■-8

ネプの日記-

 眩しいくらいのものを見ると疲れる。
 どうしてこんなに自制出来ているのか、いっそ不思議だ。
 今まで、眩しかったらどうしてた?潰していたんだ。
 潰す事なんて、本当は簡単なんだろう。それをしない理由が難しいだけであって。



グレイの記憶-
 真夜中、ぼくとネプは工房にこっそり戻った。ぼくは短剣を隠して持って、ネプは何も持たないで。すぐ武器を使ったら物事が大きくなるから、だって。
「何があっても、声を出さないように」
 ネプはそう言ったきり黙ってる。ぼくとネプは棚に隠れて、今日の当番の人を見張っていたんだけれど…誰か来た、二人、あの人達はぼくの先輩。手には、金槌と、ぼくの作品が幾つか。
「ひっ…!」
 金槌ががちがち鳴って、がちがち震えるぼくの肩をネプが少し撫でてくれた、その時だった。ネプがいきなり飛び出していって、三人と喧嘩を始めた。
 ぼくは怖くて殆ど見てられなかったけれど、物音が収まった時に見ると三人は倒れて、ネプは立ってた。

「言いがかりを付けられても困るな、俺の仕事は依頼主の全てを守る事で、それ以上でもそれ以下でもない。貴方達の事は親方には言わない、ただし次はその手が無いと思ってくれ」
 そういえば、誰も腕を痛がったりしてない。ネプは、犯人の持つ技術も守ったんだ。
 ネプが後ろ手で、ぼくに外に出るように言ってきたから、ぼくはまたこっそり工房を出た。
 外で待ってると、暫くしてネプが工房の外に出てくる。

「…ごめん」
「えっ、何が?」
「しくじった」
 ネプは黙って、だらんとした右腕を指差した。
「骨が折れてるみたいだ」
「えっ!」
 まさか、金槌が当たったんじゃ…。
「グレイ、俺はもう、…何してるんだ?」
 ネプが不思議そうにぼくを見てる。ちょっと待って、骨折だから多分、これでいいや。
「羽抜いてるんだよ?多分これくらいを煎じて飲めば、明日の朝には元通りだよ!」
 ちょっと痛いけれど、比べ物になんてならない。
「…其処までする?」
「する!」
「…そう」
 あ。やっと笑ってくれた。



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