あなたの夢おてつだい だけ します
■-13 猛る心の使い方
「あたしは雄の虎になりたいんだ」
依頼者は真剣な顔で僕に言った。
依頼者はサーカス団の一員で、猛獣使い。その中に虎がいる。虎は近頃芸が出来なくなった。虎に付きっきりだった依頼者は、話を聞いてみようって思い付いたみたい。
「けど、訳知りのあんたのほうが猛獣使いに使われるってのは考えた?」
「それは自然な流れだし、まあ、後はその時々でやってくしかないって考えてる」
こういう大雑把なほうが結構先々上手くやったりするし、このくらいが丁度いいんだろう。
「だってさ、フィオリ」
僕が声をかけるとフィオリの声が降ってきた。
「ふむ。柔軟な思考に感謝する。承った」
依頼者は虎になった。虎に会ってみると、虎がいつものように甘える仕草をした。
依頼者が話を聞くと、構ってほしくて芸をやめてたって、それと前から依頼者が大好きだって、出来るなら番いになりたいっていう気持ちを虎から改めて伝えられた。
前の依頼者は種こそ違ってたけど、体の性は同じだった。そして虎の事は大好きで、気持ちに気付いてた。
こうなると、もう問題は無くなった。
「おー」
僕は映した光景を見ながら拍手した。猛獣使いの合図で虎の親子が芸をしてる。
「かなり厳しい鍛錬だったからな」
今までを一緒に見てたフィオリも楽しそうに見てる。
芸に対しては誰よりもあの人が厳しかった。虎との信頼を大切にしながら、ベストを尽くせる方法を模索してる。だから時々、無茶振りしてくる担当の猛獣使いに不満を示す事もある。難しすぎて出来ない事、難しいけど出来るかもしれない事、その違いを解ってくれって訴えるように。
決めに虎が揃って吼える。凄く迫力があった。
「なんか、格好いいね」
「好いた事柄を極めようとするとああなるのかもな」
これを見て、動物を使役するなんて、とか思う人もいるかもしれない。動物のほうからすればその通りだってケースもあるんだろう。
それでも、今こうして見てるあの人達は、あの人達が信じる道を進んでる。それが全てなんだ。
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