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ネプの日記-

 グレイは本当に放っておけない。
 転びそうになったところが突っ込むと危険な場所だったり、人の言葉を鵜呑みにして騙されそうになったり、地図は読めるのに看板を見間違ったり、食事中香辛料を取り落としてぶちまけたり。
 目を離したらどうなるか解ったもんじゃない。
 只の世話焼きかもしれないけれど、それを怠ってどうかなられたら堪らない。少なくとも見たくはない。



グレイの記憶-
 もうそろそろクリスマス。
 クリスマスには装飾品も売れ行きがいいから、ぼくも何かそれ用に作らなきゃいけない。

「うーっ」
 夜になっても、それ用には浮かんでくれなかった。枕に顔を伏せても悩みは重たく圧しかかってくる。
「ずっと悩んでるみたいだな、課題のやつか?」
「うん」
「珍しいね」
「そうなの?」
「いつもはそんな唸るまで悩んでなかったから」
 いつも…そういえばネプと一緒にいて、もう随分経つんだ。早いなあ。
「いつもは、何かを見て浮かんだものを作ってるから…誰かの為に作るなんて初めてなんだ」
「じゃあ、君が誰かに贈りたいものを作ったら?」
 ぼくが贈りたいもの、かあ。
「でも誰かって、誰?」
「例えば、君が大切に思っている人とか」
「うーん、じゃあ…ネプはどういうのが欲しい?」
 ネプは苦そうな顔をしてぼくを見る。
「何で今の流れで俺が出てくるんだよ。俺が言ったのは、友達とか、家族とかの事だよ」
「けど、それだったらいないんだもの」
「…ごめん」
 あれ、何でネプが謝るんだろう。
「…いや、いいか…。君の家族がいた時の事を考えて作ってもいいんじゃないか」
 いた時?もしかして、家族が死んじゃったって思われてるのかな。
「違うよ、本当にいないんだよ。ぼくは火から生まれたから、親はいないんだ。兄弟ならいるかもしれないけど、みんな全然気にしないで過ごしてたから、ぼくも知らない。…あと、そんなに仲良しの友達もいなかったし」
「そうだったのか…」
「だから、ぼくがこういう事訊けるのはネプくらいなんだ」
「う、そう来たか…」
 訊いたのはちょっと悪かったのかな。ネプは困った顔で、でも何か考えてくれてるみたい。
「あの、ごめんね、無理そうならいいよ」
「ん、大丈夫…そうだ、今が時期だし、雪や氷をモチーフにしたらどう?」
「ネプはそれがいいの?」
「そう言う訳じゃないけど。只浮かんだだけだよ」
「でもぼく、冷たい物の事はあんまり解らないなあ…故郷は火山だから一年中あったかかったし。雪や氷なんて見た事無いよ」
「そうか、それじゃ…ん?」
 ネプが急に止まった。ぼくは何か変な事でも言ったかな。
「どうしたの?」
「グレイ、君に参考になりそうな物を見せる事が出来るかもしれない」
「えっ!」
 でもどうやって?今日は雲一つ無い夜で、明日は晴れそう。気温もそんなにまだ低くないし、そもそもこの土地に雪が降るかも解らないし。
 けれどネプは、ぼくに幾つか確認をして、明日明け方に森に行こうって。一体何があるんだろう。




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