「多重モノがたりへようこそ」あらすじ


■-6

  はじめから
 ▷つづき



「うああぁぁああああ!」
 絶叫を上げて目覚める凍霞。まだ残る苦痛の感覚に藻掻く。
「うおっ、なんだあ!?」
「やばいかも、フレイ呼んでくる!」
 聞き覚えのある声に跳ね起きると、やはりビジョンと部屋を出ていくミゼレイがいた。
「此処、は……」
 息も絶え絶えに呟いた凍霞へ、ビジョンがまくし立てるように告げる。
「此処は英雄の町! 玄武ってデカ亀倒して、そのあとお前が倒れて、夜になったとこ! 解るか!? 忘れてないか!?」
 あれから日も変わっていないらしい。凍霞は混乱の中に一欠片の安心を覚え、ビジョンへ辛うじて頷く。
 やがてミゼレイとフレイが部屋に入ってくる。
「何が……いえ、何かあったのね」
 フレイの言葉に凍霞は蒼白な顔で答えた。
「あれは、絶対に、死んだ」



 凍霞は五階での出来事を三人へ話す。
「正直、此処が現実かどうか、もう自信が無い……」
 弱々しい凍霞へビジョンが悪態をつくように言う。
「こんな喧しい夢があるかってんだ」
 自身の存在を一旦横に置いての言葉だったが、凍霞は恐怖のあまり返答すら出来なかった。
 其処へフレイが静かに告げる。
「たとえ、貴方がもう死んでいて、これが貴方の夢だとしても。貴方は貴方の思う侭にしたほうが、貴方らしくしたほうが、まだましかもしれない」
 それは自らを見失ったフレイの羨望でもあった。凍霞はやがて苦笑する。
「俺らしく、か。なら、地獄の果てまで付き合ってもらうぞ」
 自暴自棄などではない、微かな希望の中を進む事を決意した。



 ベーシックタウンにそびえ立つ塔の封印を解く。
 偽りの楽園、その上の地獄を見て、五階・海洋世界へと辿り着く。
 海底洞窟を抜け、その先で動く浮島に乗り、小島で空気の実を得る。凍霞の話した通りに進む出来事にやはり奇妙さと手応えの無さはあるが、その先を思うと凍霞自身も全く油断は出来なかった。
 海の渦潮へと呑まれ、海底の竜宮城へと進む。最奥の卵がひしめく部屋で赤珠を入手すると、やはり青竜が現れた。
「やっぱり出やがった!」
 ミゼレイの反応に青竜は笑う。
「期待通りか? なら存分に応えんとな!」
 青竜の角が光り、凍霞が叫ぶ。
「下がれ!」
 放たれた稲妻を辛うじて避ける四人。青竜が憎たらしく笑った。
「勘はいいが、次はどうかな!」
 青竜も凍霞の事を知らないらしい。
 フレイの冷気が青竜を床に繋ぎ止め、ビジョンとミゼレイが嘴で青竜の両目を潰す。激高する青竜は暴れ回った。
「くそっ、こんな、こんな筈は!」
「そうだろうな。今度こそこっちの番だ」
 狙いを外した稲妻の降り注ぐ中で、凍霞のデリンジャーが青竜の口から脳天を撃ち抜いた。
 青竜が残した肉をビジョンが食い、鳥系・アルバトロスからドラゴン系・ベビードラゴンへと変化する。



 此処から先は未知だった。
 城を追われ隠居していた竜王から青珠を授かり、二つの珠が合わさると青のクリスタルとなった。塔の封印を解き、先へと進む。



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