あなたの夢おてつだい だけ します


■-17 酩酊

 今回の依頼者は、背中がくっ付いた二人だった。魂は個別だから、珍しくこの場所に二人が来た事になる。
「俺は背中の人にちゃんと向き合いたい。だから体を分けたいんです」
 僕は依頼者の横に立って聞いてた。
「あんたのしたい事は解ったけど、もう片方の意見も聞かないといけないからね」
「有り難うございます」
 お礼を言った背中の人は、依頼者と同じ姿をしてた。



 二人の意見を聞いた結果、あの人達は一人一人の体になった。
「やっと会えた!」
「やっと会えた」
 同じ言葉を言いながら抱き合った。あの人は甘ったるい笑い顔を向ける。
「貴方は他の誰にもしない。他の誰にも渡さない。向き合って、ちゃんと俺のものにしたかった」
 背中側だったほうも同じ笑い顔でいる。
「もう、耐えられない……、俺でいる事は、苦しいだけだ……」
「大丈夫。もう大丈夫。だから、来て」
 頷いたのを確認すると、あの人の胴は縦にぱっかり割れて、其処から幾つも腕が出てくる。抱き留めてた体を腕が包むと、一息に呑み込んだ。
 胴の口を閉じると、顔の口から深く息を吐いてから依頼者は一人で歩き出す。其処まで見てフィオリが呟いた。
「絶望と愛は似ているな」
「どんな風に?」
「両者共誘い込み、派手に食らい尽くすものだ」
「けど、メジャーだって事はそのスリルがみんな好きなのかな」
「だろうな。周囲はともかく、当人は心地良いようだからな」
 僕もそんなスリルにどっぷり浸かる時が来るのかもしれないけど、今は来ないでほしいかな。



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