狂い咲きが華


■-3

 ジェイスンが倒れ込んだのを知るのにも数瞬の遅れがあった。耳元で聞こえる苦しげな呼吸は疲労の濃さを物語り、同時に未だ衝動に苛まれていると訴えている。ハーキュリーズは己に残された体力があると認識し、覆い被さるジェイスンから抜け出すとその体を転がして跨がった。下を向くと予想通り、反応を示し続けるジェイスンの体がある。互いの粘液に塗れて妖しく光を反射し、次を求めて痙攣する度に生々しさを主張していた。
「大丈夫だ……、楽に……」
 言うなり少し腰を浮かせる。仰ぐ体にハーキュリーズの体から溢れた粘液が垂れ、今までを雄弁に語った。そうしてある時一気に内部へと突き込まれ、ハーキュリーズの最奥へと強く当たる。
「あはぁっ……!」
 衝撃にハーキュリーズはジェイスンへと倒れるが、腰をもう一度浮かせ、再び重みに任せて下ろした。二回目の突き上げで途端に貪欲になり、粘液質な音を立てながら腰を振る。
「あっ、んっ、んうっ、ふぁ、あぁんっ」
 自ら何度も突かれる事も初めてではない。だが今は違うと、今の己は真に望んでいるのだと、ジェイスンへ縋りながら思う。そうしてまた心身が高ぶってきたところで、背に回る腕へ気付いた。
「ジェイスン……?」
 ジェイスンの顔を窺うと、苦しげな呼吸は変わらないが、薄く開かれた目に意思が戻り始めている。
「は……ハーキュリーズ……」
 永きの果てに名を呼ばれた心地になり、意識の乱れたハーキュリーズへも喜びをもたらした。ジェイスンは助けを求めるように、助けを求められるのがハーキュリーズしかいないと訴えるように、背を掻き抱いてくる。
「うう……ハーキュリーズ……ハーキュリーズ……っ」
 恐怖と悔しさはまだジェイスンに涙を流させるが、その素直さがハーキュリーズへ安らぎを与えた。安らぐ侭にジェイスンへ口付け、慰めと共に想いを伝える。熱い舌が絡み合う度に胸中へ込み上げる切なさがあり、夢中にさせた。
「んむ、ん、んっん……!」
 どちらともなく呻き、またハーキュリーズの内部へと注がれる。逆流し、番う部分から溢れ出るさまはハーキュリーズを蹂躙する象徴にも思えたが、それで良いのだとハーキュリーズは満たされる己を自覚した。
 口を離すと、ジェイスンの表情に安堵の色が見える。
「気分は、どうだ……?」
「ん……、ちょっと、まし……」
 会話が出来る程の余裕は生まれたらしい。しかし未だハーキュリーズの内部にある体が再びの反応を示しているところ、余裕は言葉通り僅かなものだった。
「それより……まさか、ハーキュリーズも……」
「いい……、寧ろ、好都合だった」
「じゃあ……さ……」
 その侭でジェイスンが身を起こし、ハーキュリーズの体を抱えて膝に座らせる。向かい合うハーキュリーズの瞳に切望が宿った。
「もう、大丈夫、だから……一緒に……」
 ハーキュリーズの微笑みが全てだった。



「あはっ、ああぁっ、あんぅうっ」
 胸の先端を舐め擦られると共に、もう片方を指先で捻って弄ばれ、より鋭敏になった感覚の波に攫われる。絶頂に達するまでの時間が短縮されているのは錯覚ではなかった。ジェイスンの手に包まれた体も、存分に欲を撒き散らしながら次を訴える。欲する感覚を求めて両者共に動きを止められず、内部へと注がれたものを掻き出してはまた注ぐ事を繰り返していた。
「はぁっ……、すご……きもちい……」
 舌を使う中でジェイスンが躊躇いも無く言葉を零す。そして続きがあった。
「ハーキュリーズは、どう……?」
「あぁ……ん、そんな……」
 言葉を返そうとした瞬間、胸をきつく吸い上げられ、痺れるような感覚がハーキュリーズの体を駆け巡る。内部も合わせて蠢動し、欲する侭にきつく締め上げた。
「はぁ……っ、いい……」
 感覚へ応えるようにまたもハーキュリーズの男から欲が散らされる。ジェイスンの体を好きなように汚し、胸元から番う箇所までを流れていった。その光景にますます高揚し、互いに動きを速める。
「あっあっ、あんんっ、もっと、もっと……!」
 初めて聞く強請る声も、形振り構わない姿も、今はジェイスンだけのものだ。主張するように内部を強く突き上げる。
「あぁあっああぁああっ……!」
 注がれるものを望みの侭に受け、ハーキュリーズの心身が歓喜して尚、終わる気配が無かった。
 これは悪夢ではなく、幸福な現実なのだろう。



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