無間の幽鬼
■-18
闇色の中を悠々と歩く。どうやら全滅させたらしい。絶滅と言った方が正しいのだろうか。どちらにせよ知った事ではない。
「あ、出口ですかね?」
光色が前方にぽつんと一つ見えた。しかしセメンツァの言葉が飛ぶ。
「うえと、した……」
言われた通りまずは上を見上げると、空間がぼろ布にでもなったように光色が幾つも見えた。見下ろしてみると、同じように光っている。
「どうしましょうかね、これ」
セメンツァは意見しない。好きなところへ行け、と言いたいのだろうか。フレイアルトは少し考え、思い付く。
「向こう側が封印されてるっていうところは解りますか?」
「いろは、むらさき……、こちらからは、こわせない……」
「それ、実体があったらの話じゃないですか?」
セメンツァが気が付いたように一瞬目を見開く。存在していないものを弾く事は想定していないだろう。受け入れられるかも解らないが、向こうに渡って封を壊せばいいのではないか。
封印世界を選ぶには理由がある。都合の悪いものを封じる力があるならば、そこそこに平和な世界だと思ったからだ。
上に行こう、そう思って足を上げると、階段があるように体が浮く。この歪んだ空間は思い込みで動けるらしい。見えない階段を上り、探し出した紫色の光の前に立つ。
どの程度で壊せるのだろうか。試しに、実体を無くした腕を手首まで突っ込んだ。紫色の光の中に入った腕は何も感じない。異物を通した状態で実体化させてみた。
軋むような音がした瞬間、金切り声のような甲高い音を立てて紫色に罅が入る。そして最後には風化するようにぼろぼろと崩れ、封印が消えていった。
フレイアルトは不機嫌な顔で呟く。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか、悲鳴まで上げて」
「ふういんは、いきもの……、いま、ふういんは、しんだ……」
セメンツァの言葉にフレイアルトは目を白黒させ、一言言った。
「なんだ、ただの生き物なんですね」
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