■-37

グレイの日記-

 これが本当に最後なんだって、一つ一つそう思って、大事に終わらせてきた。
 でも、やっぱり満足なんて出来なくて。
 我儘だって言われちゃうのかな。ぼくが生きたいと思う事は。



ネプの記憶-
 身辺整理らしい事も出来ない侭、日が過ぎていく。グレイはかなり体調を崩しているようだった。けれど誰かがいる前では、気丈に振る舞っている。本当に強い子だ…見ていて居た堪れない。
「ねえ、ネプ」
 今も、少し強がりがあるんだろうか。
「ぼくがいなくなったら、ぼくは故郷に帰った事にして欲しいんだ。話をしていた人達に、言いたかった事を伝えておくから」
 辛い言葉だった。けれど、もう断る事も出来ない。結局そうなってしまったからだ。
「解った、ちゃんと伝えておく。君の言いたかった事は全部伝えるよ」
「有り難う…嬉しいな」
「嬉しい?」
「ぼくは、みんなの中では、まだ生きていられるって事だから」
「…だけど」
 あまりに悲しくて、言葉が漏れてしまった。
「もう会えないじゃないか…!」
 みんな、というよりは、只の身勝手な言葉だった。グレイも解ったのか、悲しげな表情になる。
「…ごめんね、ネプ」
「謝る必要なんか無いよ」
「ぼくは…ネプの側にいたかったな」
 歪んだ声が、全て語っていた。

---あと5日



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