■-15

グレイの日記-

 クリスマスが終わって、新しい年が来る。
 そういえば、こんなイベントを特別に思った事なんて無かったな。
 ぼくは今まで独りぼっちだった。その時は寂しさなんて意識してなかったけれど、今は思う。もう寂しくないなって。



ネプの記憶-
 今日も無事に依頼を終えて拠点の宿に帰る。家ではないけれど、最近『帰る』と言ってしまう。
「…で、其処の国では年越しに決まって食べるものがあるらしいよ。名前は何だったかな…」
「どんなの?」
「ええと…、見た目は灰色で、細長くて、しなやかで…パスタみたいなもの」
「灰色のパスタ?焦げの味がしそう」
 取り留めも無い雑談が妙に心地良いのは何故だろう。思えばこうやって他人と長々と話すのも、この子が久し振りだ。
 話が途切れた頃、ふとグレイが嬉しそうに笑う。

「年越しって、嬉しいんだね」
「そうかな、何か変わるって感じもしないけれど」
「でも、こうして何かの区切りを誰かと過ごせて、ぼくは嬉しいなあ」
 この子には家族や友人がいないと前に聞いたけれど、そんなに今まで一人だったんだろうか。
「ネプは今まで誰と過ごしてたの?人間だから、家族もいたんでしょ?」
「まあ…昔はね」
 そうとしか言えない。あの猟奇的な人達の事をあまり思い出したくない。
「やっぱり楽しかった?」
 俺は動物の世話をするのが好きだった。そして度々その動物が変死していた。両親は何が目的だったのかは、目撃したその日の内に火の海へ消えた。
「うん、まあまあ」
「まあまあって…それじゃよく解らないよ」
「結構早くから一人旅だったから覚えていないんだよ」
 その時、時計が夜遅くを示している事に気付く。
 半ば無理矢理話を打ち切って、逃げるように眠りに就いた。




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