無間の幽鬼
■-13
燃える夢を見た。
炎を払おうと、腕を無意味に振り回した結果がこれだ。
それでもセメンツァの胴体は自分を抱いていてくれた。
森が林になり、そして道が開ける。平原の向こうに大きな町が見えた。
「美味しいものはありますかね?」
呑気に呟きでもしなければ、思い出してしまいそうで苦しい。
道を歩く。日差しは丁度良く、穏やかな天気だ。
「何だかお昼寝でも……出来そうですね」
言い淀みは自分の浅はかさを呪ったからだ。今朝を思い出すような真似を。
セメンツァは不安そうに見ている。その頭を、今度は優しく撫でて、大丈夫だと告げた。
暫く道を行くと、遠くに通行人が三人見えた。金ならあるので、情報収集の為に話しかける事にする。話せる位置に来るまでたっぷりと時間がかかったが、挨拶すると快く返事をした。
「あんた達、山から来たのかい?」
「ええ」
多くは語らないでおく。すると三人の内、初老の女が口を開いた。
「よく無事でいたねえ。あそこは先日、主が殺されてねえ……。物騒な事が起きたもんだよ」
風の噂とは早いな。内心思いながら、そんな事は知らなかったと告げる。
「とにかく、あんたらも気を付けなさい」
「ええ。有り難うございますね。そっちも気を付けて」
そうしてすれ違い、二人は道を行く。
あそこの死体は全て崖下に落とした。彼女の首も。
酷い不快感を感じつつ、フレイアルトは溜め息をついた。
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