「アァーッ。なんだよ朝っぱらから。
こっちは久しぶりの休日なんだ、寝かせろ。
ハァッ? 福ちゃんと連絡がつかないィ?
んな……忙しいんだろ。あの活躍だ、無理もねェ。
ン? 数日前から? まぁ、そんな時もあるんじゃナァイ?
放っておけ。アァッ? オレらしくねェってどういうことだァ。
なぁ東堂、ちょっと落ち着け。
ア?、新開の様子もおかしい? 落ち込んでる?
『弟を嫁に出した気分』だと。アー、あいつ妙に繊細なとこあっから。
あぁ。アイツの弟はまだ独身だな、確かに。面倒臭ェ。
そっちも放っておけ。そのうち勝手に元気になるだろ。
だ・か・ら、オレは何も知んねェよっ。
ハァ? 今、何つった? 何で金城の名前が出てくんだよ。
巻ちゃん? 巻島がどうした。
巻島も金城と連絡がつかない、だと。
ハァー。お前ら仲良いな。気持ちわりィ。
ッゼ。んな怒んな。
とりあえず、二人とも無事だ。心配すんな。
今頃は、フランス、いやイタリアで新婚りょこ……なんでもねェ。
とにかく、巻島にもそう伝えろ。
まったく、どっちのエース様も滅茶苦茶だぜ。
普通、電話に出ないからって直接ヨーロッパまで行っちまうもんかァ。
日本にいる時にさっさと言えば良かったじゃナァイ。
まぁ、あの特注の指輪ができるまで待ちたかったんだろうなァ。
金城のバカチャンが。
とっくに両思いのくせに遅過ぎんだよ。
まぁ、アイツが全部認めて頭下げたから、ビアンキ貸してやったんだけどな。
ン? どうした、東堂?
全く意味がわからない? おい、拗ねんな。
おめーもそのうちわかる。多分、な。
そうだ、おい東堂。福ちゃんが帰ってきたらお祝いすんぞ。
その頃には新開も元気になってんだろ。
泉田も黒田も不思議ちゃん、とりあえず箱学全員呼べ。
あと巻島、田所、小野田チャン……。
アァッ? 総北の連中も呼ぶのは当ッたり前だろォ。
ハッ。何の祝いだって?
決まってんだろ」
そう言って部屋の片隅に置かれた年季の入った自転車を見た。
朝日を受けて浮かび上がるその碧の鮮やかさに目を細める。
――良かったねェ、福ちゃん。
彼らのいるイタリアの空はきっと晴れている。
【Celeste】