あなたの夢おてつだい だけ します


■-5 貴方の全部を愛してる

「一目惚れだったの。ふわふわの巻き毛、ぷにぷにのほっぺ、小さな唇、きらきらの瞳、もう食べちゃいたいくらい可愛くて!」
「ふーん」
 もうどのくらい長話に付き合ってるんだろう。
 今回の依頼者は所謂人魚だ。びたんびたん床を鰭で叩くのも合わさって、凄く煩い。
「で、どういう体が欲しいの?」
 そろそろ本題にいかないと、僕の神経がすり減って無くなる。
「えっとね、まず脚が欲しいな! それとね……」
 人魚が体のパーツを選ぶ。基礎は人間、大柄で筋骨隆々。なんか想像と違う路線だ。
「どうしたの? もしかして何かいけなかった?」
 考え込んで動きが止まってた僕に人魚が首を傾げた。
「ううん。決まったし始めよう」
 呼ぼうとして上を見たら、音も立てずに下りてくるフィオリが見えた。
「承った。きっと満足いくだろう」
 人魚が光の柱に包まれる。この中で体の置換が行われるみたいだけど、どんな技術かとか詳しい事は僕は知らない。フィオリは宙に浮かぶ幾つものボタンを操作し始めた。
「時に、ベンヴィ」
「何?」
 触手で器用にキーボードっぽい光を打ち込みながら、フィオリは僕のほうを向いた。
「お前の欲しい答えは、依頼者が既に告げている」
 駄目押しに、飛んできた記録媒体が人魚の身体情報を正確に解説してくれた。
「ああ、そういう事かあ」



 人魚は無事に愛する人の元へ辿り着きました。
 逞しい脚で逃げる人へ追い付き、太い腕で体を掴み。
「愛してる!」
 頭から丸齧りにしました。
 そんな光景を見届けながらフィオリが一言呟く。
「いやはや。流石の鮫だな」
 骨の髄まで愛されるほうも大変だ。



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