リクト | #1★2004.07/06(火)13:21 |
---|
注・こちらをお読みになる前に、ホウエン編をお読みになった方が楽しめます。 第三十三話 旅立ち前日の戦い 前編 …以前ボクが息子に旅の話をしたけど…途中から忘れてしまった為、子供にちょっと怒られた。 …そういえば、ホウエンだけじゃなくて、カントー・ナナシマにも行ったんだっけ。 …時の立つのは、やはり早いものだな… そうだろう? …フィーユ。 〜10年前〜 ここはミナモシティのホテルの中。 グラン「さーて、出発までもう少しか…」 フィーユ「いよいよ明日かぁ…しばらくホウエンともお別れね」 グロード「ところで、カントーには、オレの実家があるんだ。来るか?」 グロードが聞く。 グラン「場所は?」 グロード「ヤマブキシティって場所だ。凄い都会なんだぜ」 グラン「…マグマ団を倒してからな」 グロード「その方がオレも安心して実家に行けるよ」 グロード「おい、グラン」 夜、フィーユが既に眠っている時にグロードはグランに声をかけた。 グラン「どうした?グロード」 グロード「あの時延期した、ポケモンバトルの続きをやろうぜ」 グラン「いいな。でも、何処でやるんだ?」 グロード「あそこさ」 グロードはカーテンを開け、海岸の砂浜を指差した。 月の光を受け、海は美しく輝いている。 グラン「よし。あそこでやろう」 グロード「そうと決まったら、行こうぜ!」 グロードは立ち上がり、自分のボールを持って部屋を出ようとする。 グラン「フィーユも連れて行くか?」 グロード「いや、寝かしといてやろうぜ。気持ち良さそうに寝てるんだしさ」 グラン「ま、それもそうか」 グランはそう言うと、寝ているフィーユの耳元に口を近づけて言う。 グラン「ちょっと、散歩して来るからな」 グロード「じゃ、行くか」 グランとグロードは一緒に部屋を出た。 外に出たグラン達は海岸を目指して歩いていた。 グラン「いよいよ…明日だな」 グロード「そうだな。ホウエンでは色々な事があったよな」 グロードは懐かしそうに言った。 そしてグロードが続ける。 グロード「それに、お前とも友達になれたしな」 グラン「ああ。この旅って、やっぱりボク達にとって意味のある物なんだよな」 グロード「お前、彼女だってできたじゃんかよ」 グラン「…まあな」 グロード「そうだ。前から聞こうと思っていたんだけどよ」 グラン「何だ?」 グロード「フィーユの事さ。あいつ…」 フィーユ「何?私がどうかした?」 グロード「フィーユ!?あれ…寝てたんじゃないのか?」 フィーユ「あなた達が部屋から出て行った少し後に目を覚ましたの。それで、付いてきたんだけど…」 グラン「それ、警察で言う尾行だぞ」 フィーユ「ところで、私がどうかしたの?」 グロード「いや、グランに会う前のフィーユって、どんなだったのか気になってさ」 フィーユ「えっと、グランに会う前の私は、男勝りの一匹狼だったわ」 グラン「それがいきなりこうなったのかよ」 フィーユ「恋をすると、女は変わるモノなのよ。分かる?」 フィーユはグランとグロードに聞くが、 グロード「全然分かんねえ」 グラン「ボクもだ」 と彼らは返事を返した。 フィーユ「ところでさ、2人はどこに行くつもりだったの?」 グラン「ああ、海岸でグロードと延期したバトルの続きしようかと思ってさ」 グロード「カントー行く前にやっておきたいからな」 フィーユ「じゃ、私が審判するわ。2人共、それでいい?」 グラン「オッケー。いいぜ」 グロード「分かった。頼むぞ」 海岸の砂浜に付いたグラン達は、早速バトルの準備をした。 フィーユ「前からの続きだから、使用ポケモンは1体ずつ。時間は無制限よ」 グラン「ああ!」 グロード「了解!」 フィーユ「2人共、準備はいい?…じゃ、バトル開始!」 グラン「ハシャーモ!思いっきり戦え!」 グロード「頼むぞ!ラグラージ!」 2人は同時にボールからポケモンを出す。 グロード「先手必勝!ラグラージ!ハイドロポンプだ!」 ラグラージは大きな仕草でハイドロポンプを繰り出す。 グラン「攻撃をかわすんだ!」 バシャーモは攻撃をしっかりとかわした。 グロード「やっぱり、最初から大技だしたのがまずかったか…」 グラン「やみくもに攻撃するだけじゃ、ボクのバシャーモは倒せないぜ!」 グロード「へっ…!勝負はこれからだ!」 再び始まったグランとグロードのポケモンバトル。 果たして、どちらに軍配が上がるのか!? 第三十三話終わり 第三十四話に続く… |
リクト | #2☆2004.02/18(水)23:42 |
---|
第三十四話 旅立ち前日の戦い 後編 グラン「この状態じゃ…いつまで耐え切れるか分からないな」 グランがぼそっと言った。 グロード「よそ見をするな!ラグラージ!マッドショット!」 ラグラージ「ラ―――ジ!!」 ラグラージは砂浜を掘り起こす様にバシャーモに向かって技を放つ。 バシャーモ「バ…バシャッ…」 バシャーモは何とか技を回避する。 グロード「どーした!逃げてるだけじゃ勝負にならないぜ!」 グラン「くっ…(マッドショットを食らうと、素早さが下がってしまう。そうなるとまずいな)」 グロード「こないのならこっちから行くぜ!ラグラージ!」 ラグラージは再びマッドショットの態勢に入った。 グラン「バシャーモ!ジャンプして回避!」 ラグラージ「ラ―――ジ!!」 ラグラージはマッドショットを打ち出す。 バシャーモはグランの指示通りジャンプしてかわした。だが、 グロード「甘いぜ!さあ、ラグラージ!跳んでるバシャーモにハイドロポンプをお見舞いしてやれ!」 グラン「なにぃ!?」 ラグラージはジャンプしているバシャーモにしっかり狙いをつけ、ハイドロポンプを放った。 フィーユ「あ、なるほど。ジャンプしている最中無防備だから、そこを突いたってワケね」 上空を見上げてフィーユが言った。 グロード「さあ、どうする?」 バシャーモ「バ…バシャッ…」 グラン「平気か?バシャーモ」 グランの問いに、バシャーモは頷く。 そしてグランは、バシャーモに何かを囁いた。 グラン「…いいな。タイミングが勝負だ。この技に全てをかける」 バシャーモ「バシャッ!」 バシャーモは先ほどよりも力強く頷いた。 グラン「さあ、続きをしよう!」 グロード「かかって来い!」 あの時グランは、こんな事を囁いていた。 グラン「いいか、バシャーモ。『あの技』はもしもの時の為に使う技なんだ。でも、使う時が来たようだ」 バシャーモ「…」 グラン「限界まで堪えたら、お前が今持っている道具を使ってくれ。それは、父さんから貰った『カムラのみ』だ」 グランはそこで一息置いてから続ける。 グラン「ピンチになったらそれを食べろ。そして、封印してきた『あの技』を使うんだ。…お前なら勝てる!」 グロード「さあ…そろそろ終わりにしてやるか!」 グラン「…(来る!)」 グロード「ラグラージ!トドメの地震攻撃だっ!」 ラグラージ「ラ―――ジ!!」 ラグラージは物凄いバワーで地震を起こす。 フィーユ「す…凄い力…このままいけば、グロート君の勝ちで決まって…」 フィーユがそこまで言いかけた時、グロードが、 グロード「そんなまさか…」 フィーユ「バシャーモが…耐えてる…」 グラン「へへっ…『こらえる』だ。残り体力が1の状態で持ちこたえる事が出来る技さ」 グロード「なるほどな…」 グロードは特に表情を変えずに言った。 フィーユ「という事は…この先予想出来るのは…」 グラン「バシャーモ!『カムラのみ』発動だっ!」 グロード「『カムラのみ』だと!?」 グロードはカムラと聞いて大きな声を出した。 フィーユ「何?カムラって?」 グロード「ピンチになると、素早さが上がるモノだ…」 グラン「ご名答。そこまで知ってるなら、この先の展開は…分かるよな」 グランはそこで言葉を切る。 そして次の瞬間、 グラン「バシャーモ!『きしかいせい』だ!」 バシャーモ「バシャァ―――ッ!」 バシャーモは猛スピードでラグラージに接近したかと思うと、すぐさま鋭い一撃を食らわせた。 ラグラージ「ラ、ラ…ジ…」 その一撃で、ラグラージは倒れてしまった。 フィーユ「あっ、ラグラージ戦闘不能!バシャーモの勝ち!よって勝者はグラン!」 グラン「はぁ…良かったぁ…」 グロード「お疲れ、ラグラージ。ゆっくり休んでくれよな」 グロードはラグラージをボールに戻す。 グロード「グラン、1つ聞かせてくれ。何故起死回生を今まで使わなかったんだ?」 グラン「この技は、あまりに強力すぎるから、なるべく使いたくはなかったんだ。今回の場合、相手はタフなラグラージだったしな」 そして続ける。 グラン「それに、タイプ相性ではボクの方が不利だったろ?打開するためには、一気に攻めるしかないと思ったんだ」 フィーユ「それでバシャーモに堪えるを使わせて、カムラで素早さを上げて起死回生を使った…と」 グラン「ああ。でも、バシャーモには悪いことしたと思ってる。勝つ為にわざと攻撃を受けさせてしまったからな…」 グロード「バシャーモも疲れてるだろ。まずはボールに戻してやれよ」 グロードが言った。 グランはバシャーモに声を掛けた。 グラン「バシャーモ、悪いな。あんな荒っぽい事させて」 バシャーモは別に気にしてないぜと言っているようだった。 グラン「とりあえず、今はゆっくり休んでくれ。ご苦労様」 フィーユ「さっ、ホテルに戻ろ。寝ておかないと、明日のカントーへの出発に響くわよ」 グラン「その前に、もう少しこの海を見ていたい」 グロード「寝ろよ…と言いたいけど、オレももう少し見ていく」 フィーユ「じゃ、私ももう少しだけ見て行こうかな」 3人は、月の光を受けて輝いている海をじっと見つめていた… 延期バトルは、グランがコンボにより勝利を掴んだ。 彼らはいよいよカントー地方へ旅立つ事となるのであった… 第三十四話終わり 第三十五話に続く… |
リクト | #3★2004.02/19(木)23:30 |
---|
第三十五話 クチバシティの足止め グラン「じゃあ、父さん。行って来るから」 クロト警視「ああ。気をつけろよ。何か分かったら、連絡入れてくれ」 グラン「オッケー!」 フィーユ「じゃ、私達行きます。色々ありがとうございました!」 グロード「さ、行くか」 3人が船に乗ろうとした時、クロト警視は、 クロト警視「ちょっと待ってくれ。渡すモノがあった」 グラン「何?」 クロト警視「まずは、グロード君。キミにはこの『チイラのみ』をあげよう」 グロード「いいんすか!?…で、どんな効果が?」 クロト警視「それは、ポケモンがピンチになると、攻撃力が上昇するんだ。キミのラグラージに合うと思うのだが」 グロード「あ、ありがとうございます!」 グロードは頭を下げた。 クロト警視「続いて、フィーユちゃん」 フィーユ「何ですか?」 クロト警視「キミには、この『ヤタピのみ』をあげよう」 フィーユ「聞いた事ない木の実ですけど、どんなモノなんですか?」 クロト警視「それは、ピンチになると自分のポケモンの特攻が上がる」 クロト警視は先ほどと同じ様に質問に答えた。 グラン「ボクには?」 クロト警視「前に『カムラのみ』をあげただろう」 グラン「昨日、1個使っちゃったんだよ」 クロト警視「しょうがない。足りない分追加だ」 クロト警視は仕方なく『カムラのみ』を1個渡した。 クロト警視「どの木の実も3個ずつしかないからな。ここぞという時に使うんだぞ」 しばらくして、船が出発した。 クロト警視はグラン達に向かって手を振り、グラン達も手を振り返す。 グラン「父さん。…また…会えるよな」 船はカントーに向かって順調に航海をしている。 グランはサングラスをかけ、甲板から海を眺めていた。 グラン「海で泳ぎたいけど…さすがに無理かな」 フィーユ「グラン。ここにいたのね」 グラン「何だよ。ボクがココにいちゃいけないのか?」 フィーユ「ううん、そーじゃなくって…さ」 フィーユはそう言うと、髪を風にたなびかせながら海を眺めた。 その横顔が何とも言えない程可愛らしい。 グランはそう言おうとしたが、何と言われるのか分からないのでやめておいた。 グラン「それはそうと、グロードのヤツ、どうした?」 フィーユ「あれ?そういえば何処行ったのかな?」 グロード「うげ…オレがどうかしたのか?」 グラン「うわっ!」 フィーユ「きゃあ!」 グランとフィーユはグロードがいきなり後ろに現れたので、驚いてしまった。 グラン「何だ、グロードか…驚かすなよ、まったく…」 フィーユ「びっくりした〜」 グロード「悪い…」 フィーユ「それより、どしたの?顔色悪いわよ」 グラン「まさか、船酔いか?」 グロード「みたいだ…うげ…」 フィーユ「潮風にあたれば、船酔いなんて吹っ飛ぶわ!」 そう言うとフィーユは、両手を広げ、一杯に息を吸い込んだ。 フィーユ「ほら、潮風が気持ちいいわよ!」 グロード「確かにな」 グラン「でも、まさかグロードが船酔いするなんてな」 そうこうしているうちに、船はクチバシティに到着した。 グロード「はぁ…よーやく落ち着いたよ…」 グラン「ほとんど甲板には出なかったもんな」 グランはサングラスを外しながら言った。 フィーユ「それで?この先はどんなルートで行くの?」 グラン「このクチバからは『シーギャロップ』という船が出てる。それに乗っていくそうだ」 グロード「で、いつ出発なんだ?その船は」 グラン「知らない」 グロード「はああ…まったくお前ってヤツは…」 グラン「とりあえず、ポケモンセンターに行こう。出発時刻が分かるかもしれないから」 グラン達はポケモンセンターでホウエンのクロト警視にカントー到着を報告し、少しの間休憩をとる事にした。しかし、 フィーユ「ええ〜っ!?」 突然フィーユが大声を出したので、センター内の人達は驚いた。 グラン「何だよ。騒々しい」 フィーユ「船…あと3分で出発しちゃう!」 グロード「何だと!?」 グラン「まずい!船乗り場までダッシュだ!」 グラン達は全速力で船乗り場に向かったが、時すでに遅し。船は出発してしまった。 グラン「ちきしょ〜!間に合わなかったか…」 グロード「次の船は、2日経たないと来ないらしいぞ」 フィーユ「え〜!?何それ!」 グラン「しょうがないか。しばらくココで足止めだな」 グロード「マグマ団を追わなきゃいけないのにな。全く…」 フィーユ「やっぱ…待つの?」 グランは少し考えていたが、 グラン「ポケモンの『なみのり』で海を渡るって選択があるけど、ボク達のポケモンは誰も『なみのり』覚えてるのがいないからなぁ…」 グロード「オレのラグラージは波乗り覚えてないんだよな…」 フィーユ「ああん、もう!どーすればいいのよーっ!」 フィーユは海に向かって思いっきり叫んだ。 クチバに着いて早々、船に乗り遅れ、足止めを食らってしまったグラン達。 果たして、直ぐに海を渡る手段はあるのだろうか!? 第三十五話終わり 第三十六話に続く… |
リクト | #4★2004.02/23(月)20:41 |
---|
第三十六話 釣り少女・アヤカ グラン「どうすんだよ、全く…」 グロード「船が来ないし、波乗りできないし、待つしかねえだろう」 グロードは当然の事の様に言う。 フィーユ「でも、その間にマグマ団が…」 グラン「ボクもそれが心配なんだよな」 グロード「どうこう言っていても仕方がない。ポケモンセンターでこれからの予定を考えよう」 グラン達はもと来た道を戻っていく。 途中、先ほどはいなかった1人の少女が3人の目にとまった。 その少女は、動きやすそうな服装で釣りをしていた。 グロード「釣り…か。オレもカントーでは釣りまくってたな」 グランはその少女に声を掛けた。 グラン「どだ?釣れてるか?」 少女「狙っている獲物は全然。タッツーばかりなの」 グラン「ふーん…」 少女「ところで、あなた達は?この辺じゃ見ない顔だけど」 少女は海に視線をやったまま聞いた。 グラン「今日、ホウエン地方からきたばかりだしな。ボクはグラン」 少女「ホウエン地方?随分遠くから来たのね」 フィーユ「うん。カントーからは結構…いや、かなり遠いわね。あっ、私はフィーユ。宜しく!」 グロード「オレ、グロード。もともとはカントーのヤマブキシティに住んでたんだ。久しぶりに戻って来たんだぜ」 少女「あたいはアヤカ!宜しく!」 アヤカと名乗った少女は、その直後釣竿を引いた。 アヤカ「残念…ハズレね…」 グラン「で、キミは何でここで釣りを?」 アヤカ「船に乗り遅れちゃったの。だから大型水ポケモンを狙っているのよ」 グロード「何だよ、それじゃオレ達と同じだ」 アヤカ「あなた達も船に乗り遅れたの?」 グラン「そーなんだよなー」 グランが言った。 アヤカ「それなら、あなた達もあたいの事手伝ってよ」 そう言うと、アヤカは釣竿を3本差し出した。 グラン「で、ボク達に何をしろと?」 グランが聞くとアヤカは、 アヤカ「もう…鈍いわね。大型ポケモンを釣るの」 グロード「簡単に釣れるのかねー…」 フィーユ「すっごく不安なんだけど」 アヤカ「釣りは根気!さあ、釣るわよ!」 グラン「ボクは釣り初めてだってのに…」 アヤカ「そんな事今は関係ないわ。えーと…」 アヤカは自分のバッグからボールを出した。 アヤカ「出てきて!ピジョット!」 ピジョット「ジョットォ!」 アヤカ「大型ポケモンの気配がする所、探してきて!」 ピジョット「ジョットォ!」 ピジョットは沖の方へ飛んで行った。 フィーユ「なかなか釣れないわね〜」 アヤカ「釣りは根気ってさっき言ったばかりでしょ…」 グラン「根気ねえ…」 その直後、 グラン「あ、かかった」 アヤカ「早っ!」 グラン「結構…重い…だあああああっ!」 グランは力一杯引く。 すると水面からギャラドスが姿を表した。 ギャラドス「ギャァァァァァス!」 アヤカ「大型の水ポケモン…ギャラドス…」 フィーユ「1回で釣り上げてる…」 グロード「感心している場合か!グラン!捕獲だ!」 そう言うとグロードはレアコイルを出した。 グロード「レアコイル!ギャラドスに『でんじは』だっ!」 電磁波はギャラドスに命中し『まひ』した様だ。 グラン「サンキュ!グロード!」 そう言うとグランは、 グラン「フーディン!頼む!」 フーディン「フ―――ディン!」 グロード「倒さない様に体力を減らしていけ!」 アヤカ「あたいも援護する!行って!ガラガラ!」 ガラガラ「ガラァーッ!」 グラン「よし、まずは『サイケこうせん』だっ!」 フーディン「フ―――ッ!!」 フーディンのサイケ光線がギャラドスにヒットする。ギャラドスは少しひるんだが、すぐさま反撃してきた。 グラン「ギャラドスの『かみつく』か。よけろ!」 フーディンはギャラドスの攻撃をかわす。 グラン「あの破壊力、凄まじいな…」 アヤカ「ボサッとしてないで!ボール投げて捕獲してよ!」 グラン「と、そうだったな。…いっけぇ!モンスターボール!」 グランはギャラドスに向かってボールを投げる。 ギャラドスはボールの中へと吸い込まれた。 グラン「…やったか?」 しかし、ボールが2回揺れた後、ギャラドスが出てしまった。 ギャラドス「ギャァァァァァァス!」 グロード「だめだ!もっと弱らせないと!」 グラン「そう言われても、フーディンのサイケ光線で半分以上相手の体力が減ってるんだ。もう一発打ったら間違いなく倒してしまう!」 フィーユ「どうすれば…」 フィーユが呟いた直後、 アヤカ「あたいに任せて!」 と叫んだ。 グロード「どうするつもりだ!?」 アヤカ「フーディンが攻撃している間、剣の舞で攻撃力を上げておいたの」 グラン「おい…それじゃ倒しちまうじゃんか!」 アヤカ「ご心配なく。ガラガラ!『みねうち』よ!」 ガラガラ「ガラァーッ!」 ガラガラはギャラドスに攻撃を与える。 その攻撃は、どこか少し手加減している様だった。 グロード「みねうちは確か、相手の体力がギリギリ残るように手加減して攻撃する技。捕獲に最適の技だ!」 アヤカ「今よ!ボール投げて!」 グラン「よっしゃあ!行くぜっ!」 グランは再びボールを投げる。 すると今度は、ボールは3回動いた後、止まった。 グラン「よし!ギャラドスをゲットしたぜ!」 グロード「これで海を渡る事が出来るな」 アヤカ「波乗りの秘伝マシンはあたいが持ってるから、これで覚えさせてよ」 グロード「で、ちょっと待て!あるんだったら最初から出せよ!そうすりゃ、オレのラグラージで行けたかも知れねえのに!」 アヤカ「細かい事は気にしない気にしない」 グラン「ところで、キミのピジョットは何処行った?」 アヤカ「まだ気配を探しているんじゃ…あ、戻ってきた!」 グロード「もうギャラドス捕獲したのにな」 ピジョット「ピジョ…」 アヤカ「見つからなかったって?こっちはピジョットが行った直後にギャラドスを発見して、捕獲したわよ」 ピジョットはかなり驚いて、いじけてしまった。 グラン「おい、いじけてるぞ。大丈夫なのか?」 アヤカ「あたいのピジョット、こんな事あるとすぐいじける癖があるのよ」 グロード「じゃ、捕獲したって言わない方がよかったのでは…」 アヤカ「あっ!」 グラン「『あっ!』じゃねーだろがよ!」 アヤカ「とにかく、あたいもしばらくあなた達にお付き合いさせてもらうわ。そこんとこ、宜しく」 グロード「…」 フィーユ「女の子って私だけだし、ちょっと嬉しいな」 グラン「あ、そう。ハハハ…」 新たなポケモン、ギャラドスを仲間に加えたグラン。 そして、島行きに同行する事になった少女、アヤカ。 彼らの旅はまだまだ続く… 第三十六話終わり 第三十七話に続く… |
リクト | #5★2004.02/26(木)08:38 |
---|
第三十七話 転送システム研究者・ニシキ グラン「さーて、出発するか」 フィーユ「ちょっとちょっと。いくら何でも早すぎじゃない?」 グラン「善は急げと言うだろ。行くぞ」 グロード「とりあえず、必要な物はこの町で買い足しておいた」 いつの間にいなくなっていたグロードは、買い物に行っていたのだ。 グラン「で、キミも一緒に行く…と」 アヤカ「1の島に連れて行ってくれればそれでいいの」 グラン「1の島?」 アヤカ「あの辺り一帯は『ナナシマ』と呼ばれているの。1の島はその1つね」 フィーユ「それで、1の島に何の用があるの?」 アヤカ「その島にいる『ニシキ』って人に、届け物を渡して欲しいって頼まれたの」 グロード「何だよ。寄り道かよ」 アヤカ「ずべこべ言わない!」 グロード「やれやれ、全く…」 グラン達は港からギャラドスに乗り、1の島を目指す。 その途中、 グラン「カントーにもジムあるのか?」 とアヤカに聞いた。 アヤカ「8ヶ所あるわね」 グロード「何だよ、ホウエンと同じじゃねえか」 グラン「今度こそ誰が何と言おうとボクはジムに挑戦するぞ」 フィーユ「お好きなように」 グロード「多分他にも事件発生して挑戦するヒマが無くなるのがオチだな」 グラン「何とでも言え…」 そして、数時間後… グラン「ここが1の島か…」 グロード「何だか、のどかな所だな」 グロードが島の第一印象を言った。 アヤカ「とりあえず、ポケモンセンターに行きましょ」 ポケモンセンターに入ると、大きな機械を操作している男が目に留まった。 アヤカ「あ、ニシキさん!」 ニシキと呼ばれたその男は、声が聞こえた方へ首を向けた。 ニシキ「アヤカちゃんか。待っていた。俺に届け物があるんだって?」 アヤカ「はい。コレですね」 アヤカは1つの小包をニシキに渡した。 ニシキ「うん、ありがとう。ところで、後ろの人達は?」 グラン「あ、ボクはグランです。で、こっちがフィーユとグロード。ボクの仲間です」 フィーユとグロードがニシキに向かって会釈した。 ニシキ「今日は。俺はニシキ。このシステムの研究をしているんだ」 グラン「何のシステムなんです?」 ニシキ「今の転送システムでは、ホウエン地方とポケモン交換する事ができない。でも、コレが完成すれば、通信可能になるんだ」 フィーユ「すごぉい!」 フィーユは大袈裟に驚いて見せた。 ニシキ「でも、何かが足りないんだ」 グロード「何か、とは?」 グロードが聞く。 ニシキ「うん、2つの対になる何かという事は分かっているんだけど」 グラン「もしかして、コレ…ですかね?」 グランは『べにいろのたま』を取り出す。 続いてフィーユも『あいいろのたま』を出した。 ニシキ「うーん…確かに対になっているけど、はめ込む所の形とは一致していないな…」 グラン「違ったか…」 ニシキ「そういえば『ともしびやま』にその1つがあるという話を聞いた事がある」 グラン「それ、何処ですか?」 ニシキ「船乗り場から見えるハズだ」 グラン「ああ、そういえば大きな山があった」 グランは思い出した様に言った。 ニシキ「キミ達、ともしび山に行くつもりか?」 グラン「ボク達が行って、その『対になる何か』を探してきますよ。 フィーユ「いいの?マグマ団止めなくて」 グラン「困っている人を助けるのがボクのモットーなんだよ」 グロード「…そこまで言うなら、付き合うぜ」 ニシキ「そうだ、ともしび山の手前には、ともしび温泉がある。時間があれば入ってみてくれ」 フィーユ「温泉…ですか。お肌にもいいのかなぁ?」 グラン「はいはい、温泉はまた今度」 フィーユ「ふえ〜…酷いよぉ…」 グラン「じゃ、ボク達はともしび山に行きます」 ニシキ「ああ。気をつけて」 フィーユ「で、アヤカはどうするの?」 アヤカ「あたいは、一足先に別の島に行くわ」 グロード「そっか。じゃ、またどっかで」 グラン「で、行くって言っても、船が…」 アヤカ「ピジョットがいるじゃない。あたい1人だけならどうって事ない」 グラン「やっぱ飛行ポケモンがあるといいよな」 グロード「全くだな」 アヤカ「じゃ、あたいは3の島に行ってる。また後で会いましょ」 フィーユ「うん。気をつけて」 アヤカは、ピジョットに乗って3の島へと飛び去っていった… グラン「ん?」 グロード「どうした?グラン」 グラン「いや…何か、ともしび山の山頂で炎が燃え盛っているみたいなんだよ」 フィーユ「まさか。見間違いなんじゃない?」 グラン「そうだと…いいんだけどな」 グラン達はともしび山へと向かって歩きだした。 そして、グランの見た燃え盛る炎は、見間違いなどではないという事がこの後明らかになる。 その事を彼らは、まだ知るよしもなかったのである… 第三十七話終わり 第三十八話に続く… |
リクト | #6☆2004.02/26(木)09:54 |
---|
第三十八話 ともしび山の秘宝と伝説のポケモン・ファイヤー(前編) グラン「ココがともしび山か…」 グロード「近くで見るとスゲーでかいな」 フィーユ「うん。見上げてると首が痛くなるわね」 グラン「一体、どの位高いんだよ…」 グラン「あ、道が分かれているな」 山に登り始めて早々、グランが言った。 グロード「さて、どっちに行くか」 グラン「登り道だろ。多分」 フィーユ「いいえ、洞窟の方よ」 グロード「だから、どっち行くんだよ」 グロードは早く決めろと言いたそうだ。 グラン「登り道だ!」 フィーユ「洞窟よ!」 たちたちグランとフィーユはケンカを始めてしまった。 グロード「お前らな…(でも、ケンカするほど仲が良いって言うしな。それはそれでいいか)」 見るに見かねたグロードは1つの提案をした。 グロード「2手に分かれたらどうだ?で、もし目指す物を見つけたら連絡を入れる。それでどうだろう」 グラン「じゃ、ボクは登り道を行く。やっぱりあの炎が気になるから」 フィーユ「ああそうですか!じゃ私は洞窟の方に行かせてもらうわ!」 グラン「へっ!勝手にしろ!」 フィーユ「グランの…分からず屋!」 バシッ! フィーユはグランの頬に平手打ちを1発打ち込むと、さっさと洞窟に入っていった。 グロードはグランの肩に手をのせて言った。 グロード「お前…完全に嫌われたな」 グランは平手打ちを食らった頬に手を当てて言った。 グラン「分からず屋はフィーユの方だよ全く…」 グロード「まあ、いいや。お前は山頂の炎とやらを確認して来いよ」 グラン「ああ。…グロード!」 グロード「あー?」 グラン「ボクがさっき言った事、そっくりそのままフィーユに伝えてくれ。どんな反応するか見物だぜ」 グロード「とんでもない事思いつくんだな。じゃあ伝えるが、これでもしフィーユにフラれても、オレは責任取らないからな」 グラン「はいはい。じゃ、お前も気をつけろよ」 グランはそう言い残すと山頂へと歩いて行った。 そのころ、洞窟内部では… 歩きながらフィーユは1人ぶつぶつ何かを呟いていた。 フィーユ「グランのバカぁっ…」 ???「聞いちゃったぜ」 フィーユ「きゃあっ!?」 突然聞こえた声に、フィーユが驚いて振り向くと、グロードが立っていた。 グロード「お前、驚きすぎだ。臆病だな」 フィーユ「グロード君…驚かさないでよ…」 グロード「それより、聞いたぜ。『グランのバカぁっ』って。後でグランに言ってやろう」 フィーユ「…勝手にすれば?」 フィーユはもうどうでもいいという意味を込めて言った。 グロード「そうだ、グランからの伝言だ」 フィーユ「…何よ」 グロード「『分からず屋はフィーユの方だ』だってさ」 フィーユ「グランが…本当にそう言ったの?」 グロード「ああ。『そっくりそのまま伝えてくれ』と言われた」 グロードがそう言うと、フィーユは黙ってしまった。 フィーユ「…」 グロード「どした。黙っちまって」 フィーユ「そんな…私はただ…」 グロード「ただ…何だ」 フィーユ「私はただ、冗談で言っただけなのに…」 グロード「その冗談がキツイな。グランはあの言葉を本気だと思っているんだぜ」 フィーユ「まさか…」 フィーユは絶句した。 グロード「後で、謝った方が…いいぜ」 フィーユ「…うん」 グロード「さてと、とりあえずは『対になる何か』を探そう」 フィーユ「でも、何処にあるの?」 グロード「それが分かれば苦労しない」 グロードは当然の事の様に言った。 グロード「もしかして、秘宝だったりしてな」 フィーユ「まさかぁ。そんなワケないでしょ?」 グロード「もし仮に秘宝だったら、何か仕掛けがあるハズだぜ」 グロードがそう言った途端、フィーユの足元の地面が突然砕けた。 フィーユ「きゃああああああ!」 フィーユは悲鳴を上げながら下へと落下していった。 グロード「おーい!大丈夫かーっ!?」 グロードは開いた穴に向かって怒鳴った。 フィーユ「こ…ここは…?」 フィーユが体を起こすと、その落ちた部屋の中央に何か光る物があった。 グロード「どうした!返事しろ!」 フィーユ「うん!私は大丈夫!それより、ちょっと来て!」 グロードは一体何だと言って、先ほどフィーユが落下した穴に入った。 グロード「ここは?」 フィーユ「それより、グロード君。これ!」 フィーユは部屋の中央にある光る物を指差した。 グロードは近寄ってその光る物を見る。 グロード「これ…ルビーだ…」 フィーユ「ルビーって、宝石でしょ?」 グロード「ああ、そうだ」 フィーユ「綺麗…」 フィーユはうっとりとした表情でルビーを眺めている。 グロード「多分、これがニシキさんの言っていた『対になる物』の1つだろうな」 フィーユ「じゃ、取った事だし、ニシキさんの所に戻りましょ」 グロード「そういや…山頂に行ったグランは一体どうしたんだろうな」 フィーユ「そのうち戻って来るんじゃない?」 グロード「じゃあ、戻るまでさっきの分かれ道で待つか」 その頃グランは… グラン「もうすぐ山頂だな」 山頂への道を歩いていた。 グラン「あ…まただ」 再び山頂で炎が燃え盛り始めた。 グラン「きっと、あそこには何かがある」 グランは山頂の炎目指して登っていく。 しばらくして、 グラン「ふう…山頂に到着だ。…それにしても暑い」 その原因は直ぐに分かった。 グラン「あ…あれは、伝説の鳥ポケモン、ファイヤー!」 そう。燃え盛る炎の正体はファイヤーだったのだ。 ファイヤー「貴様、何者だ…」 グラン「…!?(ポケモンが…喋ってる!?)」 ファイヤー「何者だと聞いておるのだ!」 ファイヤーは先ほどより強い口調で言った。 グラン「ボ…ボクは…グラン」 グランは自分の名を言った。 伝説の鳥ポケモン・ファイヤーと遭遇したグラン。 この後、どんな展開が待っているのであろうか!? 第三十八話終わり 第三十九話に続く… |
リクト | #7☆2004.02/27(金)10:08 |
---|
第三十九話 ともしび山の秘宝と伝説のポケモン・ファイヤー 後編 ファイヤー「貴様、何故ここに来た」 グラン「ボクはただ…山頂で炎が燃え盛っているから、何かあるのかと思って見に来ただけで…」 ファイヤー「黙れ!」 グラン「…!」 ファイヤーに怒鳴られ、グランは訳が分からないといった表情で、 グラン「ボクが…何をしたっていうんだ!?」 グランが反論すると、ファイヤーは、 ファイヤ―「私を捕らえに来たのだろう。貴様ごときに捕まる訳にはいかんぞ!」 グラン「何故そこまでボクを疑う?…よかったら話してくれないか?」 ファイヤー「…まぁいい。よかろう」 そう言うとファイヤーは話し始めた。 私は数年前まではセキエイ高原の「チャンピオンロード」という所に住んでいた。 だが、その事を貴様ら人間が知ってから、私を捕らえに来る者どもが後を絶たなくなった。 私は戦い続けた…いつの日か再び安息の日々が訪れると信じ… グラン「そしてそうはならなかった、と」 ファイヤー「その通りだ。そして、私を捕らえようとする者は減るどころか増えていった」 グラン「…続けてくれ」 私は身も心も傷付いた… これ以上この地にいると、私の命が危うくなると考え、私はチャンピオンロードを去った。 私は新天地を目指し、飛び続けた。 そしてこの『ともしび山』にたどり着いた… この地に身を移したその以後、欲に満ちた人間は姿を現さなくなった。 だが、今こうして貴様はこの地に足を踏み入れた。 …こうして人間に会ったのは、大体2年ぶりだ。 グラン「…」 ファイヤー「そして、この地に足を踏み入れてしまった以上、生きて返す訳にはいかん」 グラン「…ああそうかい」 グランはくるりと背を向け、元来た道を戻り始めた。 グラン「ボクを倒すならいつでもいい。ただし、何の野望も欲もない人間の命を奪って悪者よわばりされても、ボクは責任取らないからな」 ファイヤー「…」 グラン「安息の日々の邪魔して悪かった。ボクはここから立ち去る」 グランが再び歩き始める。すると、 ファイヤー「止まれ」 グラン「何だよ」 そう言った瞬間、グランの顔の横を炎が通過していった。 グラン「…何のつもりだ」 ファイヤー「見ろ」 グランがファイヤーの示した方向を見ると、その先にブーバーが倒れていた。 ファイヤー「先ほどから貴様の事を狙っていたようだ。私が近くにいたので狙い難かったのだろう」 グラン「…一応礼を言っとく。助かった」 グランが戻ろうとした時、 ファイヤー「待て」 グラン「こんどは何だ」 するとファイヤーがグランの近くに飛んで来た。 ファイヤー「どうやら貴様の事を疑っていたようだ。謝る」 グラン「…」 ファイヤー「私は人間を疑っていたが、貴様の様な人間に会ったのは初めてだ」 するとファイヤーは少し間を置き、 ファイヤー「…私を連れて行け」 グラン「は?」 ファイヤー「私は人間に付いて行くなどという事は無いと思っていた。だが、今日貴様に会って考えが変わった」 グラン「…」 ファイヤー「貴様さえ良ければ、私は貴様の力となろう」 グランは少し考え、 グラン「…来いよ。…付いて来いよ、ファイヤー」 ファイヤー「ありがたい。では、私は今日からお前の仲間だ」 グラン「さっきまでボクの事『貴様』って言ってたのに」 ファイヤー「今の私はお前の仲間だ。貴様と言う訳にはいかんだろう」 グラン「じゃあ、ボクは仲間の所に戻るかな」 ファイヤー「お前に仲間がいるのか」 ファイヤーの表情が少し曇った。 グラン「心配ないさ。ボクの仲間は2人いるんだけど、いいヤツらだ」 ファイヤー「それを聞いて安心した」 グラン「とりあえず、今のお前はまだ野生だ。一旦ボールに収めれば、正式にボクの新しい仲間だ」 グランはモンスターボールを取り出しファイヤーに向けた。 ファイヤーはボールに吸い込まれ、抵抗もせずにボールに収まった。 グラン「出て来い!ファイヤー!」 ファイヤー「さて、下山するとしよう」 グラン「また歩くのか…」 ファイヤー「私に乗れ」 グラン「そんな事したらボクが燃えちゃうだろうが!」 ファイヤー「私が認めた者は、熱さを感じない」 グラン「本当だ」 ファイヤーに跨ったグランが言った。 ファイヤー「一気に降りるぞ。しっかり掴まっていろ!」 グラン「オッケー!」 グランを乗せたファイヤーは、一気に下に降りていった。 その頃… グロード「グランのヤツ、何処で油売ってやがる」 フィーユ「まさか、何かあったんじゃ…」 フィーユがそう言った直後、グランが山から下りてきた。 グラン「到着〜!」 グロード「グラン!無事だったか」 フィーユ「それに、グランの横にいるポケモンって…」 グロード「伝説の鳥ポケモンの…ファイヤー!」 ファイヤー「私はこの者の仲間となった。以後、宜しく頼む」 グラン「ま、そーゆー訳さ」 グロード「ポケモンが…喋った!?」 フィーユ「でも、伝説のポケモンだから、そんな事無いとは言えないかもね」 グロード「(小声で)フィーユ。グランに謝っとけ。今のうちに」 グロードに言われ、フィーユはグランの前に歩み寄った。 フィーユ「グラン、あの…さっきは、ゴメン」 グラン「…」 フィーユ「許して…くれないの?」 グラン「…フッ」 フィーユ「何?何がおかしいの?」 グラン「バカ。許さない訳…ないじゃん」 フィーユ「…焦らしすぎよ」 グロード「…オレが期待していた展開、何か違う様な気もするんだが、まぁいいか」 グラン「何だよ、期待していた展開ってさ」 フィーユ「私も気になる。何?」 グロード「例えば、グランがフィーユをいきなり抱きしめるとか…」 バコッ! グロードはグランの拳骨を頭に食らった。 グロード「何すんだよ!痛いな全く…」 グラン「妄想もいい加減にしろ!」 フィーユ「それ、今度こんな事あった時に使えるかも。いただき!」 グラン「やれやれ、これじゃフィーユと喧嘩ができねーぞ」 フィーユ「冗談よ、冗談!」 グラン「冗談がキツイ!いい加減にしろ!」 グロード「はは…冗談か」 ファイヤー(世界は広いな。あの様な人間もいるとはな…) 新たな仲間、伝説のファイヤーを仲間に加えたグラン。 そして、対になる物のもう1つの行方は!? 第三十九話終わり 第四十話に続く… |
リクト | #8★2004.07/08(木)00:06 |
---|
第四十話 2人のホウエントレーナー ともしび山から戻ってくると、ニシキが待っていた。 「あ、持って来てくれたね」 「ついでにファイヤーも捕獲したんです」 グランはファイヤーにとっては余計に聞こえる言葉を付けて言った。 「私がついでだと?」 当然、ファイヤーは怒る。ついでなんて言われたくないんだぞ、全く。 「あ、悪い悪い。でも、殆ど偶然だったようなもんだったろ?」 「まあ、そう言われればそうなのだがな…」 …簡単に納得してどうする。 「ありがとう。でも、実は…」 ニシキはそこで少し焦らした。 「また何かあるんスか?」 グロードはこれ以上何があるんだと言いたげだった。 「キミ達、この後は何処に行くつもりなんだ?」 「えーと、とりあえずは3の島に…」 グランがそこまで言うと、ニシキは、 「今あそこへ行くのは止めた方がいい」 「何かあるんですか?ひょっとしてオバケが出るとか?」 フィーユが聞くと、 「ばか。真っ昼間からオバケが出るか」 すかさずグランがツッコミを入れた。 「オバケは出ないが、最近あの島には暴走族が出没するんだ」 「大した事無い」 ニシキが言うとグロードは言い返した。 「危険だろうが」 グランが反論する。そんな危ない島、行けって言われたって行くかよ。 「あっ…そういえば、アヤカも3の島に…」 思い出したようにフィーユが言った。 「連絡してみろ。ポケギアの番号分かるんだろ?」 「聞いたから知ってるわ。グラン、ポケギア貸して」 フィーユが手を出すと、グランは、 「ポケギア位持ち歩いてろよ…これだから以前お前が敵に捕まった時にボク達が苦労したんだから」 呆れた表情で言った。こいつには反省の色ないのか。 「余計なお世話。じゃ、借りるわ」 そう言ってフィーユは電話を掛け始めた。 「あ、繋がった!」 『はーい!皆、元気?』 アヤカの元気そうな声が聞こえた。 「元気かじゃねえよ。今何処だ」 グランはフィーユからポケギアを引ったくって聞いた。 『あたい? 今は6の島にいるんだけど』 「まさか、3の島に行ってたんじゃないだろうな?」 グロードが聞く。 『行ってたけど、暴走族に追い出されちゃった』 アヤカは少し照れたような口調で言った。 「まあ、とにかく無事でよかった。ボク達も今からそっちへ…」 『あたいはこれからカントー本土に戻るわ』 「え? まだ顔出してないのに?」 フィーユがビックリして言う。 『あたいだって会いたいけど、こっちにも予定があるの』 「そっか…じゃ、またどこかで会おうね!」 『大丈夫。いつだって連絡は取れるし、あたいの力が必要な時はピジョットで飛んで行けるし』 「分かった。じゃあ、ボク達は6の島に行くから」 グランが電話を切ろうとした時、 『あ、そうだ!』 アヤカが思い出した様に言った。 「何か用でもあるのか?」 『今、6の島にホウエンから来たトレーナーが2人来ているらしいの。何か話が聞けるかも』 「分かった。行ってみる」 『その2人は男の子と女の子で、2人共髪型に特徴があるから、すぐ分かると思う』 「あいつらの事も聞けるかな…」 グロードが呟くように言った。マグマ団の好きにさせておけるか。 「じゃあ、気をつけて。じゃーね」 『うん。じゃあ』 「さーて、そろそろ次の島に向かうとするか」 グラン達が出発しようとしていると、ニシキが走ってきた。 「間に合った… はぁ…」 「どーしたんです?そんなに急いで」 息を切らしているニシキに、グランが聞いた。 「6の島にホウエンのトレーナーが2人来てるって話は聞いただろ?」 「聞きましたけど、それが何か?」 グロードが逆に聞く。 「その2人に会ったら、このパーツを渡してほしい」 「何ですか? これ」 渡された小包を見て、グランが聞いた。 「全国図鑑にパワーアップする拡張パーツさ。その例の2人の図鑑は、まだホウエン分でしか作動しないから」 「で、ボク達の図鑑は?」 グランが聞く。まさかボク達の図鑑も全国版になっていないんじゃないだろうな。 「キミ達の図鑑は、既に全国図鑑対応になっている」 「全国図鑑って…ポケモンは全部で何匹いるんですか?」 フィーユがニシキに聞く。 「知らない」 「…」 グラン達は言葉を失った。知らないってどういう事だ。 「頼むぞ、ファイヤー」 「ようやく私の出番か。待機時間が長すぎる」 長すぎるって言っても、ほんの10分程度じゃないか。 グランは心の中でそう思った。 「ぐだぐた言っていないで乗れ。置いて行くぞ」 「はいはい…っと」 これ以上の議論は時間の浪費だ。ここは機嫌を取っておくか。 「あのさ… 私、鳥ポケモン乗った事無いのよね…」 フィーユが心配そうに言うと、 「ま、大丈夫だろ」 グランはそんな事関係ないという様に言った。 「あのねえ、私にもしもの事があったら、どう責任取るの!?」 フィーユがムキになって言った。 「はいはい、置いて行かれたくないならさっさと乗る!」 「もう…」 さすが伝説の鳥ポケモンだけあって、スピードは凄い。 数分で目的地に到着出来た。 「さーて、例の2人は何処だ」 グロードが辺りを見回しながら言った。 「アヤカの話では、髪型に特徴が…」 フィーユが言うと、 「ちょうど、あんな感じかな」 グランがすぐ近くを歩いている少年と少女の方に顔を向けた。 「あー、そうだな。あんな感じの… って、オイ!」 グランに指摘され、グロードが見ると、まさにその2人は髪型に特徴があった。 少年の方は、髪と言うより帽子だろうか。 「ちょっと待ってくれよ、キミら」 グランが2人を呼び止める。 「俺か?」「私?」 少年と少女が同時に返事をした。 「突然ソーリー。ボクはグラン」 グランは自己紹介した。しかし、何故「ソーリー」なんだ。 「俺はユウキっていうんだけど」 「私はハルカ」 2人もそれぞれ自己紹介する。 「実は渡してくれと頼まれた物があって、キミ達探してたのさ」 グランは言うと、ニシキから預かったパーツを渡した。 「なになに… 図鑑拡張パーツ、か」 呟くとユウキは、慣れた手つきで装着を始めた。自分のが終わるとハルカのも。 「ところで、あそこの人たちは?」 ハルカが聞くとグランが、 「ボクの仲間。フィーユとグロードさ」 と紹介した。 「よっ」「よろしく〜」 グロードとフィーユが答える。 「んん!?」 突然ユウキがフィーユの方に全速力で駆け寄ってきた。推定時速30キロ。 「これはこれは、美しいお嬢様。これから私とお茶でも…」 「は、はぁ?」 フィーユは困った顔をグランに向けた。 グロードも呆れてため息をついた時、今度はグロードの方にハルカが全速力で駆け寄って来た。推定時速はユウキと同じ位。 「あの、もしよければ私と一緒にお茶でも…」 「…はぁ」 グロードも困った顔をしている。 「何だこの2人は。性格がまるっきりそっくりじゃないか」 グランはやれやれといった表情で首を振った。 …もう寝よう、うん。ナンパの2人がうるさいうるさい。 え、まだ真昼間だって? 気にしない気にしない。…え、気にする? 第四十話終わり 第四十一話に続く… |
リクト | #9★2004.06/27(日)12:47 |
---|
第四十一話 マルチバトル! VSユウキ&ハルカ 「この島にはもう用は無いな。渡すモノ渡したし」 グランが伸びをしながら言った。おいおい、何か忘れてやしないか? 「バカ。もう1つの対になる物を探すんだろ」 グロードがツッコミを入れる。コイツは言うときは言う奴なのだ。 「面倒だよ。他の人に押し付け…」 バコッ! 突然、拳骨で殴られた。その主はフィーユ。 「はい、自分の行動には責任持ちましょうねー」 フィーユが顔に笑顔を浮かべて言った。但し、若干引きつった笑顔だが。 「じゃ、俺がやって来てやる。アンタじゃ心配だし」 ユウキが言った。当然この言葉を聞いてグランは黙っちゃいない。 「ボクより年下に見える。幾つだ」 「俺もハルカも12歳だぜ」 それを聞いてグランはフッと笑った。完全にバカにした様な笑いに近かった。 「なーんだ、ボクより年下じゃないか。よって、敬語使え」 「たかだか2、3歳しか離れてないじゃねーか!」 ユウキが反論する。年下だからって甘く見るな。 「ま、アンタみたいな弱腰には、この先の旅、上手くやっていけるとは思えないけどな」 グランは頭にきた。誰が弱腰だ。時間あったら説教してやりたい。 「いいだろ。ボクが本当に弱腰かどうかは、ポケモンバトルでボクの実力を見れば分かる」 「ホントにやんのか〜? 俺とハルカはダブルでは負け無しなんだぜ」 「ふーん。…それが?」 グランはそんな事関係無いといった感じで答えた。 「じゃ、その負け無し伝説をボクが崩してやる」 どうやらグラン、ダブルを挑む気満々だ。 正確にはこの場合はマルチバトルだろうか。 2人のトレーナーでペアを組み、相手とバトルする2体2だ。 「ハルカ! やるぞ」 「ダブルを私達に挑むなんて、無謀というか、何と言うかね」 「うるさい黙れ。相手が誰であろうと勝利に向けて全力を尽くすのみだ」 グランはそれだけ言うと、仲間の方に向き直った。 「さて、誰と組むか…」 グランはグロードとフィーユを交互に見ながら言った。 「ねぇ、私と組んでくれない?」 「それはいいけど…何故?」 「これまでマルチバトルやった事ないし、慣れておきたいからよ」 「随分普通な理由だな」 グランは思った事をしっかり言った。 「それに…」 「…? まだ理由が?」 「ううん、これはあまりにも個人的な理由だから、言わないでおく」 グランは「あっそ」と短く返した。 「グランと一緒に戦いたい」なんて、ちょっと照れくさくて言えないし。 「で、オレが審判やれ…って事か」 グロードは大して面白く無さそうに言った。 「成り行き上そうなっちゃうんだ。悪いな」 「…まあ、こうなる事は大体予測出来てたんだけどさ」 「バトル、開始!」 グロードはフィーユの荷物の1つ、調理に使う鍋を叩いた。 試合開始のゴングのつもりだったが、ゴングには聞こえない音が出た。 その時出た音は「ゴン」だった。…そりゃゴングには聞こえないか。 「行けっ、ケリー!」「頼むわよ! ライル!」 ユウキはケリーというニックネームのミロカロス、ハルカはライルというニックネームのノクタスを繰り出した。 「ジュカイン、行ってきて!」「行って来い、バシャーモ!」 対するグランとフィーユは、バシャーモとジュカインの炎草コンビだ。 「ジュカイン! ミロカロスにリーフブレードよ!」 「ジュカッ!」 フィーユの指示を受け、ジュカインが先制してミロカロスにリーフブレードを打ち込む。 「いいぞ、フィーユ! 効果は抜群だ!」 グランが言うと、フィーユは軽く笑って答えた。 「…なかなかの威力のリーフブレードだな」 ユウキがポツリと呟く。 どうやらミロカロスは、ギリギリ耐えたようだ。 その間に、バシャーモはハルカのノクタスを一撃で倒していた。 これで流れは一気にグラン達に傾いたかに見えた。 「ノクタス、戦闘不能!」 グロードの声が聞こえた、しかしユウキとハルカは全く動じていない。 「ユウキ。…あれを発動させるのね?」 ユウキは無言で頷く。 「ケリー。…ミラーコートだ!」 「ミラーコート!? まずい、逃げ…」 グランが叫ぶが、 「遅いッ!」 「ミロォ〜ッ!」 ユウキが叫ぶと同時に既にミロカロスはミラーコートを発動させていた。 リーフブレードのダメージを倍返しされ、ジュカインは吹っ飛ばされた。 「きゃあっ!」 吹っ飛ばされたジュカインがフィーユに直撃し、フィーユもそのままジュカインと一緒に少し離れた所まで飛ばされた。 「う…くっ…」 フィーユは何とか立ち上がったが、ジュカインは戦える状態ではなかった。 「ジュカイン、戦闘不能!」 再び、グロードの声が聞こえて来た。 同時に、立ち上がったフィーユはがっくりと膝を付いた。 「ミラーコートの威力、思い知ったか!」 ユウキがグラン達に向けて言う。 ここはもうバシャーモに全てを賭けるしかない。グランはそう感じていた。 「相手は早い。しかも相手は苦手な水タイプ。…バシャーモを信じて戦うしかない」 彼は声に出さず、心の中で呟いた。 第四十一話終わり 第四十二話に続く… |
リクト | #10★2004.07/03(土)01:13 |
---|
第四十二話 失われた勇気 「まずい。残りは炎のバシャーモだけだ」 心の中でグランは呟いた。 「降参すんなら今のうちだぜ」 ユウキが言った。お前じゃダブル無敗の俺には勝てないんだぜ。 「降参…するハズ無いだろ」 グランが言い返す。彼の辞書には『降参』という言葉は無いらしい。 「分からないなら…教えてやる。『敗北』ってモンをな!」 突然ユウキの目つきが変わった。鋭い眼光だ。 「ボク達は負けない! 行くぞ、バシャーモ!」 「バシャッ!」 先にハルカのノクタスを倒したバシャーモは、改めて戦闘態勢を整える。 グランは相手トレーナーと相手ポケモンに集中する。 (よしっ。『きしかいせい』で一気に決めてやる!) 「ケリー! 『どくどく』攻撃だ!」 「ミロッ!」 指示を受け、ミロカロスは毒液を射出した。 「なっ…!」 グランは言葉を失った。「もうどく」状態になった今は、うかつに『こらえる』を使えない。 「そのバシャーモの持ちコンボ、気付かないとでも思ったか」 ユウキはニヤリと笑って言った。 (しまった! コンボを封じられた!) いつもはピンチになるとバトルで冷静に状況を判断するグランだが、コンボを封じられて明らかに動揺していた。 「くっ…バシャーモ! スカイアッパ…」 「ハイドロポンプ!」 間髪入れず、バシャーモにハイドロポンプが飛んで来た。 先ほどのフィーユのジュカインと同じ様に、今度はグランを巻き込んで吹っ飛んでいく。 かなり飛ばされ、グランとバシャーモは岩壁に直撃した。 「がはっ…」 グランは立ち上がろうとしたが、岩壁に叩きつけられた時に右腕を痛めたらしく、立ち上がるのに少し手間がかかった。 「そうだ…バシャーモ、立て! 立つんだ!」 しかし、バシャーモも、もはや戦える状態ではなかった。 「バシャーモ、戦闘不能! 勝者、ユウキとハルカ!」 グロードがユウキとハルカの方に手を振り上げた。 「ま、当然の結果だけどな」 「やっぱり、私達にダブルを挑んだのが間違いだったみたいね」 ユウキとハルカが言う。 「ま、やる気があるんだったら、またどっかで相手になってやってもいいぜ。じゃーな」 「まったねー!」 そう言い残すと2人は去っていった。 「負けちゃったね、グラン…」 フィーユがやってきて言った。 「…」 グランは何も言わない。負けたショックのためか、それとも右腕の痛みらか。 「おい、聞いてるのか」 グロードが聞く。 「聞いてるよ。…くっ!」 グランは右腕を抑えた。 「腕、大丈夫?」 フィーユが心配そうに聞く。 「何とか…大丈夫みたいだけど… 今はそれどころじゃ」 グランは腕の痛みよりも、バトルに負けた事の方が重要らしい。 「アイツら、今度会う機会があったら、絶対倒す」 「その為には、何か対策立てなきゃ」 グランは立ち上がると、自分のモンスターボールからフーディンを出した。 「ちょっとゴメン。行く所があるんだ…」 そう言い残すと、テレポートで何処かへと行ってしまった。 「あっ、ちょっと待ってよ!」 「5年ぶり、かな」 グランが立っていたのは、道場の様な場所の入口だった。 「師匠! 師匠!」 叫びながら左手で門をガンガン叩く。 しばらくして、中から1人の老人が現れた。 「おお、お主は…」 「5年ぶりですね、師匠」 師匠のヒゲって相変わらず濃いですね。そう言いたかったが、言うと何言われるか分からないのでやめておいた。 「して、このワシ、ムゲンサイに再び何用じゃ?」 「あー、ハイ。実はですね…」 「ふむ、負けたショックで戦う勇気が薄れたとな」 「ボクは…一体どうすれば…」 ムゲンサイは少し考え、 「ではまず… たわけ!」 いきなり怒鳴られ、グランはひっくり返りそうになった。 「その様な事で戦う勇気が薄れるとは、まだまだ修行が足りんようじゃの」 「おっしゃる通りです…」 「良い機会じゃ。今一度精神修行をしてやろう」 「修行って言ったって…何やるんですか」 グランが聞くと、 「5年前よりグレードアップした内容じゃ。題して『地獄の特訓十選ムゲンサイ版』じゃ!」 ムゲンサイは言い放つ。 「じ…地獄の特訓十選…」 グランは困った顔とそんなのやりたかないよという様な顔をした。 「お前のためじゃ。しばらく我慢するのじゃぞ」 ムゲンサイはやる気満々だった。 (まさか滝に打たれて修行とかさせられるんじゃないだろうなぁ…) ユウキとハルカに敗れ、ムゲンサイの修行を再び受ける事にしたグラン。 地獄の特訓十選を彼は無事クリアできるのか!? 第四十二話終わり 第四十三話に続く… |
リクト | #11☆2004.07/02(金)23:53 |
---|
第四十三話 まさかそんな事が… グランが仲間に行き先も告げずに行方をくらましてから3週間。 グランは師匠であるムゲンサイの元で地獄の特訓十選を実行中である。 「はぁ…はぁ…ようやく後一ヶ所だ」 「グラン。右腕は平気かの?」 「あ、ハイ。少しずつではありますけど回復してます」 グランが答えた。 「ワシの孫の治療は効果的じゃろう」 「ええ。さすがリナさんですよ」 彼はムゲンサイの所に着いてすぐ、ムゲンサイの孫であるリナに右腕の治療を施してもらったのだ。 そのおかげか、この数日は右腕の調子がいい。 「グラン君、頑張ってる?」 そのリナがグランに話し掛けてきた。歳は10代後半か20歳前半位だ。 特徴なのは、この人の笑顔はいつも魅力的な所だ。 「あ、リナさん。今日も綺麗ですねぇ」 「まあ。グラン君はおだてるのが上手ね」 リナはくすくすと笑った。 「順調じゃよ。後1つじゃ」 先ほどのリナの『頑張ってる?』という質問に、ムゲンサイが代わりに答える。 「あら、もう『地獄の特訓十選』のうち9つまでクリアしたの?」 リナが驚いて聞き返す。 「ただ者ではないんじゃよ、このグランはな」 「でもお爺ちゃん。今までこの特訓を受けた人達でも、早くて1ヶ月はかかったのに…」 リナはまだ信じられない様子だ。 「それより師匠。最後は何ですか?」 「最後は修行の定番、滝に打たれる修行じゃ」 グランは「はい」と短く返した。いかにも修行らしい修行だな。 思えば今までやってきた修行はグランにとって実にくだらないとしか言いようが無い物ばかりだった。 「滝に打たれる」を除くその他の特訓内容の一例を挙げてみると、 「螺旋階段早登り」「廊下水拭き50mタイムアタック」「ピンが20本のボウリング」 「スポ根ギブス付けて50m走」「1000本ノック」「自転車式発電機で自家発電」など他三種。 実にくだらない物ばかりだった。 つーか、まともなのは最後の1つ、滝の修行だけじゃないか。 しかも、1ヶ月もかかる物なのか? コレは。 「頑張るのもいいけど、無理だけはしちゃダメよ」 リナが言った。この人はグランを本当の弟の様に可愛がってくれている。 グランとしても、リナは本当の姉の様な存在でもあるのだ。 「でも、師匠も凄い物考えるよね、リナさん」 リナが用意してくれた飲み物を飲みながらグランが言った。 「ふふっ。お爺ちゃんはあんな感じの人だから。修行受けるグラン君も苦労するわね」 「いや、リナさん。ボクだけじゃなく、修行受けた他の人だって苦労するって、あれじゃ」 「そうね。今まであの修行受けた人は、あまりの辛さに泣きながら帰っていったと言うし」 そりゃ、あんなにハードな特訓じゃ泣きたくもなるよな。グランはそう思った。 「アイツら…どうしてるかな」 ふいに、グランがポツリと言った。 「そういえば、仲間に行き先も言わないでココに来たんだっけ」 「ああ…」 「きっと、グラン君の事心配してると思うわよ」 「修行が終わったら、戻るつもり」 グランが答える。 「きっと、いい仲間なんでしょうね…」 リナは、横に座っているグランの方に視線を向けて言った。 「そう。本当にいい仲間なんだよ、リナさん」 グランは視線を変えず、ただ前方を見ていた。 遠くでムゲンサイがグランを呼ぶ声が聞こえた。 「グラン…あなたには本当の事を言ってないけど…あなたのお父さんと私は親子。つまり…あなたは私の本当の弟。つまり姉弟なの。今は正体隠してるけど…いずれ、言う時が来る」 リナは心の中で呟いた。 その頃… 「どうするんだよ、グランが戻って来ない事にはどうしようも無い」 グロードが苛立って言った。3週間もどこほっつき歩いてるんだ。 「そのうち戻って来るわよ。私は信じてる」 「何を悠長な事言ってるんだよ」 今のグロードは少し機嫌が悪い。 「何してるんだ」 どこからか声が聞こえた。 「何って、グランがいなくなったからどうするかの対策を…」 そこまで言ってグロードが振り向いた。 「ボクはここにいる。そんなに騒ぐな」 「グラン! 今まで何処行ってたのよ?」 フィーユが近づいて言った。 しかし、グロードは何かおかしいと思った。 「おい、腕、大丈夫なのか?」 見ると、腕は何ともない。 「腕? 何の事だ?」 その言葉を聞いて確信した。コイツはグランじゃない。ニセモノだ。 「フィーユ! ソイツはニセモノだ!」 「えっ!?」 言われてフィーユはう後ろ飛びで2歩下がった。 「バレちゃったか〜」 「やっぱり…ニセモノか」 「そ〜さ。ぼくちゃんはラッシード。キミ達の仲間のそっくりさんなのさ〜」 「確かに似てる。目つき以外は」 同じ頃… 「うわー、冷たかった…」 グランは最後の修行を終えた。その修行というのが、ムゲンサイが5m下の滝壷にグランを蹴り落とし、寒中水泳兼滝に打たれて修行だったのだ。外は暖かいのに水は凄く冷たい。 「リナさん…コレはツライよ」 「修行を受けた他の人もそう思っていたみたい。ほら、風邪引くわよ」 リナはそう言ってタオルを渡した。グランは礼を言って受け取る。 「ご苦労じゃったのう、グラン。これで全て終了じゃ」 「はい。どうもありがとうございました。ボクは準備をしたらすぐに出発しますので」 数十分後… 「じゃ、お世話になりました」 「今度来た時は精神修行ではなく、ポケモンバトルの修行をしてやろう」 「ええ、ぜひ」 グランが行こうと振り向いた時、急にリナに右手首を掴まれた。 「何? リナさん」 「…」 リナは何も言わずにグランを見つめる。その目つきは、何かを伝えようとしているかの様だった。 そして、その目にはほんの少しだが涙が浮かんでいた。 リナは顔をグランに近づけた。私をよく見て。何か感じない? そう伝えようとしていた。 グランも何となくだかそれを察した。 あの目…以前鏡で見た自分の目と似ている。まさか… 「あ、じゃあ、ボクは行きます、師匠」 「ああ。元気での」 「まさか、リナさんは…ボクの…姉さん、なのか…」 父さんは何も言ってくれなかったのに。この旅が終わったら、真実を聞き出したい。 本当にあの人が…リナさんがボクの姉さんなのか、確かめたい。 心の中で呟きながら、グランは信じられないといった気持ちで道場を去った。 第四十三話終わり 第四十四話に続く… |
リクト | #12★2004.07/03(土)00:46 |
---|
第四十四話 ニセグラン登場!? 3週間にわたるムゲンサイの修行を終え、仲間の所に戻るグラン。 そしてその仲間の方では… 「本当に何から何までそっくりだな。目つきと話し方以外は」 グロードはラッシードと名乗った少年を眺めた。 彼は歳は自分やグラン、そしてフィーユと同じ位。そして背丈もグランとさほど変わらない。 「世界には自分のそっくりさんが3人は居るって聞いた事はあるだろ〜?」 軽い口調でラッシードが言った。軽いを通り越してこれは軽すぎではないのか。 「いや、これはいくら何でも似過ぎよ…」 確かにフィーユの言う通りである。似過ぎだ。 「もしグランが来たら…きっと驚くかもね」 付け足すようにフィーユが言う。 「あのさ〜、モノは相談なんだけど〜、ぼくちゃんの仲間になる気はないか〜い?」 ラッシードがグロードとフィーユに聞いた。勿論軽い口調で。 「オレはパス」 「私も遠慮しとくわ…」 その答えを聞いて、ラッシードはかなり驚いた。 「そんな事言わずにさ〜、かわいこちゃ〜ん♪」 一度言っただけでは懲りないらしい。ラッシードはフィーユの腕を掴んだ。 「きゃっ…! ちょっと、何するのよっ!? 離してっ!」 フィーユがその手を振り払おうとしたその時、 「離してやれよ、オイ」 誰かの声が聞こえた。 「この声…」 グロードが声のする方向へと向いた。 そこに立っていたのは、ホンモノのグランと、そのパートナー、バシャーモだった。 「グラン! よかったぁ〜!」 フィーユがグランの方へ駆け寄って行った。 「あのさ、フィーユ。まずは…離してくれ」 グランは自分に抱きついて泣きじゃくっているフィーユに言った。 「でも…悪かった。心配かけて」 未だグランに抱きついて泣いているフィーユと、その近くにいるグロードに向けて彼は言った。 「…遅かったじゃねーかよ」 グロードは口元に少し笑みを浮かべて言った。 「こら〜っ! ぼくちゃんを無視するな〜!」 少し離れた所でラッシードが騒いでいた。 「あのさ、さっきから聞こう聞こうと思ってたんだけど、あれ誰?」 グランは離れてくれと言っても聞かないフィーユと、腕組みをして黙っているグロードに聞いた。 「ラッシードとかいうらしい。お前のそっくりさんだとよ」 「はぁ? そっくりさん?」 グランが驚いて聞き返す。 「ホントに似てるのよ…」 やっと離れたフィーユが言った。見るともう泣いてもいない。切り替わりの早い奴だ。 「どれどれ…」 グランはバッグの中から双眼鏡を出してその人物を見た。 「うわああっ! ボクがもう1人いるっ!」 グランはこれ以上ない程の大声で叫んだ。そりゃ自分にそっくりな人が居たら驚くだろ。 グランはこれは目の錯覚かとも思った。しかしそうでもないらしい。 「フィーユ。アイツ…幻って事は無いよな?」 双眼鏡から目を離したグランが言った。すると、 「ぼくちゃんは幻なんかじゃな〜い!」 とか何とか叫びながら走ってきた。結構速い。 「ふ〜ん、キミがホンモノか〜。モテなさそうな顔してるねぇ〜」 それを聞いたグランは怒る…ハズなのだが、その前に怒った者が1名。 「あーのーねー! グランの悪口言う人はこの私が許さないんだから!」 グランがラッシードに文句を言うより早くにフィーユが言った。 「私みたいな可愛い子に好かれてるグランは、絶対ぜーったい、幸せ者よ!」 あのさ、フィーユ。それはナルシストと言うんじゃないの? そうツッコミしたくなったグランだったが、言うのは止めた。 言ったらこの後どうなるか想像もつかない。 ま、確かにフィーユは凄く可愛いんだけどさ。 「…もういい。聞き分けが悪い人には私がおしおきしてあげる」 「へ〜。ぼくちゃんにポケモンバトル挑むっていうのか〜い?」 「言うわよ。もちろん」 フィーユは当然の事の様に言った。 「やめとけよ。あんな感じの奴に限って、実はとんでもなく強かったりする事だってあるんだぜ?」 グロードが小声で言った。 「それは百も承知よ、グロード君。でもね、私はグランの悪口言った人は許しておけないの。分かって」 グロードはでもよ、と言った後グランに、 「止めなくて…いいのか」 と言った。 「まあ、止めたりはしないよ。ただ、無理だけはするなって事だけだ」 それだけ言って、グランはあ、そうだと前置きして、 「バトルするならさ、審判はボクにやらせてくれよ。やった事ないんだ」 と申し出た。 「いいわよ。是非」 「オッケ〜」 2人の了解を貰い、グランは礼を言った。 「それではこれより、フィーユVSラッシードのポケモンバトルを開始する。両者、準備はいいか?」 グランが2人を交互に見た。 「私の方はオッケー!」 「ぼくちゃんのポケモンも大丈夫さ〜」 2人の答えが返ってきた。 「随分些細な事でバトルになっまったなぁ…」 グロードがポツリと呟いた。 第四十四話終わり 第四十五話に続く… |
リクト | #13★2004.07/03(土)20:29 |
---|
第四十五話 復活のマツブサ フィーユがラッシードにバトルを挑んだのと同じ頃。 マグマ団の方でもある変化が起きていた。 マグマ団基地会議室… 「ホムラ様。最近、何もアンノーンの情報が掴めませんね」 団員の1人が言った。 「このナナシマはしらみつぶしに探した。それでも無理だったか…」 ホムラは呟く。 「どーする? このまま何もしないでいるつもり?」 カガリが聞いた。 「マツブサ様が捕まって結構経つ。マツブサ様が居れば…」 「誰だ。私を呼ぶのは」 ホムラ、カガリ、そして団員達の目が一斉に声の方に注目した。 「マ…マツブサ様…」 そこに立っていたのは、捕まったハズのマツブサだった。 「貴様ら、私が居なければ何ひとつできないのか」 「そ、それよりマツブサ様。どうやって警察からお逃げに…」 「黙れっ…」 そう言うとマツブサはホムラに向けて手を広げた。 すると、マツブサの手が黒いオーラに包まれた。 「なっ…何だ…?」 何と、ホムラの体が空中に浮かんだのだ。 「私が居ない間…何をしていたのだ!」 マツブサは力を込める。 「ぐ…ぐああっ…」 ホムラを包み込んでいるその黒いオーラはいかにも彼を苦しめているようだった。 「お…お許しを…マツブサ様…」 ホムラは苦しみながら、うめく様に言った。 「次は無い。覚悟しておくんだな」 「は、はい…」 ホムラはそれだけ言い、少し席を外しますと言って1人会議室を出た。 ホムラは考えた。何故あの方が「闇の力」を使えるのかが。 そして、一瞬だけこう思った。あのリーダーにはついて行けない。 ホムラは言いようもない恐怖に怯えた。彼にとって、怯える事は滅多に無い事だったのだが。 これ以上リーダーがあんな事をするとは見るに耐えない。 以前のリーダーは、我々の事を思ってくれる優しい方だったのに。 「闇の力」に魅せられ、暴走してしまったのだろうか。 こんな時、あの時出会ったガキ共はどうするのだろう。 仲間が「闇の力」に染まったら、きっと命懸けで救うだろう。 いっそ、リーダーを救う為にあのガキ共の力を借りてみようか… いや、そんな事をしたら、マグマ団としてのプライドが許さないだろう。 しかし、リーダーを助けたい。きっと他の団員達もそう思っているハズだ。 「くっ…俺は一体どうすればいいんだ…」 よろめきながら前進するホムラは、心境を呟いた。 「力が…力がどんどんみなぎって来るのを感じるぞ…これが「闇の力」か!」 会議室で、マツブサはその強大な力を実感していた。 そこには、その力に操られたかの様に、ホムラを除く団員達全てがマツブサに強い忠誠の意を現していた。 もちろん、今までも忠誠を誓っていたが、それを軽く上回っている。 その力の影響下に置かれていないマグマ団は、ホムラ1人だけだった。 その頃… 「準備はいいな?」 グランが2人を見た。 「オッケー…あれ?」 フィーユが何かに気付いた。 ここから離れた地帯に、暗雲が立ち込めている。 「どうした?」 グランが不思議そうに聞いた。 「あ、あれは…」 突然フィーユは震えだした。 「だからどうしたんだっ!」 グロードが強い口調で聞いた。 「もしかして、あれは『闇の力』なの…? 封印されていたハズなのに…」 「フィーユ。『闇の力』って、何だよ?」 グランが聞く。 「文字通り、闇で覆い尽くす力よ。人間をいい様に操る事だって出来てしまうの」 フィーユが声のトーンを落として言った。 「その話、ぼくちゃんも聞いた事あるよ〜」 さっきまで黙って聞いていたラッシードが言った。 「お前も…知っているのか?」 グランが聞き返す。 「どうやら、大変な事になっちゃうみたいだな〜」 ラッシードは言った。軽い口調ながら、その目は真っ直ぐに暗雲を見つめている。 「聞いたところによるとね〜、前にも同じ様な事あったんだ〜」 「同じ様な事!? って事は…」 「その封印を解いた奴が居るって事か!」 グロードが叫ぶ。 「そして、それを再び封印したのが…」 フィーユはそこまで言って黙った。 「まさか…お前の母親、なのか?」 グランの問いに、フィーユは黙って頷く。 そして、封印を解いた人物を考えてみると、心当たりが無くもない。 「多分…マグマ団のホムラ…」 グランがそこまで言った時、ポケギアが鳴った。 「誰だろう…」 『グラン! 聞こえるか?』 「父さん!?」 電話してきたのは、グランの父親、クロト警視だった。 『マグマ団リーダーのマツブサが脱獄した。そっちに、何か変化は無いか?』 「…大ありだよ、父さん…」 『どうした!?』 「いや、別に…」 グランは「闇の力」の事を切り出せずに、そのまま黙った。 『…分かった。状況が変わったら教えてくれ』 グランは「分かった」とだけ言って電話を切った。 「あれを…何とかしないといけないな」 グランは暗雲を眺めて言った。 「ぼくちゃんもやる時にはやるよ〜。放っちゃおけないし」 「仕方ないわ。バトルはお預けよ」 「ひょっとして、脱獄したマツブサが封印を…」 「その可能性は十分考えられるな」 「どっちにしても、早く何とかしなきゃ!」 「何とかするって言ってもさ〜、情報集めない事には何もならないと思うんだけど〜」 ラッシードの言う通りだ。「闇の力」については、対策などの情報が分からない。 「まずは情報収集だ。この辺りの人に色々聞こう」 グランが言い、 「この際だ。4人で手分けした方が早いだろう」 グロードが提案し、他の3人もそれに賛成した。 「じゃ、行動開始!」 そうグランが言うと、彼らはそれぞれ情報収集のために散らばった。 第四十五話終わり 第四十六話に続く… |
リクト | #14★2004.07/03(土)20:35 |
---|
第四十六話 風の力を守る者・クロック 手分けして情報を収集する事にしたグラン達。 ラッシードは、西に向かって進んでいた。 「どこから探せばいいんだろうな〜」 ラッシードは辺りを見回した。こういう事は現地の人に聞いてみるのが一番早い。 だが、中々とっかかりが掴めないでいた。 「どうすればいいんだろうな〜」 ラッシードは考えた。情報を集めない事には、あの「闇の力」には対抗出来ない。 その時、後ろに気配を感じた。 「決めた。ワシはお前に風の力を託す事にする」 振り向いたラッシードの前に立っていたのは、1人の少年。 少年なのに何故「ワシ」って言うんだろう。ラッシードは不思議がった。 「あのさ〜、風の力って、何だ〜い?」 「お前、軽い喋り方するな。ワシは風の力を守る者なんだ」 やっぱり軽いと言われた。グラン達にも言われたし、慣れてはいるが。 「さっきの質問に答えよう。風の力ってのは、『闇の力』に対抗出来る力の1つだ」 「闇の力」に対抗出来ると聞いて、ラッシードは目を輝かせた。 「そ、それは本当なのか〜い?」 「本当だ。ワシが案内してやるよ。付いて来な」 少年は歩き出す。ラッシードもその後を追った。 「ワシはクロック。さっきも言ったけど、風の力を守る者だ」 「でも、ぼくちゃんと同じ位の年頃じゃないか〜」 「お前、軽い上に一人称まで変わってるな…」 ラッシードは黙った。コレは癖なのに。 「説明しておこう。この島に伝わっているのは、風の力の他に、炎、水、雷があるんだ。で、お前が授かるのが『風の力』というワケだ」 「風の力だけじゃ、対抗出来ないのか〜い?」 ラッシードが聞いた。 「とてもじゃないが、風だけでは力が足りない。他も必要だ」 「ふ〜ん…」 2人はしばらく山道を歩き、そして倉庫の様な所に付いた。 「ここだ」 クロックが言う。 ドアを開けたラッシードが、 「ホントに〜? ただのガラクタ置き場に見えるんだけど〜?」 「ま、見てろって。行け、カラカラ!」 「カラ〜ッ!」 「カラカラ出してどうするんだ〜?」 ラッシードが聞いた。 「カラカラ。頼む」 「カラ…カラ!」 カラカラは型らしき窪みに自分が持っている骨をはめた。 ゴゴゴゴゴゴコゴ… 「な、なんだ〜?」 ラッシードが驚いて足元を見る。 すると、骨をはめた台座が後ろに下がり、光か発せられた。 ラッシードはたまらず目をそらす。 光が収まった時、緑色の球体が現れた。 「これが、風の力の源だ」 「カラッ!」 「これが…!」 『風の力の継承者、ラッシードに力を与える!』 球体がラッシードに呼びかける。 「…何も起きないよ〜?」 ラッシードがクロックに言った。 「もう力は入ってる。それを使いこなせるかどうかは、お前次第だ」 「カラ…カラ!」 「何だか、実感沸かないんだけどな〜」 ラッシードは首を傾げた。 「なら、試してみればいい。風の力で、その大岩を砕いてみろ」 「よ〜し! やってみるよ〜!」 ラッシードは大岩の前に立つ。 「風の力…『ラッシュ・ウインド』ッ!」 バヒュウウウウウウウ! 大岩は一発で粉々になった。 「す…凄いよこれ〜!」 「いや、何より凄いのは、いきなり技の名前を思いついた事だと思うが…」 「何となく思いついた名前を言ってみただけなのにな〜」 「カラ…」 クロックのパートナー、カラカラもトレーナーと同じ意見らしい。 「と、とにかく、どうやら『闇の力』の解放が近づいているみたいだから、気をつけろ」 「ご親切にどうも〜。じゃ、ぼくちゃんはこれで〜」 そう言い残し、ラッシードは元来た道を戻っていった。 「カラカラ…アイツは凄く軽い奴だったとワシは思うんだがねー」 「カラッ!」 カラカラもそれを肯定した。 風の力を手にしたラッシード。 これで闇の力への対抗策が1つ手に入った。 残るは3つ。手に入れる事は出来るのか!? 第四十六話終わり 第四十七話に続く… |
リクト | #15☆2004.07/04(日)15:42 |
---|
第四十七話 水の神殿と水の力 風の力を手にしたラッシード。 その頃、東に向かっていたフィーユは… しばらく移動していると、フィーユの目の前には水に囲まれた町があった。 「すご〜い! 水だらけね〜!」 道路の数は少なく、水路が主な移動手段に使われているようだ。 天気が晴れていればさらに美しい場所に見えるのだが、現在は「闇の力」の影響で水は澄んでいない。 「っと、町に見惚れている場合じゃないわね…」 フィーユは本来の目的を思い出し、町の探索を始めた。 「それにしても…水路使えないと移動区域って結構制限されちゃうのよねぇ…」 フィーユは路地を歩きながら呟いた。彼女は水ポケモンを持っていないので、水路を探索するまでは出来ないのだ。 「何か、対抗策が書いてある資料か何かがあればいいんだけどな…」 フィーユは上空を見た。そんな資料があれば苦労しないだろうが。 「はぁ…中々大変よね」 そう言うとサーナイトを出した。 『どしたの?』 サーナイトがテレパシーで語りかけてくる。 「何か、情報か何かを感じない?」 フィーユが聞く。 『その気配があったら、ワタシはとっくに気付いてるって』 大体予想通りの返事が返って来た。 「やっぱりねー」 フィーユは「何か感じたら教えて」と言ってサーナイトをボールに戻した。 「あの…」 不意に声をかけられた。 声をかけたのは、青いワンピースに長い白のスカートをはいた少女。 その隣にはその子のパートナーらしきポケモン、ハネッコの姿が。 「えっ? 私?」 フィーユは自分を指差して聞いた。 「他に誰がいますか?」 少女は苦笑して答えた。言われてみれば、この路地には自分とこの少女しかいない。 フィーユは少し自分が恥ずかしくなった。 「私はユリカといいます。この町に伝わる『水の力』の守護者です」 「水の力…って?」 フィーユが聞いた。 「はい。『闇の力』に対抗出来る、4つの力のうちの1つです」 「『闇の力』に対抗出来る力!?」 フィーユは驚いて聞き返した。その後、「あっ、でも…」と前置きしてから、 「町に伝わるって言ったわよね? そんな大事な事、私なんかに話してしまって良かったの?」 フィーユが聞くと、ユリカは微笑んで、 「はい、大丈夫です。だって、貴女は『水の力』の継承者なんですから」 フィーユとユリカは、町で一番大きな神殿の入口手前にある、階段に座っていた。 「私はフィーユ。今は…」 自己紹介の後、そこで彼女は言葉を切った。 「『闇の力に対抗出来る策を探している』んですね?」 ユリカが確認する様に言った。 「どうしてそれを…?」 「貴女を一目見た時に気付いたんです。『この人は闇の力と戦おうとしている』って」 フィーユは、この鋭い洞察力に驚き、そして感心した。 「今まで、私が見てきた人の中で、『水の力』を継承すできる様な人は現れなかったんです。でも、貴女なら…」 ユリカは、フィーユを真っ直ぐに見つめる。 「私は、このハネッコと一緒に、『水の力』を守っているんです」 そう言って、ユリカはハネッコの頭を撫でた。 「ハネッ!」 ハネッコも笑ってそれに答える。 ユリカは、そうだ、と前置きし、 「貴女は…フィラネスさんの娘さん、ですね?」 といきなり聞いた。 その名を聞いた時、フィーユの顔は驚きに包まれていた。 「ど、どうしてその名前を…?」 「私の母が以前フィラネスさんにお会いしているんです。その時撮った写真を見せてもらって…貴女のその目が、フィラネスさんにそっくりだったので、もしや…と思ったんです」 「やっぱりあなた、凄い洞察力ね」 「それ程でもないですけど…」 ユリカは照れ笑いをした。 「さあ、そろそろ『水の力』を貴女に与えなければ…」 そう言うとユリカは、神殿へと歩いて行った。フィーユもそれに続く。 神殿の中は、物凄く広かった。何と比較すれば良いのか想像もつかない程だ。 「ハネッコ。そこのスイッチで、照明お願い」 「ハネッ!」 ハネッコは照明スイッチに向かっていった。風格漂う神殿なのに、照明だけスイッチになっているのは、どうも不思議な気がするが。 「さあ、フィーユさん。真ん中に立ってください」 「分かったわ」 言われた通り、フィーユは真ん中に立つ。そこには、何か球体を入れる窪みがあった。 「そこに何かが入るんですが…その何かが分からないんです…」 ユリカが言う。フィーユは、 「大体見当は付くわ。多分コレね」 そう言って『藍色の珠』を取り出して窪みにはめた。 コトッ… 藍色の珠を置いた瞬間、床の模様に沿って光の線が発せられた。 「何が起こったの…?」 フィーユは立ち上がって呟く。 するとラッシードの時と同じ様に(この時のフィーユはラッシードが風の力を得たことは知らない)青い光の球体が現れた。 「これが…『水の力』なのね…」 「ハネ…」 ユリカが呟く。ハネッコもそのあまりの美しさに声を失っている。 『水の力を…継承者フィーユに!』 青い光の球体は、そう宣言すると、神殿一帯に強力な光を発した。 「うくっ…」 そのあまりの激しさに、フィーユは思わず目を反らして、そして閉じた。 光は数秒すると自然に消えた。 フィーユははめた藍色の珠を拾い上げ、 「ね、これでいいの?」 フィーユが後ろに立っているユリカに聞く。 「ええ。もう『水の力』は貴女の物です」 「ハネッ! ハネッ!」 ユリカは穏やかな笑みを浮かべ、ハネッコもまた、何度も飛び跳ねて継承を祝福した。 「ありがとう! 私…『闇の力』なんかには絶対に負けない!」 「その意気ですよ! フィーユさん!」 「ハネッ!」 ラッシードの『風の力』に続き、『水の力』を手にしたフィーユ。 残る力は、『炎の力』と『雷の力』だ! 第四十七話終わり 第四十八話に続く… |
リクト | #16★2004.07/05(月)18:15 |
---|
第四十八話 湖の隠し通路と炎の力 フィーユとラッシードは、それぞれ『水の力』と『風の力』を手に入れた。 その頃、南に進んでいたグランは… グランは、道なりに南方向に進んでいた。 歩いている場所は、左右を見渡すと、完全なる森。 下手をすると、道に迷いそうだ。 「本当にこんな所に情報あるのかな…」 考えながら歩くグラン。 何時しか森の出口に差し掛かっていたのだが、下を向いて考えながら歩いていたので、前をよく見ていなかった。 森の出口を出た時… ドンッ! 「うわあっ!?」 「きゃあっ!?」 どうやら、ぶつかってしまった様だ。 「いったぁ〜い…」 「ゴ、ゴメン! 怪我無いか?」 彼がぶつかったのは、おそらく自分と同じか、それより少し年上の子だった。 上はTシャツ、下はズボンと、動きやすそうな格好をしている。 「うちは大丈夫。そっちは? 怪我は無い?」 ぶつかった原因はボクがよそ見していたからなのに、こっちの心配もしてくれるのか…? グランはこの少女の優しさに感心した。 「ホントにゴメン。ちょっとよそ見してた」 「その様子、何か考え事していたみたいね」 グランはちょっと驚いた。まさしく図星である。 「キミの…名前は?」 「アキナ。で、あなたは?」 「うん、ボクはグランだ」 お互いに自己紹介する。 「グラン君ね。よろしくっ!」 そう言ってアキナはさっと手を差し出した。 「…?」 「あれれ? ひょっとして、握手求められた事ないとか?」 アキナは怪訝そうな顔をして聞いた。 「いや、そういう事じゃなくて、いきなりだったから、ちょいと驚いただけだよ」 グランはその手を握った。 「ところで…上空見て気付かない…事ないよね」 「あの雲の原因を、知っているのか?」 グランが聞くと、アキナは頷く。 「『闇の力』の影響よ」 「それを知っているのか?」 グランの問いに、アキナは当然よ、と言って頷く。 「何たってうちは、『炎の力』の守護者なんだから!」 「いや…いきなり言われたってよく分かんないんだけどな」 「あ、説明不足だった?」 「いや、まだ何も説明受けてない。キミって結構そそっかしい子だな」 「…よく言われるわ」 グランは「あ、そうなんだ」と言って、本題に入る事にした。 「で? その『炎の力』って一体何だ?」 「『闇の力』に対抗するのに必要な、4つの力のうちの1つよ」 「『闇の力』に対抗出来るのか!?」 グランは驚いて聞き返した。 「そう。で、物は相談なんだけど…」 「…?」 グランがアキナの方を見た。 「『炎の力』を、継承してほしいの」 「な、何だって―――!?」 グランは今言われた事に対して、本気で驚いた。何だって自分みたいな奴が。 「はーい、ごちゃごちゃ言わないで、一緒に来る!」 アキナはグランを強引に引っ張っていった。 「痛い痛い分かった! 分かったって!」 「『炎の力』は、この湖の何処かにあるわ」 「探すのがいかにも大変そうなんだけどな…」 グランがぼそっと言うと、 「そうね。水ポケモンが居ないと、探すのは大変かもね」 アキナはいたって普通の口調で言った。 「あ、まさか水ポケモン持ってないとか?」 「見くびるなよ。ボクにはコイツがいるんだっ!」 グランはモンスターボールを選び、そして投げる。 「行けっ、ギャラドス!」 「ギャラァァッ!」 「あれ? あなたもギャラドスを?」 「は? 「あなたも」って?」 グランが聞く。すると、 「こういう事よ」 それだけ言うと、アキナもボールを投げた。 「ギャアアアス!」 アキナが出したのは、グランのギャラドスに負けず劣らずの迫力を持つギャラドスだった。 「同じポケモン持ってるって、結構親近感沸くのよね。さ、湖の中を探索するわよ」 「はっ? 中?」 「あれれ? ひょっとして、泳げないとか?」 その言葉に、グランはカチンときた。 「…泳ぎにはかなり自信がある」 「探索するって言っても、服濡れるの嫌なのよね…」 アキナが湖面を見ながら心配そうに言った。 「そういう事なら…ギャラドス!」 ギャラドスは頷き、口からかなり大きな泡を1つ出した。 泡は、ゆっくりとアキナの方に向かって行く。 すぐに、泡はアキナを包み込んだ。 「きゃっ! …何これ?」 「ボクのギャラドスの特殊能力さ。その中入ってれば濡れないよ。勿論呼吸も大丈夫」 「あ、ありがと」 「まあ、正直言ってボクも濡れたくないんだけど」 「あらら…」 アキナは呆れた様に言った。 「ちなみに、水中移動する時は、その泡の中で泳げばいいから」 そう言うと、グランもギャラドスの泡の中に入った。 目当ての場所を探し出すのはそんなに難しくなかった。 湖底に何かの入口がある。 「あの中かしら?」 「だろうね。いかにも何かありそうな所だ」 それもそのハズ。湖底にあんな大きな穴あったら誰だって怪しいと思うだろう。 「よし、入ろう」 2人の人間と2体のポケモンは、湖底の穴に入っていった。 「随分長い水中水路だな」 「そりゃ、『炎の力』が封印されているかも知れない場所だしね」 「いくら何でも長すぎる。まだ着かないのか?」 グランは苛立っている。 「ギャラッ!」 「どうした? ギャラドス」 グランのギャラドスが何かに気付いた様だ。 グランがよく目を凝らしてよく見る。 「あ、出口が近いみたいだ。…あれ? アキナ?」 グランが後ろを振り向く。 「うわ。寝てるよ…」 何と、泡の仲で寝ていたのだった。 「しょうがないなぁ」 グランは少し戻ると、アキナが入っている泡に自分の泡を付けた。 「よし。これでオッケー…と」 泡を合体させ、そのまま連れて行くようだ。 「さて…と。起きろ―――っ!」 「えっ? あ、うち、ひょっとして寝てた?」 「ギャラ…」 「あ、あまりにも景色が綺麗だったから、つい…」 アキナのギャラドスは何度か頷く。 そしてグランも黙って頷く。そしてアキナに聞こえない様に呟いた。 「…寝ぼすけ」 着いた所は、洞窟の様な所だった。 正面には、フィーユの時と同じ様に(この時のグランは、フィーユが『水の力』を手に入れた事は知らないが)球体を入れる窪みが。 「こういうパターンは、大体想像が付くんだよな…っと」 グランはそう言いながら『紅色の珠』を窪みに入れる。 すると、これまたフィーユの時と同じ様に(この時のグランは…以下略)光が発せられる。 そして、またもや例によって今度は赤色の球体が現れた。 『我の持ちし炎の力を…継承者グランに!』 「す…すっげえ…」 「何だか実感沸かないんだよな。力を貰ったっていってもさ」 グランは紅色の珠を取り外しながら言った。 「最初のうちは誰だってそうよ。多分」 「多分、ねえ… はは…」 『炎の力』を手にしたグラン。 残るは『雷の力』だけ。そしてグロードは!? 第四十八話終わり 第四十九話に続く… |
リクト | #17☆2004.07/06(火)14:49 |
---|
第四十九話 雷雲地帯と4つ目の力 グランはアキナに導かれ、『炎の力』を。 フィーユはユリカに導かれ、『水の力』を。 そしてラッシードはクロックに導かれ、『風の力』を手に入れた。 さて、後1人、グロードはというと… 北に向かっていたグロードは、情報収集をして…いなかった。 彼は、北の町にあるオープンカフェで、食事をしていた。 「このカフェの料理、凄く美味い。オレだけ食ってるってのも、何か悪い気がするけど」 …悪いと思っているなら、何故食うのだろう。 「腹が減ってたら、存分に行動出来ないからな」 グロードは再びテーブルの上にある料理を食べ始めた。 すると突然、 「オラァ! どけぇーっ!」 グロードの方に猛スピードで駆けて来る人物がいた。 「な、なんだぁ〜!?」 ドカッ! ドンガラガッシャ〜ン! 「うわあっ! オレの昼飯がぁっ!」 さっきまでグロードが食べていた料理は、見るも無残な姿になっていた。 すると今度は別の声が。 「アイツは泥棒だ! 誰か捕まえてくれぇっ!」 叫んだ人物は、ドロボーを追いかけている。 どうやら、グロードの料理を台無しにしたのは泥棒らしい。 「こんにゃろー! よくもオレのランチタイムを台無しにしてくれたなっ! 待ちやがれっ!」 グロードは走って追おうとしたが、止めた。 走って追いかけちゃ、振り切られるかも知れない。 「エアームド! アイツを追うぞ!」 グロードはエアームドに言った。 「エアッ!」 「よし、行くぞ!」 「へっ。この俺を捕まえられるもんかい」 泥棒は勝ち誇った様に言った。 「エアームド! 『まきびし』だっ!」 「エアッ!」 エアームドは羽を振り、泥棒の進行方向にまきびしを撒いた。 泥棒はそれに気付かず、それを踏んでしまった。 「いてっ!」 泥棒は悲鳴を上げる。そのスキに、 「さぁ、観念しな!」 グロードは泥棒を捕まえていた。 「くそぉ…」 「そうだ、オレの昼飯、弁償してくれよな」 「ふぃ〜。食った食った…」 グロードは改めて昼食を食べ、ついさっき平らげた所だった。 自分が泥棒を捕また事で感謝されたので、今のグロードは先ほどとはうって変わって機嫌がいい。 「やあ。キミはさっきの」 声を掛けられてグロードは声の聞こえた方に向いた。 立っていたのは、いかにも服装に神聖な感じが漂う男だった。上着が膝あたりまである。 「僕はルイ。コイツはパートナーのゴルダックだ」 「ゴルダッ!」 ルイと名乗った男は、自分の紹介の後ゴルダックの紹介も忘れずにした。 「キミが泥棒を捕まえてくれたおかげで、大事な資料を奪われずに済んだ。感謝する。…キミの名は?」 「ああ、オレはグロード。ところで、その資料って一体…」 「キミになら教えても大丈夫そうだ。『闇の力』に対抗出来る力の1つを記した資料…」 「闇の力に対抗出来る資料だってぇ!?」 グロードは大声で叫んだ。 「声が大きいよ… ん、ひょっとしてキミは…」 「あー?」 「その目… 僕が守りし『雷の力』を継承するのにふさわしい目だ」 「『雷の力』って、何だよ」 「『闇の力』に対抗するのに必要な力のうちの1つだ。ただ、これ1つじゃどうにもならないけどね。しかも今、闇の力が強まっているな」 ルイが説明した。そして上空を見る。 「で、その力はどうすれば手に入るんだ?」 グロードが聞く。 「ちょっと危険な所にあるんだ。ここから少し離れた、雷雲地帯にあるんだよ…」 「雷雲地帯…か」 「危険を冒してでも行きたいと言うのなら、案内するよ」 グロードとルイは、雷雲地帯に差し掛かった。 そこでは断続的に落雷が発生していた。 「あんたの言う通り、これは確かに危険だな」 「だろ? こういう場所では、僕のゴルダックは出せないんだ。水タイプは電気の技に弱いからね」 ルイが言った。 「おっ、あれは何だ?」 グロードは、やや離れた所に聳え立っている塔を指差した。 「あそこが、『雷の力』が封印されている塔。通称『雷の塔』さ」 「何かまんまだな」 グロードは苦笑した。 「へえ。中は結構明るいんだな」 塔の中に入ると、開口一番グロードが言った。 「この塔の照明は、この辺り一体の雷でまかなわれているからね」 ルイが説明した。 「よし。建物の中なら、ゴルダックを出せるな。出て来い!」 「ゴルダッ!」 「何か気配を感じたら、頼むよ」 「ところで、この塔は何階まであるんだ?」 「確か…30階建てだったと思うけど」 「…しんどっ…」 グロードがぽつりと言った。 「心配しなくていいよ。僕のエスパーポケモンがテレポートで最上階まで連れていってあげるからさ」 最上階は、地上以上に雷が飛び交っていた。 「何だ、ここは… 地上よりすげぇ…」 「当然だよ。『雷の力』がここにあるんだからね…」 「下手するとオレ達まで危ないぜ」 「早く『雷の力』を手に入れるんだ! そうすれば雷は鎮められる」 「よっしゃ!」 グロードは中央まで歩いていった。いつ落ちてくるか分からない雷に細心の注意を払いながら。 「よし… 中央だ…」 すると、例によって光が発せられる。 そして現れたのは、黄色の球体。 「な、何だぁ!?」 『雷の力を、グロードに与える。受け取るがよい』 「雷の力って、どんな事が出来るんだ?」 「まあ、『雷の力』だから、雷を自在に操れるよ。但し、限度があるけど」 「成る程な。…気に入ったぜ!」 「さあ、有効に使って、『闇の力』を打ち破ってくれよ」 「言われなくてもそうするぜ!」 『雷の力』を手に入れたグロード。 これで4つ全てが揃った事になる。 『闇の力』との対決まで、後少し… 第四十九話終わり 第五十話に続く… |
リクト | #18☆2004.07/06(火)16:02 |
---|
第五十話 ロコンとバシャーモ(前編) グラン達4人は、それぞれ力を手に入れた。 そして、情報収集の前に集まった所に集結した。 「まさか、みんなそれぞれ力を手に入れるとはな」 グランが言った。彼は『炎の力』を手に入れている。 「でも、私達だけで、『闇の力』に勝てるのかな…?」 そんな弱気な事言ってるのは、フィーユ。そんな彼女が手に入れたのは『水の力』だ。 「あはは〜。何だっていいじゃないか〜」 相変わらず軽いラッシード。『風の力』を持つ。 「あのな、フィーユ。戦う前から弱気な事言ってどうするよ」 そうフィーユにツッコミを入れたのは、グロード。『雷の力』を持つ。 「でも、私達が持っている『力』だけじゃ、どうにもならないと思うの。ポケモン達にも協力してもらわないと」 フィーユは自分の主張をグロードにぶつけた。 「とにかく、『闇の力』は拡大を続けている。早く何とかしないと」 そう言うと、グランはモンスターボールからバシャーモを出した。 「バシャーモ。マグマ団との、正確には『闇の力』との決戦が近い。気を引き締めていくぞ!」 「バシャッ!」 バシャーモはそれを聞いてやる気を倍増させたのか、自分で格闘の訓練を始めた。 すると、突然地鳴りが起こり、大きな揺れが4人を襲った。 「きゃあ! 地震!?」 「フィーユ! 落ち着け!」 「あははは〜。揺れてるよ〜」 「ラッシード! 悠長な事言ってる場合かっ!」 グランとグロードは落ち着いて対処しようとするが、フィーユは混乱し、ラッシードは相変わらず軽い。 「そうだ、バシャーモ! 大丈夫か!?」 グランがバシャーモの方を見ると、揺れる地面の上で必死にバランスを取っていた。かなり揺れが強い。 すると、バシャーモの足元に亀裂が走り、そのまま下に落下していった。 「バシャーモ!」 グランが近づこうとするが、激しい揺れで近づく事すら出来ない。 間に合わず、バシャーモの落下は止められない。 「バシャーモ―――ッ!」 (ピンポンパンポーン←効果音)注・ここから先はポケモン語(?)ですが、分かり難いので標準語で表記します。 「くそっ。かなり下まで落ちちまったな…」 ようやく止まった落下の後、バシャーモは呟く。 「早く、グランの所に戻らなければ…」 バシャーモは、崖を登ろうとしたが、あまりに急なため、登る事は困難だった。 「仕方が無い。別ルートで登るしかないようだな」 バシャーモは意を決し、進み始める。 すると、どこからか、 「誰かいませんか?」 と声が聞こえた。 「誰だっ!」 バシャーモは身構える。 「ここです。あなたの左の方の草むらの中です」 バシャーモはその場所を探してみた。 「ここか」 バシャーモは草むらを掻き分けて声の主を探した。 「あ、助かりました…」 そこに居たのは、左足を怪我しているロコンだった。 「怪我をしているな。少し待っていろ」 バシャーモは、非常用にと携帯しているオボンの実をロコンに渡した。 「とりあえず、コレを食べろ。腹減っているんだろう?」 「あ、ありがとうございますっ!」 ロコンは礼を言うと、すぐに食べ始めた。 「しかし、お前は何だってこんな所に」 バシャーモがロコンに聞いた。 「実は、先ほどの地割れに巻き込まれたんです。怪我してしまって、何とかここまで来たんですが、お腹が空いて動けなくなってしまったんです」 「…」 バシャーモは黙った。地割れに巻き込まれたって、オレと同じじゃないか。 「あなたいい方です。私、しばらくあなたに付いていこうと思うんですけど、いいでしょうか?」 「断る」 バシャーモはそっぽを向いて言った。 「ええっ? 怪我をしているポケモンを見捨てて行くって言うんですか?」 「見捨てはしない。オレがトレーナーと合流するまでは」 「えっ、トレーナーさんがいるんですか?」 「居る。それがどうした」 「いなかったら、私もアタックしていたんですけど…」 「何の話だ」 ロコンはため息をついた。このポケモンさん、恋なんかには興味なさそう。これもトレーナーさんの影響なのかしら、と思いながら。 「へくしっ! うあ、風邪か…?」 グランが言った。 「ひょっとして、誰かがグランの噂でもしてるんじゃないの?」 フィーユが笑いながら言った。 「まったく、誰だ、ボクの噂をするのは。…へくしっ! うあー。バシャーモは居なくなるわ、風邪は引くわで散々だ…」 これは風邪なんかじゃないのに。 バシャーモは急ぐように、ずかずかと歩いていく。 「バシャーモさん。何でそんなに急ぐんですかぁ?」 ロコンが聞く。 「五月蝿い。オレはグランの所に戻って、やる事が沢山あんだよ」 「またまたぁ。照れてるんじゃないですか? 隠さなくてもいいですよ?」 ロコンが楽しそうに言う。 「オ、オレは…て、照れてなんかいないっ!」 バシャーモはムキになって叫んだ。 「そうですかねぇ? ま、そういう事にしておいてあげますよ♪」 「あーのーなー!」 「怒ってる所も、またいいですね、バシャーモさん♪」 「だーかーらー!」 コイツはなんだってこうなんだ。冷静というイメージのあるオレを怒らせてそんなに楽しいのか。 これではグランの所に戻るのに、相当掛かりそうだ。バシャーモはそう思った。 第五十話終わり 第五十一話に続く… |
リクト | #19★2004.07/06(火)20:14 |
---|
第五十一話 ロコンとバシャーモ(後編) 地割れによって崖から下に落ちたバシャーモ。 ひょんな事から同じ地割れに巻き込まれたロコンと行動する事に。 どうやらこのロコン、バシャーモに気があるようで… 「バシャーモさん。さっきより歩くスピード早くなりましたよ?」 「五月蝿い黙れ。もしそうなら、理由はさっき言った通りだ」 「やっぱりバシャーモさん、照れてるんですね♪」 ロコンが言った。何を考えているんだコイツは。 「オレがトレーナーの所に付いたら、ポケモンセンターに連れて行ってもらうんだな」 バシャーモが言う。 「何でそんなに冷たいんですかぁ?」 やっぱり口を出してきた。いちいち口出されると気が散って困るのだが。 「あのな、ロコン。頼むから口出ししないでくれ。気が散ってしょうがない」 「イヤで〜す♪ 話してると楽しいんだも〜ん♪」 「だめだこりゃ…」 「さて、バシャーモは何処行ったんだろうな…」 グランが双眼鏡で崖の下を見下ろした。 しかし、崖はかなり深く、一番下までは見えない。 「つーか、危ないだろ、この崖」 「うっかり足を滑らせたら、一溜まりも無いわね」 フィーユが崖をこわごわと見下ろしながら言った。 「うっかりじゃ済まないと思うんだがな…」 グロードが呟く。 「もう一度言う。オレの足を引っ張る事をするな」 バシャーモは今日何度目かになるセリフをロコンに言った。 「私は足引っ張ってるつもり、無いんですけどね〜」 「お前はそう思っていてもだな、オレにとっては引っ張られてるんだよ」 バシャーモは面倒臭そうに言った。 「バシャーモさん。私を見た時の第一印象は、どんなでした?」 「…正直に言おう。ガキに思える」 バシャーモは即答した。 「ええ〜!?」 「オレがお前に興味を持たせたいと考えているなら、もう少し大人になるんだな」 「そうですか…もう少し、ですか… じゃあ、もし私が進化したら、どうですか?」 「…考えてやってもいい」 バシャーモは少し考えてから言った 「止まれ」 歩いていると、突然バシャーモがロコンを止めた。 「どうしたんですか?」 ロコンが聞く。 「何かいるぞ」 そう言った瞬間、突然草むらからダーテングが現れた。 「ダーテングか… ロコン! 下がっていろ」 「え? あ、はいっ!」 「ダー…テンッ!」 なんと、ダーテングが増えたではないか。 「ちっ。『かげぶんしん』か」 分身したダーテングは、バシャーモを取り囲んでいる。 バシャーモは、分身したダーテングを見回し、どれが本物かと見極めようとした。 その間に、ダーテングは『タネマシンガン』で攻撃してきた。全方向から。 「くっ。本物は何処だ!」 しかし、なかなか本物を探し出せず、タネマシンガンを食らう。 「ちっ。このままでは…」 その様子をロコンが見ていた。 「バシャーモさんがピンチです… 何とかして助けないと…」 ロコンはどうすればいいのかと、そして何か効果的な道具が落ちていないかと辺りを探した。 すると、近くに赤く光る物体を見つけた。 そう。炎の石。 ロコンは意を決し、炎の石を持ってバシャーモとダーテングの方に駆け出した。 「バシャーモさん! 私に任せてくださいっ!」 「ロコン!?」 すると、ロコンが光に包まれた。 「お、お前、まさか…」 気付いた時には、バシャーモの前には、先ほどとは違った姿があった。 「いきますっ! 『ほのおのうず』ですっ!」 炎の渦は、瞬く間に分身したダーテングを取り囲む。 「ロコン… いや、キュウコン。お前…凄いじゃねえか」 バシャーモとキュウコンの前には、分身が解けて攻撃を受けたダーテングの姿が。 「…キュウコン」 「何ですか?」 「助かった。礼を言う」 「そんな、いいですよ。でも、どういたしまして」 注・ここから先は通常のポケモン語に戻します。 バシャーモがグランの元に無事に戻ったのは、それから1時間位してからの事だった。 「バシャーモ! 無事だったか」 「バシャッ」 バシャーモは頷いた。 「あら? キュウコンじゃない。どうしたの? この子」 フィーユが聞いた。 「こんな時に、ポケモンの言葉が分かればいいんだけどな…」 グロードが言う。確かにその通りだ。 「ひょっとして、バシャーモの彼女? バシャーモもやるわねぇ」 フィーユが言うと、バシャーモは思い切り首を振って否定した。 「ムキになる所が、ますます怪しいわよ♪」 どうやらフィーユの目はごまかせないらしい。 「じゃ、このキュウコン、私が連れていこうかな?」 フィーユが何気なく言うと、キュウコンは少し驚いた。 「トレーナーがトレーナーなら、ポケモンもポケモン。違う?」 フィーユがグランに聞いた。 「フィーユ。…意味が分からないんだけど…」 グランはそれだけ言うと黙った。 「鈍感な人には、分かり難いかもね」 「鈍感とは何だ、鈍感とは」 グランのバシャーモに気があるキュウコンを仲間に加えたフィーユ。 新たな戦力が入り、いよいよ『闇の力』との対決が始まる! 第五十一話終わり 第五十二話に続く… |
リクト | #20☆2004.07/07(水)16:25 |
---|
第五十二話 対決! 強大なる『闇の力』(前編) 「…ん、眠いな」 早朝、グランは目を覚ました。まだ誰も起きていない。普通ならまだ日が昇らない時間だ。 空はまだ暗雲に覆われている。 昨日グラン達は、キュウコンを仲間に加えた後に戦いに向かう予定だったのだが、怪我をしているキュウコンとバトル後のバシャーモの事を考慮して延期したのだ。 キュウコンの左足の傷も塞がり、バシャーモも疲れは取れている。 他のポケモン達のコンディションも完璧だ。 グランは一度、大きく伸びをした。 「…いよいよだな」 小さく呟く。 すると後ろから足音が。誰か近づいて来る。 「早いじゃねーか、グラン」 グロードだった。 「今日これからの戦いの事考えて、眠れると思うか?」 「ま、そりゃそうだ。…って、お前まさか…」 「ああ。その事考えていたせいか1時間しか寝てない」 グランは普通に言った。 「お前な。そんな寝不足なんかしてたら、体調に響くぞ」 「あー、大丈夫。多分」 「多分じゃねえよ。ま、フィーユに心配かけるんじゃねーぞ。オレはもう一眠りしてくる。体調崩して足手まといになりたかないからな」 グロードはそう言って自分の寝床に戻った。 「ボクがフィーユに心配かけてるワケないじゃないか…」 いや、思い切りかけているって。前だって個人行動して心配かけたんだし。 寝てもいられないので、グランは散歩に出る事にした。 朝の散歩というものは気分がいい。引っ越してくる前も朝の日課だった。 「これで晴れていたら、最高なんだけどな…」 呟きながらあるいていると、前方に何かを発見した。 それを見て、グランは息を飲んだ。 見覚えのある服装と顔の男。顔を横に向け、うつ伏せで倒れていた。 「お前はマグマ団の幹部…ホムラ!」 グランは声を上げた。 「おい、どうした!?」 グランの呼びかけに、ホムラはうっすらと目を開けた。 「お、お前は、あの時のガキ…」 「こんな所で何をしているんだよ、お前は。また悪さをしてるのか?」 「リーダーが…変わってしまった」 ホムラは起き上がりながら言った。 「リーダーが変わったって、どういう事だよ」 「…確かお前は、警察の人間の息子だったな。リーダーが逃げ出した事は知っているな」 「…ああ。だから、捕まえて父さんの所に引き渡す」 「今は、そんな場合ではない。リーダーが『闇の力』に魅せられ、暴走している」 グランは、闇の力と聞いて少し表情を変えた。 「という事は、『闇の力』の源は、マツブサに取りついているってワケか」 「そうだ。…ぐっ」 「とりあえず、ボク達が野宿している所に…」 「一応礼を言っておく。助かった」 ホムラが軽く頭を下げた。 「敵に頭下げられるのって、何か変な感じがするのよね…」 フィーユが言った。 「どうだ。少しは落ち着いたか?」 グロードが聞く。 「食う物食ったら少しは落ち着いた。この料理、誰が作ったんだ」 「私」 フィーユが答えた。 「腕はいい。コイツを旦那に持った男は幸せ者だぞ」 ホムラが言う。 「ところで、さっき説明してもらった事だけど」 「…リーダーは闇の力の影響で人が変わってしまった。他の団員達も、その力に操られてしまっている」 ホムラが少し声のボリュームを下げて言った。 「俺は一体、どうすればいいんだ…」 「…1つ聞きたい。もし、このままマツブサの所に戻ったら、お前はどうなる?」 「まず間違いなく…消される」 「そんなっ… 酷い!」 フィーユは口を両手で覆って言った。少し涙も浮いている。彼女はこんな話はかなり苦手なのだ。 「つまりは、お前はリーダーを助けてやりたいんだろう?」 グロードが聞いた。 「つまりはそういう事になる」 「…なら、今だけ手を組むか」 グランが何気なく言った。 「ちょ、ちょっとグラン! 何言ってるのよ! 敵と手を組むなんて!」 「今のアイツの目は、リーダーを助けるという決意があるから」 グランは、ホムラの方を見て「それでいいか?」と聞いた。 「了解した。リーダーを助けるまで俺はお前らと共同戦線を張る事にする」 少し考えて、ホムラが言った。 「みんな。それでいいか?」 グランがフィーユ、グロード、ラッシードに聞く。 「グランが、そう言うなら…」 「今回だけだぜ」 「どうでもいいや〜」 3人はそれぞれ意見を言った。ラッシードのは意見と言えるか分からないが。 「じゃあ、早速1つ頼みたい事が」 グランがホムラに聞いた。 「何だ」 「団員達の目を、引き付けておいて欲しいんだ。その間に、ボク達はマツブサの所に行って来る」 「分かった。団員達の方は任せろ」 ホムラが行こうとする。 「まさか、裏切るなんて事はないだろうな」 グロードが言う。 「…共同戦線を張ると一度決めた以上、約束は守る」 それだけ言い残し、ホムラは走って行った。 「いたぞ! 裏切り者ホムラを見つけたぞ!」 叫ぶ声が聞こえる。どうやらホムラは仕事を開始したようだ。 「何だよ。アイツは裏切り者のレッテルを貼られているのか」 グロードが言った。 「じゃあ、ボク達もそろそろ行動を開始しようか」 グラン達は、暗雲の発生している場所の中心に向かって進んでいた。 「おい、進むにつれて、だんだん雲の厚みが増してないか?」 グロードが聞いた。 「それほど、『闇の力』に近づいているって事さ」 グランが言う。 「闇の力なんてさ〜、このぼくちゃんが追っ払ってやるよ〜」 ラッシードが言った。相変わらず軽い口調で。 「そういやさ、ラッシードお前、軽い喋り方する割には、口数少ないよな」 グロードが言った。 「口数が少ないんじゃなくてね〜、キミ達がぼくちゃんの出番取っちゃうからだよ〜」 「それは作者に言え、作者に」 グランがラッシードの意見をスッパリ切り捨てた。 「ここだな。発生源は」 そこは、かなりの規模の大きさを持つ洞窟だった。 「随分大きい洞窟ね…」 洞窟の中は、かなり広い。 「オラ! 出て来い! マツブサ!」 グロードが洞窟内で怒鳴る。彼は元々声が大きいので、声が反射してかなり洞窟に響く。 「なるほど… ここまで来たのか。しつこいガキ共だな」 洞窟の一番奥で、マツブサが立っていた。 「見つけたぞ、マツブサ!」 「ところで、お前達は私に勝つつもりでいるのか?」 「当たり前の事を聞くな! 『闇の力』なんかには絶対負けない!」 グランが言い切った。 「ほぅ、成る程… だが…口先だけで言える程甘くはないっ!」 「うるさい!」 その瞬間、マツブサの体の中から黒いオーラが抜け出してきた。 「な、何が始まるんだ!?」 すると、何かの形となってグラン達の前に姿を現す。 マツブサは何かが抜けてしまった様にそのまま倒れこんだ。 「マツブサ様!」 ホムラが洞窟に入って来た。 「マツブサ様、ご無事で!?」 「ホムラか…私は一体…」 どうやら、元に戻ったようだ。 「おい、ガキ共! 後はソイツを思い切りやっつけるんだ!」 ホムラが叫んだ。そしてマツブサと洞窟の外へ。 「分かった!」 グランが答える。 そして、その黒いオーラの正体は… 「な、何あれ!?」 フィーユが空中に浮遊している何かを指差して言った。 「ぼくちゃんも見た事ないよ〜」 「いや、オレは噂に聞いて知っている。あれは確か、伝説のポケモンの一匹でもある…」 「ミュウツー!」 グランはその名を呼んだ。 『いかにも。私の名を知っているとはな』 「とにかく! こんな事止めるんだ!」 『フン。私の事を何も知らぬくせに』 ミュウツーはせせら笑った。 「とういう事だ」 グロードが聞く。 『それは…私を倒してから言うんだな! 行くぞっ!』 いきなりミュウツーは影で作り出した球体を発射してきた。 「くっ! 『シャドーボール』か!」 しかもこのシャドーボール、かなりの威力である。 「目には目を! ポケモンにはポケモンよ! ジュカイン、行って!」 フィーユはボールを投げ、ジュカインを出した。 「さあ、まずは『リーフブレード』よ!」 「ジュカッ!」 ジュカインは相変わらずの素早さでミュウツーに向かっていく。 そして、その草の刃はミュウツーを捕らえた。 「やった!」 『…どこを狙っているのだ』 「えっ!?」 突然聞こえたミュウツーの声。フィーユのジュカインが斬ったのは、ミュウツーではなく、移動した時の残像だった。 『遅い。…食らえ』 今度は青い氷の光線、『れいとうビーム』だ。 ジュカインはそれをまともに受け、一発で倒されてしまった。 「そんな…」 フィーユは驚きを隠せないでいる。 「どうやらコイツ、一筋縄ではいかないみたいだな」 グランが言った。 「次はぼくちゃんが相手をしてあげるよ〜」 そう言って進み出たのはラッシードだ。 「気をつけろ! あのポケモンはかなり鍛えてあるフィーユのジュカインよりも早くて、なおかつ一撃で倒した奴だからな!」 グロードが叫んでラッシードに伝えた。 「ぼくちゃんを甘く見てもらっちゃ…困るんだよっ!」 ラッシードの目つきが急に変わった。 「OK! この俺が相手をしてやるぜ! かかってきな、オラァ!」 「あ、あれはラッシードなのか?」 「まさか、二重人格とか…」 驚愕の事実! ラッシードは二重人格だった! もう1人のラッシードとミュウツーとの戦いが始まる! 第五十二話終わり 第五十三話に続く… |
リクト | #21★2004.07/08(木)19:23 |
---|
第五十三話 対決! 強大なる『闇の力』(後編) 「オイ。ラッシードの奴、一体どうしちまったんだ?」 グロードが呆れ顔で聞いた。 そう聞くのも無理は無い。ラッシードはモンスターボールを持った瞬間、性格が豹変してしまったのである。 しかも、口調まで変わっている。 「GO! ハガネール!」 「ネ―――ル!」 ラッシードが出したのは、『てつへびポケモン』のハガネール。 「うわっ… なんでこんなごっついのを持っているんだよ」 「人は見かけによらねぇってモンよォ!」 グランの問いにラッシードは叫んで答える。 「見かけ…ねぇ」 「よし、オレもやるぞ! 行けっ、ラグラージ!」 「ラ――ジ!」 『何匹束になってかかってきても同じだ。私には勝てぬ』 ミユウツーは余裕の表情を崩さない。 「笑っていられるのも今のうちだぜ! ラグラージ! 『じしん』攻撃だっ!」 「ハガネール! 『じしん』を起こすんダ!」 「え? 2匹同時に地震… フィーユ! 逃げるぞ!」 「2人のバカぁ〜っ! 陸上に立ってる2匹同時に地震打つなんて事は…」 ドッゴォォォン! 「しかもミュウツーは今浮いてる。地震効かない」 「「あっ!!」」 グロードとラッシードは同時に声を上げた。しかしどうにもならない。 ミュウツーのシャドーボールが2匹に炸裂した。 「オーノー! 俺のハガニェールがぁっ!」 「オレのラグラージまで! てか、ハガネールの名前微妙に違うし!」 『フッ。手応えの無い。お前達の実力はこんなモノか」 「ナメるなよ、ミュウツー! ボク達には『救世主』がいるんだ!」 「ちょ、ちょっとグラン! 救世主って…」 フィーユがそんなの居るのという口調で言った。 「居る! 行け! グラードン!」 「そうか! あの時ゲットしたグラードンが居た!」 『貴様ら、まさか俺様を捕獲した事を覚えていなかったのか!?』 「ボクはそんな薄情な男じゃないっ!」 グランが言った。 「と、とにかく、グラードンの特性発動で炎技の威力上昇だ!」 『ほう。グラードンを連れていたとは、驚きだ』 「この状態なら、バシャーモの力を最大限に生かせられる! 行けっ!」 「なら、私のキュウコンだって同じ状況! キュウコン、出番よ!」 「バシャッ!」 「コォン!」 バシャーモとキュウコンがグラードンの前に出る。 「行くぞっ!」 「ええ!」 「バシャーモ!」 「キュウコン!」 「「かえんほうしゃ!」」 バシャーモとキュウコンが、晴れ状態でパワーアップした火炎放射をミュウツーに放つ。 『ぐっ…』 そのままミュウツーは火炎放射で起こった爆風に飲み込まれる。 「よしっ!」 「やった!」 グランとフィーユはやっぱり喜ぶ。晴れ状態で威力が上がった炎タイプのポケモンの火炎放射を2体から同時に食らったら、さすがのミュウツーでも… しかし、それは大きな間違いだった。 『なるほど、やるな。正直、少し驚いたぞ』 どうやらミュウツーは、バリアを張って攻撃から身を守っていたようだ。 「き、効いていない!」 『私をこの程度の攻撃で倒せると思っていたのか。甘いな』 「そんなっ…」 「なら、ボク達が持っている『力』それぞれを全て結集させよう」 グランが提案した。 「そうすると、どうなるの?」 フィーユが聞く。 「分からない! 分からないけどやるしかない!」 グラン達は、円状に立った。 『何をするつもりだ。どうあがいても私を倒す事などできな…』 そこまで言って、ミュウツーは言葉を失った。 輪になっているグラン達の真ん中から、光輝く球体が。 『これはまさか、光の力…』 「バシャーモ! キュウコン! 光の力で合体技だ!」 「バシャッ!」 「コォン!」 2匹は再びミュウツーに向かって火炎放射を放つ。 しかもその威力は、先程とは比べ物にならない位上がっていた。 「4つの力が合わさり、その力の持ち主達の気持ちがシンクロすると発動する、『光の力』って…」 「ポケモンの力を、格段に上昇させるモノだったのか!」 『く、くそっ!』 「バシャーモ! 最大火力で『かえんほうしゃ』だ!」 「キュウコンも最大火力で『かえんほうしゃ』よ!」 グランとフィーユはそれぞれのポケモンに指令を出す。 2匹の放った技は、合体し威力も図り知れない。 「火炎放射が合成してるぞ! 新技だ!」 『こ、これは… ブラストバーン!? 本来なら限られた種族でしか使えないハズ…』 ミュウツーは驚きを隠しきれない。 『人間に復讐するまでは… 私は倒されるワケには… こんな事があってたまるかぁ―――っ!』 「人間に復讐…?」 『私をいいように操った人間に、復讐を…ぐっ、ぐわぁ―――っ!!』 ミュウツーは再び黒いオーラと化し、そして消えていった。 「ボク達… やったのか?」 グランは信じられないといった表情だ。 「ミュウツーの反応は?」 グロードが聞く。 フィーユは、自分の荷物からノートパソコンを取り出した。 「えーと…」 「お前、いつもそれ持ち歩いているのか?」 フィーユは暫くキーボードを叩いていたが、 「反応は…無し。封印されてる!」 フィーユの表情が明るくなった。 「そうだ、『光の力』は!?」 グロードが辺りを見回す。 「どうやら、さっきの『ブラストバーン』発動の時、全て使い切ってしまったみたいね」 「じゃあ、4つの力も全て封印されたって事か」 「おそらくね」 「まあ、それでいいんじゃないの〜?」 「そうね。力持ってると、何だかやりにくいかなって事もあるし」 フィーユは少し考えながら言った。 「じゃあ、ボク達も行こう」 クチバシティ… 「オレは、そろそろ実家に顔出さなけりゃいけない。ここでお別れだ」 「ぼくちゃんも、ジョウト地方に戻るよ〜。この戦いで、ぼくちゃんのバトルの実力がまだまだって事が分かったから、もう少し修行してくるつもりさ〜」 「そっか。…行くんだな、2人とも」 「ああ。また会おう」 「そんなの嫌だよ… せっかく友達になれたのに!」 フィーユは涙を流している。別れが辛いのだろう。 「連絡くらい何時だって取れるさ。何かあったらすぐ駆けつけてやるって」 「そうさ。もう会えないってワケじゃないんだから」 「そういう事さ。じゃな!」 グロードはエアームドに乗って、ヤマブキ方面に向かっていった。 「じゃ、ぼくちゃんも船の時間があるからこれで〜」 「今度会うときには、その軽い性格直してこい」 「それは無理な相談だな〜」 ラッシードは当たり前の様に言った。 「今度会ったら、あの時申し込んだバトルよ」 「分かってるって〜。んじゃ」 ラッシードは、ジョウト地方行きの船に乗り、出発した。 「とうとう、ボク達だけになっちゃったな」 港から海を眺めながらグランが言った。 「そうね… 何か最初の時を思い出すわね」 フィーユは海に視線をやったまま言った。 「フィーユは… 戻ったらどうするつもりなんだ?」 「私は…」 そこまで言って、フィーユは言葉を切った。 「バ、バトルの特訓しようかなぁ、なんて思ってる」 そう答えたフィーユは、何か様子がおかしい。 「どうした?」 「う、ううん。何でもないよ」 そう言ったフィーユに、グランは何か嫌な予感を感じた。 「そ、そんな事いいからさ、いこっ。ねっ?」 そのままフィーユは、船乗り場にグランを引っ張っていった。 「それにしても、色々な事があったよな」 久しぶりに戻って来た自分の家の自分の部屋で、グランは呟いた。 父親も帰ってきたので、久しぶりに家族と過ごしている。 フィーユの料理もいいが、やっぱり母親の料理が一番だと改めて感じていた。 しかし、グランがクチバから戻る時に感じた漠然とした不安。 それが的中する事となるとは、彼はまだ知らない… 第五十三話終わり 第五十四話(最終話)に続く… |
リクト | #22★2004.07/14(水)22:38 |
---|
最終話 それからの真相、そして別れ 「平和だよなー。ここ最近」 ある日の昼前、グランは丘の上の草の上に寝転がっていた。 ミュウツーとの戦い、そして仲間達との別れから、早1ヶ月。 グロードとは結構連絡を取り合っているし、ラッシードからは「特訓してさらに強くなってきた」という手紙が最近来た。 「みんな、頑張っているんだな…」 呟き、彼は目を閉じた。 家に帰って来てしばらくした日、グランは父親であるクロト警視にリナと自分との関係について問い詰めた。 クロト警視は、これ以上隠し切れなくなったらしく、リナとグランは姉弟という事実を知らされたのだ。 驚くかと思ったクロト警視だったが、グランは驚かず、こう答えた。 「目が似てたから、もしかしたらと思ったけと、そうだったんだ」 そして、そう考えると、ムゲンサイはグランの祖父という事になる。 「別に隠さなくたってよかったのにさ」 そしてマグマ団のリーダー、マツブサは自首。 幹部であるホムラ、カガリも一緒に。 きっと、自分達の過ちに気付いてくれたのだろう。 その事に関しては、グランも、そして仲間達もホッとしている。 再び、グランは目を開けた。 ただ1つだけ気になる事があった。 フィーユの様子だ。彼女はナナシマから帰って来てから、どうも様子がおかしい。 おかしくなったのは、クチバに着いた時に寄ったポケモンセンターでの電話の後。 だとしたら、あの電話は一体… ま、今は考えていても仕方が無いか。 グランは起き上がり、そして町並みを見た。 一台のトラックが、町の外へ出て行く。おそらくは、引越し屋の。 「誰か、引っ越したのか…」 グランは呟くと、昼食を食べに家に戻ろうと丘を駆け下りていった。 昼食後。 彼は何かする事がないかと、町を歩いていた。 「そうだ。フィーユとポケモンバトルの練習でもするかな」 グランは、フィーユの家――研究所になっている――に向かっていく。 研究所は、外出時以外は常に鍵は開いている。 気軽に訪れる事の出来る場所なのだ。 ポケモンを貰う前、よく遊びに来たものだ。 グランは、玄関の前に立ち、ドアノブを回す。 「こんちはー。お邪魔しま…」 そこまで言って、彼は中の様子を見て衝撃を受けた。 研究の資料も、機材も。そして博士も、フィーユも、誰1人としていなかった。 もしや、あの引越しのトラック… グランは、階段を駆け上り、フィーユの部屋へ。 しかし、そこにも誰1人居ない。 「何も…言ってくれなかったのか…」 グランは1人取り残された様な孤独感を感じた。 諦めて部屋を出ようとした時、ドアに何かが張り付いているのに気付いた。 グランはそれを剥がした。どうやら、封筒に入った手紙のようだ。 表には宛名(グランの名)が裏を返すと、差出人(フィーユの名)が書いてあった。 グランは丁寧に封筒を開ける。中から便箋が出てきた。 彼は手紙に目を通す。 一通り読み終わった後、手紙を封筒に戻し、ポケットに突っ込み、部屋を後にした。 その手紙には、こう書かれていた。 「グラン。突然の手紙、ゴメンね。 あなたがこの手紙を読んでいる時には、私はもうこの町には居ないでしょう。 多分あなたの事だから、この家に来るだろうと思って、手紙を残しておく事にするわ。 口頭じゃ、頭の中真っ白になって、何も言えなくなっちゃいそうだし。 何も、誰も居なくて、ビックリしたでしょ? …こんな事になるなんて、予想も出来なかった。 実は、パパが『別の所で研究したい、フィーユにも手伝ってもらいたい』なんて言い出したの。 私は反対したけど、心の奥底では、そういうのもいいかなってうっすらだけど思ってた。 行きたくなかったのには、2つの理由があったの。 まず1つ目。この町から離れたくなかった。 私が育った町だからこそそう思った。 それは、今更言っても遅いと思うけど。 私は迷った末、自分の将来の参考にするため、この道を選んだの。 そうする事で、グランに心配かけるかも知れないけど、私のわがままを許してほしいと思ってる。 もう1つ。それは、もっとグランと一緒に居たかったから。 私が最初にあなたに出会ったとき、私は自分の実力を過信してた事は覚えてる? その過信を、ポケモンバトルで私を倒した事で消し去ってくれた。 自分の力を信じて戦い、当時駆け出しのトレーナーだったあなたは私に勝った。 同時に、私は何か大切な事をあなたに教わった。 それ以後、何だか気になりだして、いつしか好きになってた。 今思うと、懐かしい気がする。 仲間思いの心があるから、ここまでやってこれたんだよね。 正直、私はそこに惹かれてたりして(笑)。 そうだ、私が引っ越すって事は、旅の仲間(グロード君とラッシード)には伝えていないの。 あなたから伝えてほしい。それ、お願いね。 今はここには居ないけど、きっとまた、みんな会えるよ。 だって、私達、友達だから… そうだ。私のキュウコン、グランのバシャーモと別れたくないみたいで、ずっと反対してた。 結局、上手い事言って納得させたけど… 今度会った時、多分キュウコンはバシャーモに飛びつくと思うからその辺よろしくね。 多分私もあなたに飛びつくかも…冗談よ、冗談。 追伸 グラン。あなたの家のポストを見てみてください。 私からのプレゼントが入っているから… じゃ、また会う時まで元気で。 今度は私、負けないからね。 私にとっての『大切な人』へ。 グロード君が『グランにとっての大切な人』と言った人より」 グランは家に帰り、手紙に書いてあった通りポストを見た。 すると、中に袋があった。 その中に、何か入っているようだ。 グランが袋の中の物を取り出す。 入っていたのは、貝殻で出来た鈴だった。 「確かこれは『かいがらのスズ』だ。ポケモンに持たせると、攻撃する毎に体力が回復する道具…」 グランはフッと笑った。 「ボクがバトルで最強を目指しているから、これでさらに強さに磨きをかけろって事か…」 暫くグランは鈴を見ていた。 「グラードン!」 グランはグラードンを出し、鈴を渡した。 「持ってるといいよ。攻撃が得意なお前には最適だ」 グラードンは、鈴を物珍しそうに眺めた。 今はみんな、離れ離れになっているけど…いつかまた、きっと会える。 グランは、お気に入りの丘から空を眺め、心の中で呟いた。 そして、その空に向かって小声で言う。 「ボクだって、今度みんなと会う時には、さらに強くなってやるからな」 そしてあの時、ボク達は一時的に離れ離れになった。 結局は、その時からもう少し経った時に、4人が再び集結した。 でもそれは、また別の話。 忘れもしない、10年前の旅。いつまでも心の中にある。 思い出の冒険の旅〜ナナシマ編〜 完 |
リクト | #23☆2004.07/09(金)14:43 |
---|
特別にもう一編… 時間的には結構前の話です。 てか、ホウエン編が始まる前の事です(苦笑 思い出の冒険の旅・特別編 それは、グランがこの地に来る少し前の事… 「聞いた? この町に来る人が居るって」 私の友人が言った。 私は一匹狼的性格だけど、この人は私の事を分かってくれる唯一の友人。 「ええ。聞いてるけど?」 私、フィーユは殆ど上の空で答える。 知ってるなら友達になればと友人は言ったけど、私はこう答えた。 「私みたいに協調性が全然無い人には、難しい話ね」 「何言ってるのよ、フィーユ。アタシとは普通にやってるじゃない」 友人はこう言ってるけど、私は人と妥協するのはどうにも性に合わないみたい。 どんな人が来るのかは知らないけど、あの出会いで私を大きく変えるなんて…知らなかった。 …少なくとも今は。 その夜。夕食時。 「明日は例の引っ越して来る人がこの町に来る。ポケモントレーナーの才能がある人だと何かと嬉しいのだが」 この人、私のパパはポケモンの研究する人なんだけど…なんだかちょっと楽天的なのよね。 「でも、もしトレーナーの才能があったとしても、私には勝てないでしょうね」 私がそう思うのも無理は無い。なんたって私は、つい最近までポケモンと共に修行の旅をしていたんだから。 「でもなぁ、フィーユ。会ってもいないのに、そう決め付けるのも…」 話している途中で私はすかさず言う。 「じゃあ、パパは私が素人に負けるとでも言いたいの!?」 むきになって私が言うと、 「いや、そうは思っていない。だが、万が一って事も…」 「その万が一が気にいらないのよ。私はね…」 途中まで言って、パパは、 「はい、その話はここまで。続きはまた今度」 そう言い残し、パパは自分が使った食器を下げに行った。 「あっ、ちょっと! もう、パパったら…」 次の日。 私は普段と同じ位の時間に起きた。大体7時くらい。 起きたらすぐに着替え、外でポケモンの朝練。コレ、私の日課。 私のパートナー、サーナイトの特訓開始。 「さ、今日も頑張っていくわよ!」 私がサーナイトに言うと、 『ねえ、ホントはあの話が気になるんじゃないの?』 …とサーナイトがテレパシーで話し掛けてくる。 私は頭の中で返事をした。 「うるさいわね。ちょっと黙っててよ」 『ねえねえ、カッコイイ人だったらいいよね』 サーナイトは私の頭の中の言葉を聞かず話を進める。 「私にはそんなの関係無いわ。いいから練習開始よ」 『は〜い…』 正直言えば、さっき私のサーナイトが言ったことはまさしく図星。 そりゃ、気にもなるわよ。どんな人なのか。 その気持ちは多分、誰でも同じでしょうけど。 結局私は、サーナイトの特訓を普段より少し早く切り上げた。 その日の昼、私は自室の窓から外を見ていた。…昼食も食べずに。 しばらくすると、私の視界に一台の車が。 降りてきたのは、おそらくは私と同じ位の年頃の男の子。 そして続いて降りてきたのは、彼の母親らしき人。 私は窓を少し開けた。結構高い声が飛び込んでくる。 「ほら、グラン! 家に入りなさい」 どうやら彼は、グランという名前らしい。 「ふ〜ん… グランっていうんだ…」 私が呟くと同時に、また声が。 「そんなの後! ボクはこの町をちょっと探索してくる」 …と、落ち着きのない口調で言った。 「私から見て、ポケモントレーナーの才能は殆ど皆無…か」 私は呟いて窓を閉める。 …でも、そんな事なかった。そう感じたのは、もう少し後。 彼と戦った後、特別な感情と共に思い知る事になるとは、この時の私は知るよしもなかった… 思い出の冒険の旅特別編・完 |
このページは http://www1.interq.or.jp/kokke/pokemon/commu/story/196.htm のアーカイブです。