the way i feel
(14)
ジェロニモの寝室の窓は、裏庭に面していた。あまり日は入らない。けれど、時間通りに、充分明るかった。
ハインリヒをベッドに下ろし──放り出すという、こんな時にはただ情熱的と言い訳のできる失礼なことを、ジェロニモは決してしない、とハインリヒは思った──て、まずカーテンを閉めて、それからふたり一緒に、剥ぎ取る勢いで服を脱いで、脱がせた。
ジェロニモのシャツは、ボタンは多いけれど、それほど面倒な代物ではない。ハインリヒのタートルネックは、いつも腕と頭を抜くのに、少しばかり手間が掛かる。散った前髪を指でよけながら、ベッドの端に足を伸ばして、そにかかとを引っ掛けるようにして靴を脱ぐ。ごとんと音がした後を、ジェロニモの柔らかい皮の室内履きが追い駆けて行く。ジェロニモのジーンズに手を掛けて、下着ごと引き下ろした後で、自分の上に今度こそしっかりとのしかかってるジェロニモの下で、ハインリヒはなるべく手早く自分の分を半分だけ脱いだ。
そうしている間も、空いている時には手指は互いに触れていたし、唇は1秒さえ惜しんで、重なり続けていた。
早くもシーツにはしわが寄って、きっと朝にきちんと整えたのだろうジェロニモのベッドは、まるで3日続けて酔っ払って帰って、毎朝ひどい二日酔いの頭痛に悩まされたよりも、もっとひどい有様になっている。
静かにやって来たはずの侵入者のせいで、ここは今、ひどく騒がしい。ふたりの立てる、音のことではなく。
肩が揺れる。ベッドが音を立てる。ジェロニモが寝ても大丈夫なベッドは、ハインリヒがジェロニモに抱きついている限りは、とりあえずは足りる広さがあると言えた。時々、ヘッドボートに頭や腕をぶつけながら、それに水を差されることもなく、いつの間にそうなったのか、ジェロニモのジーンズは床に落ちていたし、ハインリヒのズボンは、片足だけは無事に自由になっている。
あまり深くは考えず、特に、後のことは考えずに、ハインリヒは、ジェロニモのそこへ手を伸ばした。鉛色の右手だ。応えるように、ジェロニモの、ハインリヒの脇腹の辺りに触れていた手も、ハインリヒの下腹へ落ちる。
ハインリヒの目当ては、そうやって触れることではなかったけれど、あまり急ぎたがるのもどうかと、少しの間、自分の右手がそこへ触れるのを、ジェロニモは一体どう思って──どう感じて──いるのだろうかと、よそ事を考えながら、なるべく優しく指先を使う。
ジェロニモの腕は、ハインリヒの首の後ろに回って、まるで、絶対に離さないとでも言いたげに、ハインリヒをとらえていた。
そんな必要はなかった。ハインリヒが逃げるはずもなかったし、途中で気を変えることもありえない。けれど、そうせずにはいられないのは、もう1秒も、ハインリヒから離れていたくないという、奇妙な情熱の現れだ。
電話を受け取って、ここに来ているのだと聞いて、実は改造した体を試しに来たのだと、たとえそれが理由だとしても、ハインリヒが、ここまで、自分に会いにやって来たのだということに、ジェロニモはもう自分を抑えきれなくなっていた。
誰が相手でも構わなかったはずだ。もちろん、そもそもの事の起こりが自分のせいだとわかっていて、それでも、ハインリヒが不愉快な改造の理由と結果を、自分に結びつけていることが、今ジェロニモを突き動かしている。
これは何だろう。
誰かをこんな風にいとおしいと思うことは、久しくなかったから、恋だの愛だのという甘ったるい、普通の人間たちの使うだろう言葉が、どうもしっくりと来ない。
それでも、これがそれに間違いないと、そう同時に思って、それをうまく表現する術を持たない自分のことに、ジェロニモは心底焦れた。
ハインリヒという男が、そんな言葉を薄っぺらに喜ぶような男ではないとわかっているから、不用意に、そんな人間らしい言葉を使わないように注意しながら、それでも手と指と唇に、自然にあふれるそれを、ジェロニモは止められない。
重なっていた唇の端をわずかにずらして、ハインリヒが、息をしようと、胸を反らした。
そこで、ほんの少しだけ互いに正気に戻って、完全に冷静になったわけではないけれど、ちょっと落ち着かないかと目配せし合う。
そうして、少しの間体を離して、脱ぎかけだった服を完全に脱いだ。
わざとリズムを狂わせて、少しは頭が冷えたかと思ったけれど、抱き合えばまた元の木阿弥だ。
今度は、ハインリヒがジェロニモに抱きついて、ついでに体の位置を入れ替える。
胸を合わせて肩を揺すり始めると、いやでも自分の腕のことが気になる。胸の半分と右腕全部は、装甲が剥き出しのままだ。せめて人工皮膚をかぶせてもらえばよかったかと、今さら思っても遅い。
考えなくもなかったことだ。せっかくひとらしさをわずかでも取り戻したのなら、それを、ジェロニモのところへ確認しに来るなら、もっとひとらしくしてもらっても良かったのだ。
右手を伸ばして、ハインリヒはジェロニモの頬に、いつもそうするように触れた。
けれど、このままの方がいいと、思う気持ちがある。隠さなくてすむなら、その方がいい気がする。なぜなのかはわからない。ジェロニモになら、隠す必要もなく思えたし、何より、隠したくないのだと、そう思う自分がいる。
見かけや感触が、好ましいかどうかはともかく、互いにサイボーグの間柄で、これがハインリヒの真の姿だ。ジェロニモの、皮膚を剥がれた姿を見たことはないけれど、手足を失った姿は、何度か目にした。体中のあちこちから、わけのわからないコードが、色とりどりに伸び、修理中の、眠っている姿も、互いに見たことがあるはずだ。今さら、隠すことも何もない。むしろ、皮膚の下の装甲の、そのさらに下も、覗けばよく似た見掛けだろう。
部品を、互いに使い合えるふたり──他の仲間たちも、もちろん──は、仲間でもあり、そしてある意味、兄弟でもあった。血の繋がりよりもさらに濃く、親(ちか)しい間柄と言えなくもない。
そういうことだと、胸の中でひとりごちて、ハインリヒは肩を取り上げると、ジェロニモの腰をまたいで、躯をわずかに浮かせた。
それから、できるかどうか不安と戸惑いを感じながら、ジェロニモの下腹へそっと左手を伸ばし、自分の、軽く開いた両脚の間──そこも、膝の上下の広範囲が、装甲のままだ──に、穏やかに導こうとする。
ハインリヒの意図を悟って、ジェロニモが、それを阻むように、ハインリヒの両肩に手を掛けた。
「大丈夫か。」
ハインリヒは赤くなった頬をごまかすために、唇の端をちょっと下げて、さあなととぼけた振りであごを振る。神経質に下唇を舐めている仕草に、自分で気づいていないけれど、それを、ジェロニモが心配そうに見つめている。
「俺のことより、おまえさん、自分のことを心配した方がいい。俺がどうかよりも、むしろおまえさんのデータの方が重要だろうからな。」
言わなければと、どうやって言おうかと、ずっと考えていたことを、こんな時に言う。最悪に相応しくないタイミングだけれど、この場なら、問い返されることも、反駁される恐れもない。自分のずるさに舌を巻いて、けれど今は、自分の手の動きに集中することにする。
ひとりで試した時は、おっかなびっくりではあったけれど、さほど慎重に扱った覚えもない。だからきっと、大丈夫だろうと思った。
ジェロニモが体の動きを止めて、ハインリヒにされるままに、なだめるように頬や首筋を撫でる手は止めない。
ハインリヒが息を止めた。それから、手の中にあるそれを導いて、そこへ触れさせた。
思ったよりもうまく行かない。
大きさも形も、試したそれとはもちろん違う。きっとそのせいだ。ハインリヒは少し焦って、ジェロニモを傷つけないように、手指の動きに気をつけながら、もっと近く、自分の躯をこすりつけようとした。
「無理はしない方がいい。」
ジェロニモが、優しい声で、けれどきっぱりと言う。
傷ついたような顔であごを引いたハインリヒを、ジェロニモは素早い動きで、また自分の下に敷き込んだ。
首に腕が巻きついて来て、驚いた顔を作る前に、また唇をふさがれた。
唇の裏に、ジェロニモの歯が当たる。痛いと思うより先に、舌を伸ばして、もっと近くジェロニモをそこに引き寄せていた。
もう一方の手が、脇腹を撫で、腰を撫でて、それから、腿の間へそっと滑り込む。軽く脚を開くように、その手に促されて、互いの唇の中で起こっていることに夢中になっているハインリヒは、特には何も考えずに、ジェロニモが扱いやすいように、開いた膝を軽く立てた。
そこはかろうじて人工皮膚に覆われている辺りへ、ジェロニモの掌が触れる。大きな手の、長い指が、あまり躊躇はせずに、ハインリヒがさっき何とかしようとした場所へ、そっと伸びる。
唇を外さないようにと、ジェロニモの、首に巻いた輪が、ほんのわずか小さくなる。
触れさせることなど、考えていなかった。躯を繋げることは、もちろんそればかり考えていた──と、羞恥も忘れて、思わず本音が出たことに、ハインリヒは気づかない──けれど、そうでない形で触れられることは、裸になって抱き合えば何でも起こり得ると言うのに、考えつきさえしていなかった。
まず周囲を撫でるように指先が動いてから、それから、用心深くその指先が探り当てる。もれそうになった声は、ジェロニモの舌先に吸い取られてしまった。
とんでもないことになっているなと思いながら、躯はごく自然に、ジェロニモがそうしやすいようにと、軽く腰を浮かせることさえする。
少々の抵抗感と、慣れてはいない異物感と、それぞれ感じることは違ったけれど、見せずに必死なのは同じだ。
ずいぶんと、それが長く続いたような気がした。
ゆっくりと慣らしに掛かる指先は、いつの間にか束ねられて数が増えていたし、それも改造のせいか、躯は思っていたよりもずっと素直にそれを受け入れていた。
とは言え、まるきり痛みがないわけでも、異物感が消えたわけでもない。自分の躯の中に、自分ではない何かが入っているというのは、ひどく奇妙な感じがした。
体の中で休まずに回り続ける歯車と同じようなものじゃないかと、どこか投げ捨てるように思って、けれどそれがひどく見当違いの考えだとわかっている。何もかも、この場に臨んでいる自分に対する照れ隠しだ。ハインリヒは、顔を見られないために、唇がほどけるたびに、すぐにまたジェロニモの首にしがみついた。
ここまでは大丈夫だ。改造に問題はない。自分の躯の内側から気をそらすために、そんなことを思った。ジェロニモにしがみついて、そこにひどく指先を食い込ませていることには気づかない。
勝手にこぼれそうになる声を噛み殺すだけで、精一杯だった。
こんなことになると、思ってもみなかった。
長い長い間、誰かとこんなことになると、想像もしていなかったし、生身だった時から、人並み外れて大きな体は、さまざまな障害になりこそ──ごく普通に生きるためには──すれ、自分自身のために役に立ったことは数えるほどしか思い出せない。
いつだって、誰かを傷つけないかと、手を振ることさえためらいがあった。
戦車の装甲と同じだと、そう告げられて、化け物扱いされたことのある自分が、今度こそほんとうの化け物になってしまったのだと、無表情の下で思ったことは、誰にも言ったことがない。
人と触れ合うのが、嫌いな性質(たち)ではなかったけれど、優しく触れることも、ちゃんとできると知っていたけれど、それを他人に信じさせるのがとても難しい自分の外見だと知っていたから、ジェロニモは長い長い間、誰かに触れること、ことに、親密な触れ合い方をすることを、求める気が最初からなければ、どこか諦めて、避けていたようなところもあった。
そうして、こんな話の流れなど、想像したこともなく、けれどなぜか不思議と、これと奇妙だともおかしいとも思わない自分がいる。それがいちばん不思議だった。
ハインリヒの武器だらけの体、だからこそ神経質に丈夫に造られ、戦車の装甲のジェロニモと、体の造りがよく似ているのだそうだ。部品のやり取りができるということは、ジョーやピュンマがそう言っていたから知っている。心のどこかでそれを、血肉を分け合った、まるで血の繋がらない兄弟のような、そんなものだと感じていたのかもしれない。
欲しかったのだと、じかに感じて確かめたかったのだと、そう口にすれば、それはひどく安っぽく、どこにでも転がる色恋沙汰のように聞こえるのかもしれなかった。けれどそれは、それよりももっと原初の、ひとがひとらしくあるための、ただひたすらに孤独を恐れ、誰かと繋がっていたいという、ごく単純な想いから発せられるものに違いなかった。
ハインリヒを抱いて、ジェロニモは、締めた腕の輪の中に収まった彼が、痛みに眉を寄せることもしなければ、押し潰されて呼吸ができないと言うこともない、そんなことに、ずっと安堵している。抱きしめてもかまわない、ただそれだけのことが、ひどくうれしかった。
これは、とても特別なことなのだ。ひとではないものにされてしまったその後で、それでも、ひとらしさを忘れることのなかったふたりが、やっとそのひとらしさをさらけ出して、求め合っている。自分のひとらしさと、他の誰かのひとらしさを求めて、それを貶められることもなければ、その価値を割り引かれることもない、説明すら必要のないふたりの間柄は、あれから、ずっと変化し続けている。
もう、ただの仲間ではない。そこからもう少し踏み込んで、今ふたりは、後戻りのできない親密さの中へ、抱き合ったまま一緒に飛び込もうとしている。
ジェロニモは、もうためらわなかった。
装甲との繋ぎ目を撫で上げて、脚を開かせる。その間に滑り込みながら、もう一度、心づけの口づけをした。
外れた指の代わりにあてがわれた感触に、ハインリヒの躯が硬張る。けれど逃げることはせずに、ジェロニモの首と腰に回した腕に、決意を固めるように、いっそう力がこもった。
傷つけないように、けれど、必要な強引さは忘れずに。
しゃにむに押し進むわけには行かないから、ハインリヒの様子を窺いながら、息の音を聞いて、少しずつ少しずつ、入り込んでゆく。今は、諦めることはせずに。
無意識なのかどうか、ハインリヒの脚がもっと大きく開き、膝を肩近くへ引き寄せ、ジェロニモを受け入れようとするためよりも、自分が楽になりたくて、いつの間にかそんな姿勢を取っている。
押し広げられる感覚、躯の中がそれにきしむ音、自分の内側の弾力に、ハインリヒはひそかに安堵していた。
繋がりたくて、ふたりは必死になっていた。
背中に、ハインリヒのマシンガンの指先の跡がくっきりと残る頃に、ジェロニモは、やっと、一度大きく息を吐いた。
すぐには動かずに、やっと全部収めて、まずは息をつく。
自分のことよりも、ハインリヒの方を優先させなければと、下唇を噛んだままでいるハインリヒのこめかみに、そっと唇を滑らせた。
自分の下に、すっぽりと敷き込んでしまえる体だけれど、それでも充分な厚みと靭さがあって、こうしていても押し潰す心配はない。これ以上ないほど躯を近く寄せて、そうできることを、今とても幸せだと思う。だから、もう一度、痛み──だと思う──に食い縛っている奥歯の線があらわなハインリヒの額に、そっと口づけた。
ゆっくりとゆっくりと動き出す。深くはせず、大きくは引き戻さずに、ただそうして躯を馴染ませるために、そっと動く。
見下ろすハインリヒ本人よりも、内側が、確実な反応を返して来る。熱くて、湿っていて、引く時にはまるでそうさせまいと、それ自体に意思があるように、こちらに追いすがって来る。
こんな時に、ひとの躯がどう反応するのか、そんなことは憶えていなかったから、これが、いわゆる改造のせいなのか、それともただひたすらに忠実な生身の再現なのか、寄り添うだけではなくて、まるで溶けてこちらの全身を覆うようなその反応に、ジェロニモはすでに自分を引き止められなくなりそうになって、何度も短く息を止めた。
結んだ躯はとっくに深く繋がっているけれど、次第に動きが大きくなる。上と下で、そうと意識はせずに呼吸が合い始めて、ジェロニモの揺れる肩に、ハインリヒは必死でしがみついていた。
無我夢中だったから、ジェロニモの表情を窺う余裕などなくて、それでも、いつも無口で無表情なこの男が、何か一生懸命な様子でいるのに、自分がこの男をそんな風にさせているのだということに、かすかな満足感が湧く。それに煽られて、ハインリヒは、膝や足首で、ジェロニモをもっと近く引き寄せようとしていた。
繋がって、満たされているのだという感覚ばかりで、痛みや異物感や内側をこすり上げられる感触や湿った皮膚が親密にこすれ合う音や、そんなものが全部ひと塊まりになって、自分の躯がどうなっているのか、きちんと把握することはできず、ひたすら混沌とした感覚の中に放り投げられ、そうしたいと思った通りに、改造された躯がジェロニモを受け入れているのだと言うことだけは、おぼろに理解していた。
得体の知れない──としか、今は表現しようもない──感覚が、躯の内側だけではなくて、皮膚の裏側も、装甲の内側も、そして人工肺や人工脳の中まで、いっぱいになだれ込み、今ジェロニモとこうして抱き合っていることに、つまりは完全に翻弄されているのだと、そう認めることは少しばかり業腹だった。
どうやら、ただひとつ確かなことは、改造は成功しているようだし、ギルモアとコズミとイワンには、きちんと礼を言ってしかるべきだということだ。
そんな場違いな思考は、ジェロニモの、激しくなる一方の呼吸に飲まれて、我を忘れないためだった。
その努力も、あまり長くは続かなかったけれど。
巨きな躯が、上で揺れた。しがみつくだけのそのうちに、こすれる皮膚が、ハインリヒの粘膜の内側で、そうとはっきりわかるほど大きく波打って、何かが熱く注がれるのを、その様が脳裏にくっきりと現れるほど、鮮やかに感じた。
ジェロニモが、まるで死にかけの獣のように、ハインリヒの上に胸を落として来る。
こんな無防備な姿を晒すことは滅多にない男だから、ハインリヒは、まだ起伏を繰り返しているジェロニモの背中を両腕に抱いて、汗に濡れたそこを、ゆっくりと撫でてやる。燃えるように熱いジェロニモの体ほどではなかったけれど、ハインリヒも、いつの間にか上がった体温に、全身が湿っていた。
するりと、そうと気づかせない静かさでジェロニモが躯を引いて、ほとんど無理矢理に近く拡げられていた内側に、同じほどの静かさで、外気が触れる。
皮膚の裏側に、水がひと筋流れたような冷たさに、ハインリヒは震えを抑えようと、無意識にジェロニモの肩に顔を押しつけ、そこに歯を立てた。
外れた躯の代わりのように、ハインリヒを抱きしめて、ジェロニモが触れるだけの口づけを、唇の端からそっと始める。
抱き合う腕は、まだしばらく外れそうになかった。
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