あなたの夢おてつだい だけ します


■-11 団結の果て

 依頼者はうんうん悩みながら本の群れを見てる。
 依頼者は一国の主で、要望も国の為だった。みんなをまとめたい、その為にみんなの悩みにすぐ気付きたいっていうものだ。
 そうなると、あれだと思うパーツはある、けど。
「憎き者になったとしても構わない。私は民に、ただ幸福になってほしい」
 こう言うんだから。
「あのさ、手っ取り早いのはあるけど――」
「どのような」
 僕が言い終わらない内に依頼者は食い付いた。
「まあ見せるから。どうするか最後はあんたが決めてね」
 夢を叶える手伝いはするけど、その後どうなっても僕達は知らない。だから最後の決定は依頼者に任せてる。依頼者の納得無しだと色々面倒な事だらけだし。
 依頼者に本がパーツを見せた。
「これは……そうか。確かに、憎き者になりつつ、皆を見守る存在だ」
 見た目優しそうで信念もある。一国の主としてどうなのかは、僕は知らない。



 結果、あの人の国は滅んだ。あの人が体を換えてすぐに。
 あの人は要塞に体を換えた。国民が全員住めるような、移動出来る巨大要塞だ。其処に全国民が移り住んで、あの人は国そのものになった。
 あの人は国としてみんなを見た。みんなが近々クーデターを起こそうとしてたのも、それが結構前から計画されてたのも見てしまった。
「そうか……そうか……。それならば……」
 ある時、要塞は急に無くなった。空間転移して消えたんだろう。住む場所を失くした国民は大騒ぎしたけど、今は新しい国を作って活き活き暮らしてる。今までしてなかった侵略を繰り返して。
 其処まで見てからフィオリが映像を消す。
「無事、夢を叶えたな」
 あの人の夢の形は、あの人が思ってたのと違うものだった。けど、違ったからってあの人は夢を放り出さなかった。それが苦しくても、国民に幸せになってほしい夢を叶えたんだ。
「あの人、幸せなのかなあ」
 優しすぎたあの人と好戦的な国民と、どっちの幸せの形が正しいか、間違ってないかなんて僕には解らない。見た事がある分、あの人のほうが気になるだけなんだろう。
「さてな。叶った夢で幸せになるのが本人とは限らん」
「やっぱりそんなもんだよね」
 夢を誰かに見ると結構そうなるよなあ。



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