有漏路の幽鬼


■-6

 金は割と集まった。
 時々口寂しい時に食事をする、それだけへ金を使う事に飽きてきた。
 次は何をしよう、それは眠らぬ繁華街が提案してくれた。何より興味もある。
 女に声をかける。背の低い自分は相手にされないだろうが、金なら相手をしてくれるだろう。
 数人話しかけたところで、提案に乗った女がいた。
「それにしても、日本語が上手ね」
 これはどういう事なのか。
「そうですかね」
 何故外国人に見られたのか、疑問は外に出さないでおく。
「でも白人さんなのに背は低いのね、顔も日本人っぽいし」
 血の引いた顔色は、まさか死んでいるとは思われまい。ハーフだと説明しておいた。
「名前は?」
 尋ねられ、答える時間稼ぎに、自己紹介を忘れていた事を謝る。
 あの親の付けた名前。だが、丸きり変えても間違えそうで面倒だった。適当に言葉を探す。簡単な英単語を浮かべて、丁度見付けた炎に付け足した。
「フレイアルト、です」



 ホテルに転がり込み、女には目隠しをさせた。不測の事態を見られてしまっては色々と面倒だ。
 女を押し倒した第一声は苦情だった。冷たい、水のシャワーでも浴びていたのか。
 水風呂が好きで、と口で言いながら、動かぬ心臓が飛び跳ねそうだった。死人である、体温も同じく死んでいるのだ。
「まあ、気持ち良くしますから」
 そう言い訳して、自分で得た、周りから聞こえた、全ての知識を動員して、行為を続けてみる。
 行いながら、自分はこれが好きなのだと気付いた。自慰と同じか、それ以上か、興奮して夢中になっているのを自覚する。
 途中、気を抜き過ぎて手が女の体を貫通した。目隠しをしていて良かったと思ったのは、結局この一回だった。
 アイスプレイがどうのと更に苦情が聞こえたが、無視した。
 気分がいい、気持ちがいい、とにかく気持ちがいい。
 死んでから初体験するとは思わなかったが、死んでいなかったら体験しようとしなかったかもしれないとは思った。
 女の身など考えず、女の体でただただ遊び続けた。



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