あなたの夢おてつだい だけ します


■-15 落第

 今回の依頼者は、戦闘狂っていうのかな。
「強くなりたいんだが、出来るか?」
「じゃあ、あんたの目指す強いパーツを選んでよ」
 大きな体、毒の出る牙、その他諸々選んで、作業開始した。
 作業中のフィオリが僕に軽く言う。
「ベンヴィ。準備しておけよ」
「久々だね、油断はしないよ」
 作業が終わって、依頼者が光の柱から出てくる。化け物って言葉がまあまあしっくりくるんじゃないかな。
「おお、これはいい。では……」
 依頼者がぐっと足を踏み込んだ。
「此処を貰おう!」
 依頼者が向かったのはフィオリだ。任せよう。
 フィオリが何ともなく言い放った。
「伏せ」
 依頼者は言われた途端に床に伏せて動かなくなった。驚いた顔してる。
「なっ、これは、一体……!」
 フィオリは溜め息ついて、次には滅茶苦茶憎たらしく馬鹿笑いした。
「ははっははははっ、百点満点中のマイナス百点というものだ、ははははっ」
 フィオリは空中で笑い転げてて、依頼者は歯噛みしてて、事が進まないから僕が説明するしかないかな。
「あんたはフィオリに体を換えてもらったんだから、その体はもうフィオリの言う事を聞く体になってるんだよ。僕にも同じ権限があるけど」
「何だと……!」
 普通は使わないでいい機能だけど普通じゃなかったし、その為の機能だし。
「作業するからには対策だってするよ。其処を考えてなかったのが零点。あとのマイナス百点は、あんたが企みを実行する時に体と言葉で予告したってところかな」
 黙って予備動作無しに飛びかかってたらちょっとはましだったのに。まあそれでも上手くいかなかっただろうけど。
 依頼者はぎりぎり歯軋りしてる。
「可愛げが無いな、もっと可愛らしく鳴いてみろ」
 フィオリがにやにやしながら言うと、依頼者は高くてか細い声で獣みたいに鳴いた。
「はっはっは、よしよし一点はくれてやろう」
「お、おのれ悪趣味な……!」
「では、他者のものを奪取しようと企てるのは崇高であると。成る程そうか」
 フィオリの目が意地悪く光ったような気がする。
「ならば奪ってやろうか、その命を、その魂を」
「ひっ」
 鉄板のリアクションにフィオリがふんぞり返る。
「まあ私も非道ではないぞ。一生こき使われるか、その体で世界に放り出されるか、選ばせてやる」
「うう……頼む、逃がしてくれ」
「では去れ」
 フィオリが言った瞬間、依頼者の体を歪みが呑み込んだ。



 あの人は毒を体に仕込んだけど、体のほうは毒に耐性が無かった。
 その事に気付いたのか、気付かなかったのか。フィオリも僕も其処まで見る気が無かった。



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