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■無題長編 二章

3日後。げっそりとやつれたシェゾは自分の隠れ家にウィッチを呼びつけていた。
アルルが眠りつづけ目を覚まさず、自分の煩悩云々よりも
このままアルルが死ぬんじゃないかと心配に頭を悩ませていた。
ウィッチは軽くアルルの頬をつねってみるが、アルルが目を覚ます気配はない。
「確かにおきませんわねぇ……」
「大丈夫なんだろうな、おい」
「んー。診てみないと、なんともいえませんわよ」
ウィッチは持参したかばんから聴診器とめがねを取り出しながら答える。
服の上から診断するわけに行かないだろう。後ろを向きながらウィッチにお願いする。
「診るついでに着替えさせてやってくれ、俺がやるのはいろいろとまずい」
「へいへい、タオルや服は勝手に借りますわよー」
どうせ自分は男だ。妙な趣味があるわけでもなし、タンスをあさられても別に気にしない。
それよりもこの数日で空っぽになった冷蔵庫や薬品類のほうが気になる。
「こもりっきりだったんで家に何もないんだ。買出しに出ても構わないか?」
「少しは時間かかりますし構いませんわよ」
「じゃあ、頼む」
後ろを振り返ることなくシェゾは家を出る。
目に刺さる健康的な陽射しが、不健康な身に沁みるようにまぶしかった。

「一通り見ましたけれど、特別異常はなさそうですわよ。
 おそらく消耗した体力を回復しているのだけだと思うのですわ」
かえって来た頃にちょうど診察も終わったようだ。
注射器で栄養剤を打ったのを終わりに道具を片付けている。
ウィッチに着替させえてもらったアルルは、心持さっぱりとした顔で眠りつづけていた。
「病院に事情は説明し難いですし、下手に動かすほうが危険じゃないかしら」
「ということは、しばらく様子見するしか無いのか?」
シェゾはがっくりと肩を落とす。俺、あと数日こんな日々が続いたら死ぬぞ。
「なんとか理性を保って下さいなーとしかいいようがありませんわねー」
にやにや笑うウィッチを殴ってやろうか迷いつつ買ってきた茶菓子の袋を開ける。
「まあご苦労さん。とりあえず、茶でも入れるが飲むか?」
「あら、一人身のくせに気がききますのね。何も入ってないでしょうね?」
冗談は軽くスルーして、コトンと机にシンプルなマグカップを二つ置く。
「前も話した事で相談なんだが……」
ウィッチは受取りつつ一口飲んでシェゾの話に静かに耳を傾ける。
「目がさめたら幻覚を見せられたということでごまかすつもりだが
 それについての口裏あわせ位しておかないと後で面倒になりかねん」
「確かに私と貴方の話に矛盾が出てくると困りますわね。
 正直に話すにはあの純情なアルルさんにはちょっと酷な話ですから」
心底気の毒そうな顔でウィッチはうつむく。
アルルの自業自得だとわかっていても、責任を感じずにいられないのだろう。
「言いたいことははよくわかりましたわ。
 なるべくアルルさんの心にダメージを残さないような話を考えましょう」
「だな…さすがに俺も後味が悪いんでな」
二人は紅茶が冷めるのも構わず、どうアルルにごまかすか話し始めた。
話がまとまりウィッチが帰った頃には日もどっぷり暮れてしまった。
腹が減ったが、ご飯を作るよりもアルルに異常はなさそうだという安堵感と
時間を忘れるほどの会話で頭を使い疲労感でまぶたが重くなってきた。
碌に寝ていない。自分が感じる以上に疲労の限界に近づいていたのかもしれない。
机に頭をつけると、吸い込まれるように意識が落ちていった。


鳥のさえずりが聞こえる。まだ少し眠い……今……何時だろう……
「うーん……」
ん?……?ここ、どこ……?
かすかに開いたまぶたに、見慣れない部屋の景色が入ってくる。
「あれ、あれれっれれぇれっれ!?」
アルルは素っ頓狂な声をあげて跳ね起きた。
「はっ!?起きたか?」
同時にシェゾが転がりそうな勢いでいすから立ち上がる。
がったーんとけたたましい音を立てて転がったのはいすのほうだったが。
びく、とアルルは音のしたほうを向いた。そこにいるのはシェゾで……
ということはここはシェゾのおうち?あれあれあれ、僕、服……って男物のTシャツ?
し、下着もつけてない?!どういうことこれ!
ええと、目がさめたらシェゾのおうちでシェゾの服来て下着つけてなくて……
「ええええ、何これ、何ー?!ぼぼぼぼぼくわななななあああああ」
非常にお約束かつナチュナルな勘違いをしたアルルは
耳まで真っ赤になりながら布団を胸までたくし上げる。
「おい、大丈夫かアルル、どこも痛い所はないか?」
「へへへ、変態っ!何したのっ!」
シェゾの心配をよそにアルルはまくらを投げつける。
「げ、元気なようだな……怪我もよく回復しているようで何よりだ」
まくらを至近距離で顔面に食らってしまったシェゾは鼻を抑えてへたり込んだ。
――怪我?
アルルは動いた時に頭にずきっと走った痛みにとっさに頭に手を当てた。
こぶができているようで、上から薬草が塗られ、包帯が巻かれていて?
自分の身体に幾つか手当てが施されていることに気が付く。
「え、これ……?」
さーっと、頭の中で血の気が引く音がしたような気がした。
「あ……」
頭が冷えてきたアルルに、先日の記憶が少しずつ巻き戻っていく。
「あ、あああ……」
「アルル?」
僕、みんなの話を聞かずに飛び出して、黒ぷよに捕まって、そして、そして……
「うああああ、あああああああっ!」
悪夢の記憶が次々に脳裏にフラッシュバックする。
僕はあんな奴らに犯されて、しかも最期には、助けにきてくれたシェゾに――
がくがくと身体が震えだす。目の前がちかちかする。
「おちつけっ!アルル、アルル、落ち着けって!こっち見ろ!」
「いや、うわああん、うあああああ、うううっ!」
アルルは何も見たくない、聞きたくないというように自らの耳を抑え、かぶりを振る。
そんなアルルの両手をつかみ、シェゾが強引に自分のほうを向かせようとする。
「こっちむけ、聞け、どんな夢を見せられたのか知らんがそれは幻覚だ!
 お前は本当は何もされていない!正気に戻れ!」
「ううっ、ひっ、ぅ……あれ、が、幻覚……?」
あれが…いやでも思い起こせる生々しい、身体に残る感覚が幻覚?
アルルはとても信じられないといいたげな目でシェゾを見つめる。
シェゾは僕を強く見つめ返しながら言い聞かせるように説明した。
「そうだ、黒ぷよが出す粘液には幻覚作用があるんだ。
 女のほうが効果が強く出やすいから女のお前にはいくなって言ったんだ。
 臆病な黒ぷよも繁殖期は興奮して牙をむくこともある。
 深層心理で最も恐れる幻覚を見せて人格崩壊を起こさせ、相手を捕食する。
 それが黒ぷよの習性なんだ。お前、あのままほっとかれたら脳が焼けるか
 生きたまま粘液で溶かされ骨まで食われるところだったんだ」
深層心理でその人が恐れている夢を見せる…?
僕が子供で恋に夢見るような子だったからあんな夢を見たということなの?
「で、でも最後のほうで……シェゾが…幻覚の中で出てきて…」
幻覚だったとしたらそこでシェゾが出てくるのはおかしい。
そりゃ僕はシェゾのことは変態って罵ったりからかったりしていたけど、
正直魔導力だけでも求められる気分はいっていたほど嫌なものじゃなかった。
言葉尻を捕まえてからかって、僕は擬似恋愛気分を味わっている所だってあった。
僕は……シェゾのことは、そこまで嫌っても恐れてもいないはず。
「ああ、確かに俺はお前を助けに入った。
 夢に俺が出たのならその時の状況が幻覚につじつまが合うよう
 目の前の光景をミックスしたに過ぎない」
でも僕はシェゾに迫って、思い出すのも恥ずかしいくらい変態的なことをした気がする。
そんな僕はシェゾにはどんな風に目に映っていたんだろう?
どうしても気になって、おずおずとシェゾに聞いてしまう。
「あの……僕、君に酷いことしなかった?」
「お前が泣き叫びながら襲い掛かってきたから気絶させるしかなかった。
 それしか方法がなかったとはいえたんこぶ作っちまった。謝る。
 拷問でもされたかあまりに強い敵に痛めつけられていたかという所なんだろうが
 所詮幻覚は幻覚だ。早く忘れることだな」
シェゾの説明にアルルは少しだけ落ち着きを取り戻す。
あれは、敵が見せた幻覚だったんだ。僕は、犯されてなんかなかったんだ。
シェゾにも恥ずかしいこと、してなかった。
嬉しさと安堵感に僕はまた涙が込み上げてきてしまう。
「これに懲りたら、もう人の話を聞かずに飛び出すようなことはやめるんだな」
しゃくりあげてくるものをこらえきれなくなったアルルに、
シェゾはぽんぽんと頭をなでながらタオルを差し出す。
アルルはぐしゃぐしゃの顔を隠したくて受取った柔らかいタオルに顔をうずめた。
「ウィッチも心配していた。その手当てや着替えもあいつがやった。
 あと、女性が立ち入り禁止の場所に入ったって知られたら困るのはあいつだから、
 周りの奴らにはこのことは話さないほうがいい。わかったな?」
シェゾの優しい言葉と忠告に、アルルはただうなずきながらあふれる涙を拭いた。
「ごめんね、っく、僕が、話を……ちゃんと聞かなかったから……」
「わかったからもう少し休んでいろ。ウィッチが言っていたが
 脳が薬で受けたダメージは身体にも大きな影響を及ぼすらしい。
 お前は丸3日も眠っていたんだ、相当参ったんだろうな……」
シェゾは静かに隣の部屋に行ってしまった。泣き顔を見るのは悪いと思ったんだろう。
今のアルルにはその優しさがかえって胸にこたえた。
自分の愚かさが引き起こした迷惑に、ごめんなさいと心の中で謝るしかなかった。

「まったく俺らしくもない」
ぐつぐつと鍋に入れた米を煮ながら、シェゾはやるせない気持ちで鍋をかき混ぜていた。
「考えてみたらなんで俺がここまでせにゃいかんのか、まったく」
さっきもアルルがあんまり取り乱すものだから柄にもなく真剣に嘘をついてしまった。
かえって素直に信じたようだから良かったかもしれないが。
「食うかな、病み上がりにはおかゆと相場が決まっているが」
案外あいつにはカレーのほうがよかったかもしれない。
「あいつの身体はカレーでできている」
下らない独り言を呟きながら卵を割っていた所に、アルルがおずおずと台所に入って来た。
「あの、もうぼく大丈夫だから、手伝わせて」
「っ!?これは俺が喰うやつだから手伝わんでいい」
「ええええ?あきらかに病人食なのにぃ?」
独り言を聞かれたかと照れくささに思わず心にもない冗談を口にしてしまった。
しかし数日にした苦労や我慢を思うとこれくらいは言ってやらないと気がすまない。
とはいえ、あまり苛めるのも酷なのですぐに訂正してやる。
「ただのおかゆだが、喰えそうか?」
「う、うん、多分」
「もうできたから皿だけ出してくれればいい。棚から出してくれ」
アルルは素直に棚から皿を出し、シェゾは受取っておかゆを入れ、アルルに渡す。
「適当に盛り付けるから多かったら残せ、足りなかったらお代わりしろ」
「うん、ありがとう、いただきます」
ぺこりと頭を下げてアルルは微笑んだが、どこか笑顔に陰りがある。
まだ少し身体の痛みや疲れ、心労が残っているんだろうが、
いつもだったらそれだけで人を元気にさせるような笑顔も振るわないみたいだった。
「うまくも、不味くもないな」
「そうだね」
もくもくと二人でおかゆを食べる姿が、どこかぎこちなくて滑稽だった。
ポツリと、少しずつおかゆを口にしながらアルルが言った。
「ごめんね、助けてくれてありがとう。たくさん迷惑かけたね」
「なんだ、そんなこと気にしてたのか?」
食事の手を止めて、アルルは顔を上げる。
「ねえ、なんで僕の魔導力取らなかったの?」
答えるのもめんどくさいといいたげにシェゾはおかゆに目を落としたまま答える。
「あのなぁ。最低でもウィッチにはばれるだろ。
 そんな時に人の魔導力取ったなんて気付かれたらその場で殺されるぞ俺。
 というかそれ以前にお前が死ぬかと思った。死なれたら魔導力も取れん」
「そっかあ。ねぇ、もう1個聞いていい?」
「なんだよ……」
呆れたようにシェゾはアルルを見る。
「僕に、手を出さないの?」
思わずぶふっとおかゆを噴出してしまう。人の苦悩も知らないでこいつは!
「だ、誰がお前なんかに手を出すかっ!俺が欲しいのは」
「魔導力、ね」
シェゾの言葉を先回りしさえぎってくすくすとアルルが笑う。
からかわれたと気が付いたシェゾは乱暴におかゆをかき込んで動揺をごまかした。
「他人をからかう余裕も出てきたならもう追い出してもよさそうだな!」
「うん、これ頂いたら片づけくらいはするよ。そしたらお邪魔するね」
「あー、別に、水につけといてくれりゃいい」
「ううん、お世話になったんだからそれくらいさせて」
「まあ、お前がそういうなら」
いつもよりもずっと素直な態度にシェゾはどうしても調子を崩してしまいがちになる。
言葉どおりにアルルは自分で皿を片付けて帰っていった。
嘘も信じたようだったし、すぐに忘れて元通りの日常が戻ってくるだろう。
そう、その時はのん気に思っていた。


家に帰ってきたアルルはシャワーを浴びたくて仕方がなかった。
「ウィッチの手当てのお陰でかなり身体が回復したのはわかるけど、くさいよぅ」
アルルはこのつーんとする傷薬の臭いが好きじゃなかった。
「お風呂にも入ってなかったんだし、まずはシャワーで心機一転!」
それにどこから幻覚かはわからないけど黒ぷよに粘液かけられたのは確かだろうしね。
シェゾが言った通りにウィッチが身体をぬぐってくれたんだろうけど、
考えるとさすがに女の子同士でも恥ずかしいなぁ。それにこれ、シェゾの服だし…。
アルルは脱衣所でシェゾに借りていた服を脱ぐ。後で洗って返しにいかないと。
普通は男の人の家で泊って、服を借りてって言うのは――
ぼっ、と自分の想像で真っ赤になるアルル。こんな時に僕は何を考えているんだ!
ついぎゅうう、と脱いだ服を抱きしめる。
薬草の臭い以外がするわけないのに、シェゾの匂いがした気がした。
「これじゃ僕が変態だよ。でも、案外シェゾ優しくて真面目さんなんだなぁ」
危ない発言をすることもあるけど、多分本当にあの状況で僕に何もしなかったんだし。
男の人なだけあって手が大きくて暖かかったなぁ。顔も悪くないのに勿体無い。
ウィッチの監視もあったのかもしれないけど、それでも何かしようと思ったら出来――
「だから僕は何考えてるんだっ、これじゃ何か期待してたみたいじゃないかっ!」
握り締めていた服を脱衣籠に叩きつける。
……でも、ちょっぴりがっかりした気分だったのは本当だ。
「前にドラコに借りたちょっとえっちな漫画のせいだよ、きっとそう」
シャワーのお湯と水を調整しながらいいわけじみた独り言を発するアルル。
そういえば面白い漫画貸して、といったらエッチな漫画だったからびっくりしちゃった。
可愛い女の子が素敵な男の子に監禁されて身も心も虜にされるって内容だったっけ。
ひとりでしたことすらなさそうなアルルちゃんにはこれが良いかもねーなんていうから
どんな漫画かと思ったら。
「あんな漫画読んじゃったからエッチな幻覚見ちゃったんかなぁ」
頭から暖かいシャワーを浴びる。手櫛で髪を書き上げると、すこしべたついて不快だった。
水にどろっとした粘液が溶け、体を伝い流れていく。
「うわあ。やっぱり黒ぷよの粘液が髪にたくさん残ってる」
ぬるっとした感覚が消えるよう念入りに泡をつけて洗い流す。
「僕もいつか、あんなぷよじゃなくて素敵な人に抱きしめてもらえるのかなあ」
黒ぷよに見せられた幻覚を思い出す。
あんな汚らしいことじゃなくて、好きな人とだったらもっと普通に一緒に気持ちよく……
「シャワーの温度上げすぎたかな、なんだかのぼせそう」
髪から滑り気が泡と共に流れていくにつれ体が火照っていくようで、アルルは水道をひねり、
水の分量を増やしてシャワーの温度を少し下げる。
腕にたっぷり泡をつけて流し、次に胸に手を当てた。
他の人に比べたら多少小さいかもしれないけど、形には自信のある胸がそこにあった。
「んっ」
ただ自分で洗っているだけなのに、いつもと感覚が違う気がする。あつくて、ドキドキする。
幻覚の中でふれられたとき、……嫌だったけど、気持ちよかったな……
あれは幻覚だからかな、それとも?
「ひぁっ」
いけないことだと思っているのに、自分の意志とは反対に自分の指が胸の先端をさわってしまう。
あの時と同じような快感が背中を通り抜けた。
指が自分以外の誰かにのっとられているかのように勝手に動き始める。
「んっ、っ」
両手で胸を刺激しながら、人差し指で乳首をこりこりと転がしてみる。
「はああっ、んん」
シャワーで温まった身体が、別の意味でも熱を帯びてきた。
自分の身に降り注ぐシャワーが、なんだかくすぐったく感じてしまう。
無意識にアルルはシャワーノズルに手を伸ばしていた。
「あああ、だめ、こんなの……」
胸の先端に、シャワーを当てるだけでも声をあげてしまう。
自分の身体が別の生き物になってしまったみたいだった。
お湯の温かさに、あの時なでてもらった男の人の手を思い出す。
自分でもその気持ちが、思考回路がわからないままに、開いた手で胸をもみしだきながら、
貪欲に快楽を求めてシャワーで自らの求める場所をなでまわす。
「ひうっ」
そして段段とシャワーが脚のほうへ、最も熱くなっている場所をなでていく。
「ああん、だめ、だめぇ」
しているのは自分なのに、気持ちよくなっていく自分への抵抗感がある。
僕、こんなこといままでなかったのに。
シャワーノズルを床に置き、シャワーが当たり易いように脚を開いてひざをつく。
水流に当たるよう腰を動かすとなんともいえない気持ちよさが駆け巡る。
強く、弱く、上のほうへ、中のほうへ…強弱をつけながら前後左右に腰を動かす。
「んっ、んんっ、あっ」
いつしか、あの幻覚の中で自分がシェゾにしたことを思い出していた。
「シェゾ……シェゾぉ……」
自分から押し倒して、シェゾにまたがって……あの夢の中では、シェゾもぼくに興奮してた。
確かシェゾに身体を押し付けて、布越しに堅くなった所にこんな風に……
いつの間にかあの時の続きをしているような気分になってしまう。
そんなこと考えちゃ駄目だと思えば思うほど頭からその想像が離れなくなっていく。
シェゾに自分から腰を動かし、奉仕する所を想像しながら
しばらく夢中になって腰を動かしつづけていると、
頭がまた白くなっていって、ぱん、と身体の中ではじけるような感覚が走る。
「っあ」
肩で息をしながら、がくりとお風呂場の壁にもたれかかる。
シャワーのお湯が見当違いな方向へかかって、やたら湯気をだしていたがどうでも良かった。
「ぼく、あんなエッチな幻覚見て、身体までエッチになっちゃったのかなぁ」
しかも思い浮かべた相手が――なんでシェゾなんかで……
ふぅっ、とため息をついてアルルは目を閉じ、身体に残る余韻にしばらく浸っていた。


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