あなたの夢おてつだい だけ します


■-12 石のいる生活

「あーはいはい、夢のお手伝いさんね。助かるわあ」
 今回の依頼者、お酒でも飲んでるのかな。
「あたしね、自分で言うのもあれなんだけど噂話がすっごく好きなのよお」
「へー」
 もう聞き返したりするのも疲れたんで、取り敢えず流しておこう。
「ほら、世間ずれってするとどうしても置いてかれるじゃない? でもみんな守りに入ってるっていうか、なかなか話してくれないのよねえ、でも隠し事しても怪しまれるだけじゃないのって思うし……」
 あんたに原因があるんじゃないの、なんて言えやしない。僕は割り込んで話した。
「とにかく、あんたは噂話をスムーズに聞きたいんだね」
「そう! 噂話って面白いのよねえ、その人の本性が出るっていうか、正直なところが出るのがまたいいのよ、それでね……」
 あんたの本性はもう嫌になるくらい解ったよ。
「とにかく! こんな体があるけど、これでどう」
 依頼者は僕が呼び寄せた本に顔を近付けると、すぐに判断した。
「あらいいわねえ! 愛される存在になっちゃうなんて、やだあ素敵!」
 物凄い思い込みもあるけど、確かに決定は聞いたからね。
「……フィオリ」
「承知した」
 フィオリも疲れてるみたいだった。



 あの人は石になった。大きすぎない、待ち合わせに丁度いい目印の石だ。みんなはあの人のいる場所を待ち合わせ場所や井戸端会議場にした。いい噂も悪い噂もどんどん入ってきた。
 けど、ある日。建物を作る為に石を撤去しようって案が立ち上がった。案は実行されて、石は撤去された。
 此処までだったら、残念な話だったんだろう。



「また違う人が着けてるよ」
「価値も更新したようだな」
 フィオリと僕は金持ちのパーティを見てる。
 撤去された石の中から巨大な宝石が見付かって何年も経った。加工されてアクセサリーになったあの人は、金持ち達の間を渡る有名なものになった。きらきら輝きながら、金持ち達の煌びやかな噂と腹黒い噂を聞きまくってる。
 ただの石のほうも、大型ショッピングモールの材料の一部になった。みんながたむろす場所になってる。
「まさか聞き耳立てられてるって知ったら怖いだろうなあ」
「まあ、密告や暴露をされんだけましだろうな」
 あくまで噂を聞くだけなんだろうけど、秘密を知られるってやっぱり怖いかも。



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