■-14
ネプの日記-
入れ込んではいない。入れ込んではいけない。
どうやら時間が経てば経つ程に、思いとは真逆に自分が向かう事を知る。
この侭、絆されてしまってもいいのか?そんな事は決して無いだろう。
けれどどうしようもない。心地良さだけは否定出来ない。
グレイの記憶-
あれからネプに雪の結晶の事も訊いて、ぼくは無事に装飾を作る事が出来た。
工房の人が、今日はクリスマスだから店番しないで遊んでおいで、ぼくにそう言ってくれて、今はネプと一緒に繁華街にいる。屋台のお店もあって、飾り付けも凄く綺麗で、いつもより賑やかだった。
「ネプ、次あそこ!」
「…まだ食べるのか」
「だって」
初めて見るものばっかりで、この日しか無さそうなんだもの。特にこのクリスマスケーキっていうのなんて、小さいのに色々飾りが乗ってて綺麗。
お店のテラスでどきどきしながら待ってる途中に、ぼくはやっぱり気になってネプに言った。
「ネプ、何か食べたら?お金出すよ?」
さっきからぼくを見ているだけで、ネプは何もしてない。付いてきてはくれてるけれど、嫌なのかな。
「いやいい。気にしないでいいよ」
「つまらない?」
「そういう訳じゃないよ。休暇だと思って楽しんでる」
「そう…?」
そんな風に見えないって言おうとした時に、ケーキが運ばれてくる。白いクリーム、ぴかぴかの果物、あと小さな人形…ネプが言うには、これは食べられるんだよって。
ケーキを一口食べてみると凄く甘くて、ぼくはやっぱり何もしてないネプが気になって。
「ネプ、あーんして」
「…そういう事は気にすべきだと思うけど…」
「もうっいいからあーんして!」
だっていつまでも遠慮してるんだもの。ぼくはフォークを突き付けた。
「うっ…」
ネプは黙ってたけど、最後には一口食べてくれた。
「美味しいでしょ?」
「…美味しい」
何だか顔が赤いような気がするけれど、苦しそうじゃないしいっか。
ぼくは食べていく内に、今まで楽しくてつい忘れてた事を思い出す。
「そうだった!ネプ」
「ん?」
「はい、クリスマスのプレゼント」
装飾を作ってる時に見られちゃったかもしれないけれど、材料の余りをみんなに貰って作った装飾をネプに渡した。
「これは…」
「雪を見ていて真っ先に浮かんだのがこれで、どうしてもネプに作りたくて。でも材料が足りなくて、髪飾りにもブローチにも出来なくて…」
「…ちょっと持っていて」
ネプは服の飾り紐を取って、装飾の間に通す。装飾をぼくから受け取ると、ネックレスみたいに首から下げてくれた。
「これでいいかな」
「うん、うん!凄く似合う!」
「…綺麗だな」
ネプは暫く装飾を眺めてたけれど、ふとぼくへ向き直る。
「有り難う、グレイ」
その声も表情も凄く優しくて…ぼくは初めて、心から嬉しそうなネプを見た。
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