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◇◆ 彼が盗んだもの 不意打ち ◇◆
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「お前さぁ、文子のどこがいいの?」
小腹が減ったからと寄ったマックで、コーラを横に振りながら 高梨が言った。 そりゃお前、クリっとした目と プニっとしたほっぺの ロリっとした顔がだね? 「同感! あいつって、全てが 『 永遠の小学生 』 って感じじゃね?」 腹なんか減ってないと言い張っていた石川が、3個目のバーガーを頬張りながら会話に参加する。 でもって、チマっとした体と ムチっとした手と プニュっとした唇が…… 「おいルパン? 何 一人で 真っ赤になってんだよ?」 ブラブラと振っていたコーラの動きを空中で止めて 高梨がこっちを見つめている。 「え? あ、いや、その、ごちそうさま♪」 思い出しニヤケが止まらないまま、ちょっと頬を染めてつぶやいてみた。 すると2人同時の呆れ声。 「はぁ?」 もっと2人に突っ込まれそうだと思ったが、天の助けの音が鳴り響く。 「ズズッ ズズズズズ〜ッ!」 音のする方を向けば、病的な頬のコケかたをした若狭が 病的な勢いでシェークを飲んでいる。 すごい吸引力だね? ワトソンくん。 図書室での出来事があってから、俺の衝動的な行動全てを 賭けのせいにしようと試みて 次の日も何食わぬ顔で文子を追いかけ、相変わらずの 【 膝カックン 】 も繰り広げ 元のさやに収めようと 我ながら素晴らしい努力をしてみたけれど あの日を境に 今まで以上にパワーアップした 文子への独占欲と所有欲。 ここまでくると病的だと思いながらも、無意識下でやっちゃっているから始末が悪い。 クラスの人間というよりも、文子以外の全世界の人間が オレを 『 ふみふみ病 』 だと思っているに違いない…… 高梨や石川はあんな風に言うけれど、それは文子の性格を知ってしまったからであり 上っ面だけを見比べれば 文子は相当 可愛い部類に位置する容姿。(多分) あいつの性格を知らない上級生たちは、こぞってあいつを狙っているし あいつの性格を知らない他校生たちも、こぞってあいつをナンパするし それを福島が はねつけてくれていることすら わかっていないお気楽女。 ま、福島の場合は、文子とは違う部類の 極上クラスらしいけど。(興味なし) 翔也が文子のメアドを聞いたのも 部活の先輩に頼まれたからであり 福島がいない帰り道は危険がいっぱいなのに、またのんきに買い物しているから 訳のわからん男にナンパされるわけであり オレの怒りボルテージはMAXへと傾き進行中―― そして極めつけは 「Kissしたい……」 そう言い放った後の文子の行動…… いきなりジャンプして しがみついてきたかと思えば はむってしたよね? ちょっと唇を開いて オレの唇を はむはむってしたよね? 勘弁してくれよ…… 一体どこでそんな 『 技 』 を覚えてきたんだっ! 完全に不意打ちをくらった文子からのKiss。 結局は (やっぱり可愛いから) 受け入れて 抱きしめてしまったけれど 全てに納得がいかないままの長い夜。 時計が欲しいからって、誰とでもあんなことするのか? 考えれば考えるほど憂鬱になって、ほとんど眠れないまま朝が来た。 全世界の不幸を背負った気分でホームへ降りれば 悩みの元凶 張本人さんが、危なっかしい足取りで前を歩いている。 いつもなら ここぞとばかりにチョッカイを出すのだけれど、今日のオレは一味違う男。 声をかけずに同じ車両に乗り込んだ。 でもやっぱりそばにいっちゃうのがオレっぽい? 満員電車の2人前。1番危ないドアの脇に、これまた1番最悪な背中を向けた1人乗り。 なにやってんだと イラつきながら様子を見ていれば、2駅越えたあたりで 案の定震え始めた。 だから言わんこっちゃねぇ! (言ってないけど) オレの前に佇む 禿げたオヤジの耳元まで頭を下げて 「どけ」 低い声で唸り囁き、慌てたオヤジからその場を奪って文子のすぐ後ろへついた。 電車が揺れて人波が押し寄せ、文子の上からドアへ両手をつき 腕を張る。 トンネルをくぐり抜けるドアのガラスが一瞬黒くなり、ガラス越しに文子と目が合った。 オレに気が付き息を飲み 驚いた顔をした後、昨日の気まずさからか うつむき顔を上げない文子に 限界を超えたオレのこめかみが一気に破裂。 「ふ〜みこちゃんはキス魔だったのねん すごく上手で僕ビックリ!」 般若って絶対生きていたらこんな顔だよね? ってなくらいの形相で 満員電車だということも忘れ、無理やり振り返った文子が一言。 「ルパンなんか だいっっっっっ 嫌い!」 そこまで溜めるか 普通? 喧嘩上等ムードで睨み合い、『 目をそらしたら負けだ 』 モードに突入。 完全に満員電車だということを忘れきり、傍から見たら まるでコントなバトルを展開。 「こっから私のテリトリーだから入らないで!」 足で床に線を書き、ちょっと線から出ていたオレの革靴を文子が蹴っ飛ばす。 イテッ! コノヤロ! 「残念でしたぁ〜 空中権はオレに分がありま〜す このチビッコ!」 そう言いながら これみよがしに ドアで腕立て伏せを繰り返せば お得意の猿真似で、全てオレが悪いと喚き散らす文子。 なんでオレが悪いんだよ? 悪いのはお前だろ? 「じゃあ、誰とドコで 何時何分 地球が何回まわったときに練習したんですかぁ?」 我ながらネチッこいと思いつつ、言わずにはいられない言葉を吐けば 「おめぇ〜しか いね〜よっ!」 なんだその言い方はっ! って…… マジ? ほんとにオレだけ? こめかみ修復! ほんわかボルテージ一気に上昇! 両手をドアに突っ張ったまま 怒り狂った文子に突然Kissをする。 不意打ちを食らった文子の唇は、固く閉ざされたまま開かない。 どうにか開かせようとむきになり、今度は肘までをドアに押し付けて唇をむさぼる。 ようやく開きはじめた文子の唇を一旦離し 耳元で囁いた。 「上 向けよ」 トロンとした瞳でオレを見つめながら、素直に上を向いた文子がたまらなく可愛くて そこからはまた 止まることなく続くKissの応酬。 何度も何度も 下唇をはさみ 軽く吸う。 文子の唇が、リップを塗ったときの様に赤くふっくら腫れてきて 髪の香りと唇の味に ゾクゾクする興奮を覚えたとき 電車が大きくガタンと揺れて 駅の到着を告げる車内アナウンスがこだました。 ドアが開き、人波が押し寄せる中 後ろ向きの文子を抱き上げながら電車を降りる。 自力では立てそうにない文子を支えて 顔を覗き込んだところで 後ろからハスキーな声と 野太い声が同時に聞こえてきた。 「君たち すごすぎ!」 振り向けば 爬虫類的な笑みを浮かべた 高梨と福島が立っていて 今にも細長い舌がピロピロと出てきそうな2人の顔にゾッとした。 見られちゃったのね…… でも、はむはむでも ふみふみでも ドンとこいっ! やべぇ。 やっぱオレって 『 ふみふみ病 』? |
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