有漏路の幽鬼


■-7

 行為の後。女と別れた直後だった。
 如何にも柄の悪そうな男数人に路地へと引っ張られた。無駄な抵抗はせず、男達の話に耳を傾ける。
 金持ちだな。女に金を渡していただろう。一部始終見ていたらしい。
 言葉を聞いても抵抗はせずにおいたが、欲望を発散して心地良く怠惰に浸りたかった気分を害された事で、無性に腹が立つ。
 この腹が立って仕方無いものを、発散してしまいたかった。思い留まらせるものも無い。証拠は消えるのだから。
 袋小路まで来て、早速自己暗示をかけた。
 体は拳を砕く硬さに。そしてぶつけられた拳から返り血を浴びた。
 思えば、これが引き金だったのだろう。
 何となく、尖らせた指で躊躇い無く目潰しした。其処から飛び出た結果が、のた打ち回る反応が面白いと思える。
 この面白いおもちゃで遊びたい。逃がしては勿体無い。先程とは別の欲望が顔を出す。
「触手プレイは好きですかー、聞き分け無い人はちょきんちょきんー」
 悲鳴は転がっていたごみを無理矢理口の中に詰め込んで阻止した。
「ついでにあそこも切っちゃいましょうー」
 次々に赤い液体が零れて辺りが鉄臭くなる。獲物のびくびくと動くさまが、支配欲のようなものを刺激した。
 しかしやがて、反応が弱くなってくる。もう終わりか、いや、まだ終わりたくない。
「隠し事は駄目ですよおおおっ素直に全部出しちゃいなさいっ」
 昔このような仕置きがあったか。裂けていく人間を見つつ、笑った。



 誰かの家に血を浴びた服を捨て去り、悠々と街を歩く。
 あれ程楽しいとは。人を弄ぶ人の気持ちが解ったような気がした。
 あの瞬間体は文字通り人間離れし、最早人間の形ではなかった。
 それでも別に良かった。もう死んでいる身は、面白ければそれで良いのだ。



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