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ネプの日記-
俺はそもそも、あの子の側にいていいんだろうか?
短い期間でも解るくらい、グレイは本当に真っ直ぐで、汚れていない。
そんな子に、俺のような汚れものが側にいて、もしあの子にこの汚れを知られたら…。
あの子に嫌われる事が怖いんじゃない。其処まで入れ込んでいる訳でも無い。
あの子が汚れを受け入れそうで怖い。
いや、どうしてそんな心配をする必要があるんだ。入れ込んでいないんだろ?
只、俺を選んだあの子が悪い、そんな事を言う資格は俺には無いんだろう。
グレイの記憶-
拠点の宿に着くと、ぼくはもうへとへとだった。みんなとのお仕事で緊張したのが一番かな。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
素っ気無いけれど、ちゃんと返してくれる。ネプに無視された事は無い。
「…ネプ」
明かりを消して、お月様しか無い中で暫くは黙っていたんだけれど。
「何」
ネプは寝返りを打って、ぼくの顔をちゃんと見て返事してくれた。
「やっぱり気になるよ…二人部屋取ろうよ」
ぼくはふかふかのベッド、ネプは上着をかけただけで床に寝てるんだもの。最初なんて部屋の外で寝ようとしてたし。勿論二人部屋を取るお金はある。
「俺はこれで十分だって言っただろ。それに部屋に入るだけでも譲歩したんだ」
「譲歩?」
「…グレイ。君は男に対して危機感が無さ過ぎる」
「でも」
「でもじゃない」
「ネプだから」
「…は?」
少し怒ってるような声だったけれど、ぼくは伝えたくて、怖がる気持ちを奮い立たせた。
「ネプの事信じてるから。それに、そんな事言ってくれるのも、ネプだけなんだよ」
ネプはちょっとの間黙って、それからまた寝返りを打って向こうを向いた。
「もういい。主人に口出しするのは引き受けてないしね」
「…ありがとう、ネプ」
ネプにとっては不思議かもしれないけれど、ぼくは嬉しくて堪らないんだ、こんな人に出逢えた事が。
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