要姫・13
何度も何度も、そこに繰り返された陵辱。
暗がりの中、狂ったように哄笑するランクーガ王の顔が脳裏をちらついた。
要の姫となった時に忘れたはずだった記憶。
それらを無理やり掘り起こされる恐怖に、ナイアは悲鳴を上げる。
「や、やめて……ヒィッ……!」
けれどアレクシは、埋められた指を蠢かせ始めた。
「お答え下さい、ナイア様………」
低い低い声とは裏腹に、その指先は極めて的確だ。
ナイアが欲しいところを、感じるところだけを敏感に探り取って突いて来る。
そんな風にされては感じずにいられるはずがない。
まだ女性器に押し付けられたアレクシの、男根を濡らして愛液が滴り落ちるのが自分でも分かった。
「ん、ふっ、ふあッ、や、やめ、だめえ…………!」
もう逃れることは出来ない。
分かっているけど、ナイアは必死に抗おうとした。
「しない…………でッ、違う、私……、やめて、もう……!」
半狂乱になって萎えた体を震わせるナイアの頭上に影が差す。
ゆっくりと腰を屈めたクラウディオが、その額に手をかざしていた。
はっとそちらを振り仰いだナイアに、彼はにまりと微笑んで言った。
「往生際が悪いですよ、巫女姫。今更隠し通せることではないぐらい、誰の目にも明らかでしょうに」
「…………やめて…………!」
顔を強張らせるナイアになおも優雅に笑いながら、クラウディオは続けた。
「ですがアレクシ殿は、あなたの口から真実をお聞きしたいようだ。私も興味がありますので、ここは素直にしゃべって頂きましょう」
かざされた手の平に浮かぶ光の文字。
世の理を自在に書き換える秘術の発現を、ナイアは絶望の瞳で見つめることしか出来なかった。
「清廉潔白、生涯を通じて肉欲など知らぬはずの巫女姫がどんな風に調教されたのかをね…」
「いッいやっ…、ああああーっっ!」
大陸最大の理術師の技が、巫女姫の額から入り込み脳を、心を直撃する。
二度と開かぬように封じられていた記憶の扉がこじ開けられるどころか、木っ端微塵に粉砕された。
「ナイア様……?……」
長く尾を引く悲鳴を上げたナイアは、しばらく頭を垂れて動かない。
そっとその名を呼んだアレクシに、巫女姫はぴくりと背を震わせた。
「……わた、し…………」
この人にだけは知られたくない。
そう思っていた秘密を守る心の扉は、たった今粉砕されてしまった。
澄んだ瞳からは涙が。
そして破壊された扉の中身は、言葉となってナイアの唇からあふれ始めた。
「……わっ……私……、私っ、ずっと、小さな頃、からっ……、王宮で……、育って……」
両性体と分かってすぐにナイアを売り飛ばした両親。
王宮に預けられたナイアは名前を授けられ、要の巫女の候補者としてそれなりに大切に育てられて来た。
次第に巫女の力を現し始めたナイアだが、それに伴い秀でて来たのは美しさ。
美女に目がない上に、普通の女に飽いていたランクーガ王の目に留まってしまったのも仕方がない。
お前は私が引き取り、育ててやったのだ。
王宮に売られた巫女姫は、そう言われれば従うしかなかった。
「けれど……、私…………要の、巫女っ…………処女を……、失う、わけには……だから…………」
けだもののようなランクーガ王にも、多少の理性は働いたのだろう。
処女を失ってしまえば、ナイアは要姫ではなくなってしまう。
「だからっ……、王は、私の……、お尻ィ……何度も、何度も、何度もぉ…………!」
こんなところで感じるのかと、彼はナイアの尻を穿ちながら嘲った。
両性体などとおぞましい。
我がランクーガはお前などの力を借りずとも繁栄出来るのだ。
だが、老人たちがぎゃあぎゃあとうるさいからな。
いずれ要姫となるために、せいぜい巫女の力は伸ばしてもらおうではないか。
しかしそれまでの間は、お前は受けていた恩を返さねばならない。
「お、王だけじゃ、なくてぇ…………! 大臣もぉ、将軍もぉ、よその国の……、王様もぉ…………! みんな……、みんなッ、私の、お尻に、入れたの…………ッ」
尻の穴の快楽をすっかり覚えたナイアは、しばしば王以外の男たちの相手をさせられた。
ある時は褒章として、ある時は珍しい手土産として。
両性体のこの身を好奇の目で見つめられ、名高い要の姫がとの嘲笑を浴びながら、尻を犯されてよがり狂った。
そんな悪夢のような何年かを過ごした後、散々おもちゃにされたナイアは要の神殿に収められた。
←12へ 14へ→
←topへ