有漏路の幽鬼


■-17

 解らないので。
 あれはマシンガンにしよう。あれはライフル。あれはショットガン。あれは戦車。勝手に分類する。自分が解れば問題無い。
 撃たれてはその威力を体得し、幻の再現性を高めた。痛いのは嫌いだが、復讐が感覚を麻痺させていく。にたにたと笑う自分がいた。
 あと一つ、会得したいものがある。空を見上げて、影を追いかける。今日こそは逃がさない。化け物の体は不可視に出来ないらしい、何度試しても機関銃で撃たれた。
 重い色をした曇天から、黒い点が落ちてきた。彼は笑う。そして、その笑顔が焼かれる。
 この破壊力。正確な熱が解らなくともいい。物質を破壊する圧力の嵐で充分だ。
 全てが収まった頃、ぬらぬらとした火傷に塗れて笑う。
 爆弾の威力は凄まじい。地面は硝子化して輝き、周囲にあったものは全て吹き飛んでいた。



 苛立っているのが解るので。
 似たようなタイトルの作品でもなかっただろうか。たった一人の大戦争だ。
 舞い上がる。空へ向かって。爆弾が煩い飛行機を落とす。
 降り注ぐ。地へ向かって。様々な弾丸が雨のように発射され、地上のものが貫かれる。
 こちらも体が吹き飛ぶが、痛いだけで止まりはしない。血塗れの欠落した体で笑う。
 偶に手加減してやると、人間が残る。最初は攻撃してくるが、段々と恐怖し、最後には命乞いをする。言葉は解らないが、大体合っているだろう。
「ふふふ、あははっ、あははははっははははっ」
 か弱いものだ。すぐ殺す事もあれば、何日もかけて拷問する事もあった。気紛れに齧る事もあった。
「馬鹿、馬鹿な、馬鹿な人達!」
 高らかに笑ってみせる。見せ付けてみせる。与えるものを。
「馬鹿のやる事なんて、理解したくありませんよ!」
 自滅する者など、調子に乗った者など、思い上がった者など、我儘な者など。馬鹿は馬鹿らしく、仕置きを受ければ良いのだ。
 何もかも馬鹿だ。頭のいい人を殺して、馬鹿が生き残ったこの世界。
 救いようが無いので、殺していくしかないだろう。この作業は恐らく終わらない。何せ馬鹿であるから。
 溜め息をついて、馬鹿をまた一人潰した。



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