要姫・16


「ふあ、あっ……! あん、あっ、ああっ、やっ…………!」
上がる声は明らかに嬌声。
乱暴な行為にも従順な締め付けを返す、その体を犯しながらアレクシは蘇った顔を歪ませて叫ぶ。
「私から全てを奪ったあの男は、あなたの体さえすでに奪っていたのかと思うと……! 私の胸は張り裂けそうだ…………!」
「あ……、ああッ!」
腰を離れた両手が別のところに触れてきた。
小ぶりの乳房と男性器を捕らえられ、それぞれの先を擦られて否応なしに快楽が高まる。
「はぁ、あんッ…………、アレクシさま…………ッ」
かすれた声を上げる細いあごを掴み、彼は強引にその唇を奪った。
舌を絡められ、激しく口付けられる。
「……ん、ふ、……はっ…………」
喘ぐ息すら逃さぬとばかりのきつい口付けを受けながら、苦しい姿勢で何度も貫かれた。
「あ、あ、……あーっ………………!」
甘い責め苦に耐えかねて、ナイアはついに絶頂を迎えた。
一呼吸遅れ、アレクシもその尻に熱い精液を注ぎ込む。
「…………あ、あ……あつぅ…………」
まだ唇を合わせたまま、ナイアはぶるぶると震えながら独りごちた。
両の性器からとめどなく蜜があふれ、後ろの穴からは注ぎきれない白濁が零れ落ちる。
「ナイア様…………」
極めたばかりで放心状態のナイアの中に、アレクシはまだ自身を突き入れたまま。
赤く染まった愛らしい顔を眺め、暗い光を宿した瞳で言う。
「王があなたを、百度抱いたと言うのなら…………なら私は、千度あなたを抱きましょう……」
そう言うと、彼はまたナイアの腰を掴んだ。
「あう……、うっ」
後ろに入っていたものが引き抜かれる。
そして今度は、処女を失ったばかりの割れ目に男は侵入してきた。
「うあ…………っ、ああ、い、痛い…………っ……!」
散々調教された尻の方だと、入れられた瞬間ナイアの意識は蕩けてしまう。
だが女性器の方はつい先ほど開通させられたばかり。
男を覚えたばかりのそこは、急な挿入にまた痛みを訴えた。
しかしアレクシは強引にナイアの中に突き入れて、尻にしたように性急な抜き差しを始める。
「王が千度なら万度…………、前も、後ろも…………ッ! ……虜にしてみせる、私から離れられない体にして差し上げる…………!」
痛みゆえに覚醒していたナイアの耳に、彼の悲鳴のような声が響き渡った。
アレクシの目に浮かんだ暗い光は先ほど確認したばかり。
彼の行為も、言葉も、クラウディオの放った理術の影響だとは分かっている。
でも、先ほどのナイアの告白と同じなのだ。
クラウディオは無から有を生み出したわけではない。
「ああ……ッ、あ、やああ……!」
愛液をとめどなく滴らせながら、犯されるナイアの口からはいつしか倒錯的なあえぎの声が漏れ始めていた。
ナイアの体のことなど考えていないような、乱暴なアレクシの動き。
ずんと深く突かれるたびに、彼の怒りが伝わって来る。
そのたびナイアは胸の奥底で、罪深い喜びに震えてしまうのだ。
ランクーガ王に、他の男たちに繰り返し陵辱されてきた汚れた巫女。
それを知ってなお、アレクシは自分を求めてくれているのだと…
「当代の要の姫は、思ったよりも随分素直な方だ」
笑いを含んだ声が頭上から降って来た。
はっと顔を上げれば、薄い笑みを浮かべたクラウディオと視線が合う。
「よろしかったですね。愛しい騎士とあなたは実は両思いだった…………実に美しい物語だ。感動いたしましたよ」
優しい声音とは裏腹な酷薄な瞳の光。
熱くなったナイアの肌を冷ますような視線を、彼はアレクシへと意味ありげに動かす。
「ランクーガ陥落の挿話としては相応しい。そうでしょう? アレクシ殿」
ランクーガ陥落。
甘い恋愛物語の余韻など吹き飛ばしてしまうような一言に、ナイアは硬直した。
だがアレクシは、休みなく腰を動かしながら事も無げにこう応じる。
「もちろんです…………思い知らせてやらねばいけない。私たちを傷付け、踏みにじったこの国の連中に……………」
暗い愉悦を秘めた声。
優しい仮面の騎士の口からは、聞くはずがない種類の声。
「アレクシ……、あ、あん…………っ!」
思わず上げた声も、がくがくと揺さぶられる衝撃にかすれてしまう。
床に突っ伏したナイアを背後から突きながら、アレクシはその耳元に甘くささやいた。
「ご心配なく……ナイア様は何もなさらなくていい。私とクラウディオ殿で全て行います。すでに手筈は整えてある」


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