■-16
記憶-
風切り音が燃えている事を教える。
あの時、二人を助けようとしなかったのは何故だったんだろう。
生き残らせようという考えが元から無かった。許せない、愛が無い、それよりも。
只自分が生き残りたくて、一人で逃げたんだった。
溶けていくにおいと、迫る恐怖。
あの子は何も言わない。何も言えなかったのかもしれない。だから真相は解らない。けれど。
もし、助けを求めていたなら、俺のした事は多大な裏切りだ。
それを解っていながら殺してしまったのは、やっぱり自分が死ぬ事を避けたんじゃないか。
目を覚ますと、飛び起きこそしなかったけれど、やけに心臓の鼓動が体に響いていた。
久し振りの嫌な夢は、今の自分を責めるようなタイミングだ。
目を覚ませと言っているんだろう。俺は綺麗な奴じゃない。昔からそうなんだ。
償いもしない、復讐もしない、人としての行動さえ、自分一人の為に捨ててしまったんだ。
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