■-7

グレイの日記-

 ぼくなんかじゃ、やっぱり駄目だったのかな。
 弱音を吐くぼくをネプは叱る。
 だけど、今日は少しだけ違ったみたいに見えた。
 何かネプに伝わったのかな。そうだといいな。



ネプの記憶-
「…ネプ」
 そんな苦そうな顔をして、頼んできそうな事と言えば。
「装飾壊しの犯人、どうにかして捕まえられないかな」
「結論から言えば出来ない」
「出来ない?」
「もしも犯人に親方が加担してたら、君はあの工房にいられなくなるだろ」
「それでも…」
「雇い主の資金源くらい心配させてくれよ」
 グレイはいつものように肩を落とした。けれど其処から、いつもとは違う。
「…ネプ」
 声を、肩を、震わせて、グレイは自分を奮い立たせた。
「ぼくにとって、作品は、自分みたいなところがあって…それが悪意で壊されたら、ぼく自身が凄く痛いんだ…。もう嫌だよ、そんな事は」
「…それは、俺が断ったら一人ででも乗り込む、っていう脅しと取っていいね」
「そんなのじゃ…」
 その目は嘘を知らない。真っ直ぐに俺を見てくる。
「大体の周期で行くと、君の当番の前日、明日が狙い目だ。覚悟は出来るか」
「…うん!」
 やっぱり、この子は強かったんだ。守るべきものを理解している。



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