「多重モノがたりへようこそ」あらすじ
■-4
剣の王はフレイのテレキネシスも超人的な動きで避けるが、隙を見たビジョンが体当たりし、凍霞がとどめを刺す。そうしてキングの剣を入手した。
消耗しているが一度撤退した分遅れがある。急ぎ盾の城へと向かうと、大臣の謀反によって盾の王が殺害されるその瞬間に鉢合わせた。逃げる大臣を捕まえ、戦いの末にキングの盾を奪う。
「俺達、この国に追われたりしないかな」
ミゼレイの疑問に凍霞が答えた。
「安心しろ、この国が無くなる」
英雄の町へと戻り、玄武との戦闘に備えてこの日は休息を取る。
疲れたのか、ビジョンとミゼレイはすぐに眠りに就いた。凍霞は眠れず、気分転換に夜の街へと出る。英雄の像の前に来たところで、フレイの姿を見付けた。
「それが気になるか?」
頷くフレイ。
「此処まで全てが貴方の話に沿って起こった。だからこの後も信じるしかないけれど、信じたところで強くなれる訳では無いから、不安なの」
気弱なフレイを意外に思うと同時に、フレイの人らしさを垣間見る凍霞。
「不安は当然だろう。不安に思ってないどっかの二人のほうがおかしいんだよ」
「……そうかもしれない」
フレイの表情は相変わらず硬い。何もかも読めないフレイへ、凍霞は今まで全く気にしていなかった事を尋ねた。
「お前はどうして塔に挑むんだ? やっぱり楽園か?」
フレイは俯き、迷いがちに答える。
「それだけを、覚えていたから」
フレイはいつか、大きな事故に遭ったらしい。一命を取り留めたが、想定外の出来事が起きた。
全てを、自身の名前すらを、忘れてしまった。周囲からは最早別人だとさえ言われ、結果的に罵られた。
ただ一つ覚えていたのが、塔を上るという意志だった。
周囲との関係は既に絶たれていたも同然であり、単身去るにも困らなかったという。
「それが、お前がお前の為に出来る唯一の事なんだな」
フレイはまだ俯いている。
「私は、その為に貴方達を利用している事になる」
まだ迷いのある言葉に、凍霞は軽く笑った。
「人付き合いなんてそういうもんだろ。利害の一致ってやつだ」
言いながら、自身の言葉に刺されるような心地になる凍霞。こうとしか言えなかった。
フレイは一つ息をつく。安堵だった。
「そうだと、私も助かる」
理由こそ違えど、フレイもまた現状に困惑している。それを知った凍霞は、何処か安心を得ていた。世の中に振り回されるのが珍しい事ではないと知ったからなのかもしれない。
翌朝、四人は身構えながら英雄の像へキング装備を戻す。
凍霞の話の通りに黒のクリスタルと、続けて玄武が現れ戦闘に。
堅い守りと厳しい攻撃で徐々に追い詰められていく四人だったが、そのさなかでフレイが突然変異により「冷気」を会得。凍った玄武を凍霞がバトルハンマーで叩き割った。
英雄の町の宿で休息を取り態勢を整える中、凍霞は強い目眩に襲われる。
「デカ亀の毒に中てられたのか!?」
焦るビジョンへ凍霞は辛うじて返答する。
「いや……違う、こんな……のは……」
それ以上を言えず、凍霞の意識は闇へ落ちた。
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