■-33

グレイの日記-

 今までずっと頼ってきた物が、まさかぼくを丸ごと食べちゃうものなんて思わなかった。
 負けたくなんてない、なのに、ぼくの中のものはどんどん大きくなっていく。
 頼るくらい強かった物に、どうやれば負けないで済むんだろう。
 何も思い付かないよ。



ネプの記憶-
 誰かに揺さ振られて目が覚めた。
「ん…」
 ぽたんと何かが落ちてきて、それが目の前にいるグレイの涙だと解って意識が跳ね起きた。
「グレイ!?」
「ネプ、ううっ、どうしよう、食べられちゃう、どうしようっ」
「落ち着いて、ゆっくり話してごらん」
 居住まいを正して、泣きじゃくるグレイから話を聞く。
 グレイの感じた違和感の正体、それがあと少しで出てくる事、そしてそれが食らおうとしている物の事。

「そんな」
 口をついて出たのはこんな言葉しかなかった。
「止めようは無いのか」
「解んない…解んないよ」
「解らなくてもどうにか……」
「解んないよ!」
「なっ、それで諦めていい訳無いだろ!」
「でも!どうしたらいいかなんて解らないよおっ!」
 グレイにしては珍しい大きな声で気付く。一番怖いのは他でもないグレイじゃないか。
「…ごめん」
 そっとグレイの頭を撫でていると、グレイは飛び込むように抱き付いてきた。体の冷たさを嫌っていたのに、自分から。
「怖いよお、怖い、怖い…」
 震えて泣いているグレイに何も言えず、それが堪らなく悔しくて、強く抱いているしか出来なかった。

---あと60日



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