■-38

グレイの記憶-
 辛くて悲しくて、眠れなかった。
 内側はぐるぐる動き回って、本当に出てくるんだって思った。
 今日もいつもと変わらない日だったのに、明日で終わっちゃうなんて。

「…ネプ」
 不安で堪らなくて、呼んでみた。
「眠れないのか」
「うん」
 それ以上ネプの言葉が続かない。
 ぼくは寂しくて、ネプにお願いした。

「一緒に寝ていい?」
「うん。おいで」
 ベッドから抜け出すのも辛かった。でも、ネプの分のブランケットに潜り込んだら、少しだけ安心出来た。
 ネプがそっと頭を撫でてくれて、ぼくは急に涙が出てきて、気付いたらネプに抱き付いてた。

「ぼく、もっと、色んな事をしたかったんだ、見た事の無い花を見たり、お祭りに沢山参加したり、地下の国や雪国にも行きたかったし、神様にお参りもしたかったし、家族だってまだ知らないし、大きくなったらお酒だって飲んでみたいし、もっとアイスクリーム食べてみたいし、ネプの故郷や、ぼくの故郷にも二人で行って、凄い職人にもなりたくて…」
 ネプは文句一つ言わないで、優しく相槌を返してくれた。
 ぼくは今やりたい事を思い付くだけ言って、それが出来ないんだって改めて解って、あとは泣いてるしか出来なかった。

「グレイ」
 ネプの声は、今まで聞いた事も無いくらい震えてて。
「ごめん…」
 あったかい中で、それだけが凍えてた。

---あと1日



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