。
馬鹿にしたように言いながらも後ろへの悪戯をやめない彼の指に、あえぎを堪えるので背一杯なのだ。
「……ん、ん…………!」
ぶるぶると震えながら、ナイアは唇を噛んでいる。
しかし、声だけを殺してもしょせんは無駄な足掻きだった。
アレクシを飲み込む寸前の裂け目は、鮮やかな紅色に染まりあふれるほどに愛液を零している。
男性器の方もぴんと緊張し、腹につきそうなぐらいに反り返っていた。
「ナ、ナイア様……」
明らかに、後ろでの悦びを知っている反応。
女の部分を犯された時とは全く違う反応に、アレクシはかすれた声で巫女姫を呼ぶ。
「まさか……あなたは、本当に…………」
ある真実を呆然と口にしようとした彼の声に気付き、ナイアは悲鳴のように叫んだ。
「み、見ないで…………!」
クラウディオの指を受け入れ、ひくつき始めた穴をさらしたまま巫女姫は泣き叫ぶ。
「見ないで、見ないでっ! ……見ないで、お願いします……!」
恥ずかしさに全身が燃える。
処女を奪われ、精液を注がれることよりももっとナイアが恐れていたこと。
それが今にも現実のものとなろうとしている恐怖に、ただただ懇願することしか出来ない。
「あなたには……あなたには、見られたくないんです、お願い、あっ…………!」
尻にもう一本、指が潜り込む。
濡らされてもいない指を二本も挿入されれば、普通は苦痛とおぞましい異物感しか感じないだろう。
なのにナイアの後ろの穴は、入ってきた指を易々と飲み込む。
きゅうっと節くれた指に吸い付いて、その感触を味わおうとさえしているようだった。
「おやおや。見られたくない割には、ずいぶん気持ちが良さそうではないですか」
意地悪くつぶやくクラウディオの言う通りだ。
白いナイアの尻は薄赤く染まり、汗にしっとりと潤んでいる。
全体的に痩せているナイアだが、尻から太腿にかけての線は少年よりは少女に近い。
薄く脂肪の乗った、柔らかな尻肉をクラウディオの指が押し広げる。
「ふふ、こんなにぱっくりと口を開けて…………女性の部分より、こちらの方が大きいものを求めているようですが?」
「だっだめッ、だめっやめてぇ…………!」
血の気が引いたナイアの耳に、もっと血の気が下がる一言が聞こえた。
「………………王、ですか」
地の底から聞こえるようなアレクシの声。
「王ですか。お答え下さい、ナイア様。あなたの体をこのようにしたのは……ランクーガ王なのですか」
「ア、アレクシ…………様……」
羞恥心も凍り付くような声に、ナイアは彼の名を呼び返す以上のことが出来ない。
するとアレクシは、無言のまま今度はクラウディオを見上げた。
「手を、お放し下さい。……ナイア様は私のもの。そういうお約束だったはずです」
丁寧ではあるが慇懃無礼な口調と、刃のような鋭い瞳。
ある意味敵国の理術師に向けるに相応しい目で、彼はクラウディオを見てそう言った。
「これは失礼」
一瞬瞳を細めはしたものの、クラウディオはあっさりとナイアの中から指を抜いた。
けれど抜かれるその感触にさえ、ナイアはびくんと身を震わせる。
過敏なその反応を、冷たく光るアレクシの目は見逃さなかった。
「……ひっ!?」
名残惜しげに薄く開いていた後ろの穴に、再び何かが入って来る。
それがアレクシの指だと知って、ナイアは顔色を変えた。
「いっ、いやっ……、あ……っ」
容赦のない力でねじ込まれた指が、根元まで収められた。


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